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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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たとえば悪夢のように②

 ボッ――ゴバアァァッ!


 凄まじい轟音とともに夜闇を焦がす紅蓮の炎。


 熱風が激しく吹き荒れ、体を捻って後方を見た俺の頬を炙る。


「ファ、ルーアッ……!」


 体勢を整えた怪鳥の背、俺は腕で顔を庇いながら思わず彼女の名を口にした。


 空での戦闘が不可避ならファルーアが攻撃の要だ。


〈爆炎のガルフ〉も〈爆呪のヨールディ〉もいないなか、どうやって援護したらいいだろう……俺のバフだけでなんとかなるのか?


 必死で考えている俺の視界には、しかし〈光炎〉の繰り出す連撃が映った。


 荒れ狂い渦を巻く濁流。次の瞬間には白く煙る氷槍(ひょうそう)へと転じ雨のように降り注ぐ。かと思えば炎の球が破裂し、派手に舞い踊って散り消える。


「すっご……ファルーアやるね」


 思わずといった様子でボーザックが呟くけど――うん。


 すごい、本当にすごい。


「さすがだな。援護なんかなくてもいけるんじゃないか……?」


 俺も感嘆の声をこぼし、すぐに思い直していやいやと首を振った。


「ごめんいまのナシ。油断大敵もいいとこだ。いま大丈夫でも次は駄目かもしれない。そうならないよう足掻いて進め……だよな。よし、俺たちで囮になって少しでも隙を作ろう。俺はある程度の距離でファルーアのバフを書き換える。頼むぞ!」


 言えば、俺とボーザックを乗せた風将軍(ヤールウィンド)が急旋回して黒い龍みたいな魔物へと一直線に飛んでくれる。


 魔法が爆ぜて吹き荒れる風なんてものともせず、まるで空気の流れ――その隙間を斬り裂くような飛行だ。


「――ファルーアッ! 『威力アップ』『持久力アップ』!」


「俺たちが囮になるからよろしく!」


 上空からファルーアの『速度アップ』と『肉体強化』を書き換えるのと同時、ボーザックの言葉に俺たちの乗る怪鳥が魔物を掠めて急降下を開始。


「うぐ……ッ」


 胃が浮いて四肢の先が竦む。


 指先に意識を集中して怪鳥の背にしがみつくと、背後――正確には()から黒い龍みたいな魔物が大きく顎を開き追ってきたのが見えた。


「来るよハルトッ……!」


「だい、じょぶ、だッ!」


 応えると同時に俺たちの怪鳥は身を翻して上昇に転じ、グンと体に重みが掛かる。


 魔物がそれを追うために大きく羽ばたき、空中で一瞬だけ動きが止まったところをファルーアの魔法が射貫く。


 さらに〈爆風〉と〈爆突〉を乗せていると思われる怪鳥が飛来し、魔法をくらった魔物の背にガッツリと爪を立てた。


『グギャアアァッ!』


 ここからは、なんというか……そう。まさかまさか、である。


〈爆〉たちが怪鳥から身を躍らせ、魔物の翼を刻み、貫いてみせたのだ。


 え、恐。ここめちゃくちゃ高いけど? そんな軽々と魔物に飛び乗るって……。


「……うわぁ……」


 風は轟々と耳元で鳴っているけれど、ボーザックの呆れ声は確かに耳に届いた。


 うん、わかるぞボーザック。


 よく見れば長めの縄がそれぞれの腰に結び付けられているようだけど、それでも規格外すぎるだろ。


 彼らは首を捻り顎を開いた魔物からサッと身を退くと怪鳥とともに飛び上がる。



 光が集束するその顎に入れ違いで対応したのは――。



「おおぉぉッらあぁああッ!」



 ――グランだ。


 彼の乗る怪鳥が背中側を魔物に向け、すれすれの位置を飛び抜ける瞬間。


 白い大盾が凄まじい勢いで魔物の顎をかち上げた。

 

 ボグン、と鈍い音がして跳ね上がった魔物の顎から煙が噴き出す。


「口の中で魔力が暴発したんだ」


 思わず言うと、トドメと言わんばかりの巨大な氷塊が魔物の背に落とされた。


 魔物は巨躯を仰け反らせるようにして、煙を吐きながら落下していく。


「あれっていい素材になるかなー?」


「ああ、龍っぽかったしな。あとでギルドに連絡したらどうだ? 回収してもらえるかも」


 バサバサと羽ばたいて高度を保つ風将軍(ヤールウィンド)の背で応えれば、身を乗り出していたボーザックがこっちを振り返って笑った。


「そうだね! あ、ねえハルトー。グランのあれ格好よかった! 次は俺もあれやりたいなー。大剣なら首くらい落とせるかも!」


「なかなか物騒だな……できれば次がないほうがいいんだけど?」


 思わず顔を顰めると彼は首を捻って苦笑する。


「まあそうなんだけどさー。俺、今回もなにもしてないし……さすがにちょっとね」


「……」


 そっか、気にしてるんだな。無理もないか……。


 考えてなにか言おうと唇を開いた俺は……ボーザックが肩を跳ねさせたのを見て言葉を呑み込んだ。


「なにか来る。ハルト、五感アップ頂戴」


 その真剣さは首筋がチリリとするくらいで、俺は返事をする代わりに手を突き上げた。


「『五感アップ』『五感アップ』ッ!」


 皆のバフを五感アップ二重に変えれば――離れた位置から〈爆風〉が「よくやった〈不屈〉〈逆鱗〉!」と笑うのが聞こえる。


 そして……ボーザックの言うとおり、なにかがこちらに向かってきているのがわかった。



8/5更新

すみませんめちゃくちゃ体調崩しており熱やら咳やらが続き更新できておりません。

落ち着いたら再開します!

コロナは陰性だったのに薬飲んでも全然よくならずです。

お盆までにはなんとかしたいと思います!


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