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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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進撃の始まりは②

******


 湿地を抜けた先は見渡す限りの草原だった。


 地平線から昇る太陽を体で感じようと背嚢から這い出した俺の隣、既に怪鳥の柔らかな背に座っていたのは〈爆突のラウンダ〉だったりする。


 ボーザックはディティアと一緒だから俺の隣が空いたわけだけど、何故か彼が「じゃあ俺はこっちにするぜ!」なんて言って背嚢に潜ったからだ。


 代わりにファルーアが〈爆風〉と一緒である。


「おう〈逆鱗〉。起きたのか?」


「え、ああ、いや……バフも掛け直さないとだから寝てたわけじゃないけど」


「そうか? なら寝とけ寝とけ。体がもたないぜ?」


「そういうわけには……っと」


 俺の言葉を遮るように腕を伸ばし、〈爆突のラウンダ〉がなにかを差し出した。


 見ると……なんだろう。干した果物かな。


 丸っこくて手のひらで包める大きさ。色は褐色の赤……だろうか。


「美味いから食え。そんで寝ろ。心配するな、見張りは任せておけ。草原の町アーヴェルまではまだ距離があるからな。休んでおかないといざってときに失敗するぜ?」


「……まあ、〈爆〉もふたりいるんだし問題ないとは思ってるけど」


 心配なのはそこじゃないっていうかさ。


 俺が休んだせいで万が一なにかあったら?


 またディティアみたいに目の前で見送ることになったら?


 そう考えて、とてもじゃないけど眠れなかったのが本音である。


 王国騎士団だってほとんど休めていないだろうし、後ろめたい気持ちもないわけじゃない。


 だから俺は苦笑して首を振った。


「やっぱりまだ大丈夫だから起きておくよ。……でもこれはありがたく。いただきます!」


 俺は〈爆突〉にそう言った勢いで果物らしきものを頬張り――盛大に咽せた。


「んっぐ⁉ げほっ! すっ……ぱ! ごほっ、な、なんだよこれ……うわ酸っぱ……ッ水、水……!」


「はっは! 酸っぱうまいだろ? プラムベルって果物を干したもんだ。栄養みっちりの保存食だぜ」


「いやいや、栄養っていうか。こんな小さいのにこの酸っぱさは凶悪すぎないか……?」


「そのぶん疲れに効くんだよ。お前は気を張りすぎだ。いま酸っぱい顔したときみたいに多少緩めとけ」


「……う」


 ずばり言われると反論できない。


 口籠もって首を竦めると、朝日をたっぷり浴びながら〈爆突〉が続ける。


「まあお前の懸念はわかるつもりだぜ? だからこそ言う。休めないときだってあるのは違いないが、休めるときに休め。戦うために休むんだ」


「戦うために休む……」


「置いてきた冒険者たちは龍に先導されて西へ移動していたからな。すでに戦いの準備が整った可能性もある。言ってる意味わかるだろ? 始まってる(・・・・・)んだよ」


 始まっていると聞いて、俺は思わずグッと四肢に力を入れた。


〈爆突〉が言っていることは正しいように思う。


 敵はすでに進撃を開始している……つまり、そういうことだ。


 湿地に残してきた自我を失っている冒険者の数は多かったけど、始祖人がいなかったのを考えるとまだ別の部隊がいる可能性だってある。


 だとしたら本当に休みたくても休めないときがくるかもしれない。そのときに動けなかったら後悔することになるよな。


「わかった、休む。……ありがとう〈爆突〉」


 俺は〈爆突〉に頷いて昇る朝日を見遣り、背嚢に引っ込んだ。


 彼が笑った気がしたが、それも束の間。眼を閉じればあっというまに意識が深く沈んでいく。


 我ながら情けないけど、かなり疲れていたらしい。


******


 ぐっすり眠り、できうる限り体力を温存して過ごし、またぐっすり眠って訪れた翌日。


 すっきり起きられただけでなく頭のなかも冴えているというかなんというか。


 休めるときに休むっていうのは本当に大事なんだな……。


 しみじみ考えていると、草原の町アーヴェルがはるか地平線から顔を出した。


 すると隣で背嚢から顔を出していた〈爆突のラウンダ〉が俺を見て笑う。


「もう少しで到着だぜ。準備はいいか?」


「勿論! がっつり休んだから調子もよさそうだ。『五感アップ』『五感アップ』『魔力感知』『魔力感知』!」


 バフをかけ直し、あたりを探る。


 草原にはチラホラと魔物らしき気配があるけれど、大きく動いているわけでもない。魔力についても反応は見当たらない。


 これなら始祖人がいてもすぐ気付けるだろう。


 あとはディティアたちがどうしてるか……だな。


 ボーザックもフェンもいるし大丈夫だとは思うけど……。


 俺が難しい顔でもしていたのか〈爆突〉は笑って言った。


「お前には〈爆風〉と〈爆辣〉の空気を感じるぜ」


「……はぁ?」


 なんだそれ? 俺とそのふたりは似ても似つかないだろ。


〈爆辣のアイナ〉さんについては聞いたことがあるだけだけど、俺と似ているところなんてなかったと思う。


 顔を顰めると〈爆突〉はモゾモゾと這い出してきて伸びをした。


「〈爆風〉はまだ〈爆辣〉のことを引き摺ってると思うか?」


「ええ? 今度はなに……まあいいや、俺は引き摺ってるとは思わなかった。なんだろう、こう、〈爆風〉のここにいるっていう感じ?」


 胸に手を充てて言ってみせれば、彼は双眸をこれでもかと見開いた。


「〈爆風〉はきっといまも〈爆辣のアイナ〉さんを連れて旅してる」


「……は、はっは! ああ、そうか。そうだよな、そうだろうぜ! お前いいこと言うな〈逆鱗〉」


〈爆突〉はなにが面白いのか腹を抱えて満面の笑みを見せる。


 そこに当の〈爆風のガイルディア〉がひらりとやってきた。


 うん、文字通り「やってきた」のだ。


「うおッ……お前、いきなり来るのやめろ! 危うく貫くところだぜ?」


「ははは、馬鹿を言うな。気付いていないとしたら、かなり衰えたんじゃないか?」


「お前なぁ……」


「あー、おはよう? どうしたんだ急に」


 顔を顰めた〈爆突〉をそのままにして俺が言うと〈爆風〉は轟々いっている風などものともせず俺たちのあいだで腕を組んでみせた。


「偵察に出る。ついてこい〈逆鱗〉」


 ……は?


なんだかうまく書けずにいたりします。

文章がきっちり決まらないというか、なんか違和感が……というか。

でも書きたい欲はあるしこの先の構想もあるので、筆がのるまで粛々とやります。

いつもありがとうございます、感謝です。

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