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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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811/847

ただ捜すのも必要だから②

******


 海都オルドーア。


 潮風香る巨大な港町は俺の記憶ではかなり賑やかで、そこらじゅうを冒険者たちが闊歩している大都市だ。


 だけど……。


「なんか……活気ないねー?」


 ボーザックがぼやく。


「そうね、歩いているひとも覇気がないわ。息を殺しているみたい」


「始祖人の情報が出回っているのだろう。感染するものと考える奴らもいるだろうからな。自分が襲われないとも限らん」


 相槌を打ったファルーアに〈爆風〉が頷く。


 俺たちは町の入口から目抜き通りを進み、真っ直ぐギルドに向かった。


 ちなみに眠っている〈爆突〉と〈爆呪〉はロディウルと〈爆炎のガルフ〉に任せることにして、町から少し離れた場所に待機である。


「『五感アップ』『五感アップ』! フェン」


『ガウゥ』


 俺は皆にバフを広げ、フェンにも『五感アップ』をふたつ呑み込ませた。


 フェンはすぐにフンフンと鼻をひくつかせ、首を振る。


 近くに始祖人やディティアはいないんだろう。


「本当にお前のバフ便利だなぁ」


 アイザックが言うので「そうだろ?」と返し、俺はあちこちの気配を探って耳をそばだてた。


 少しでもディティアに繋がる情報がほしかったんだ。


「恐いわね、フルシュネも襲われているのでしょう」

「近くの村が被害にあったそうだ」

「王国騎士団はなにをしているの」

「冒険者が動いてくれないと困る」


 けれど聞こえたのは始祖人の話と――後者は不安からくる吐露か。


 とくにめぼしい情報はなさそうで、思わずため息をこぼす。


 とはいえ落胆して足を止め、無駄に時間を使うつもりはない。


 俺たちは早足で歩を進めギルドへ辿り着いた。


 周りに比べたら気配が濃く満ちていて、いまも中でひとが忙しなく動き回っているのがわかる。


 グランが扉の前で一度俺たちを見回したので、俺は頷きを返す。


 重そうな金属の扉は潮風による錆を防止するために黒錆を施してあり、テラテラと鈍い光を反射させていた。


 グランがその扉をギギギィ、と音を響かせながら開けると――。



「ああああッ、皆さんっ……皆さんをお待ちしておりましたああぁッ!」



 受付の向こうからすっ飛んできたのは小柄な人物。


 茶髪の短髪に同じ色の大きな瞳。


 服はギルドの制服である簡素な白シャツと黒パンツ。


 いまだ幼く見えるので……どっちともとれるその容姿。


「やっほーギルド長ー! 忙しそうなのによく気付いたね」


 ボーザックが片手を上げて言うと、その人物はフフンと胸を反らせてみせる。


「それはもう、皆さんの到着が待ち遠しくて扉ばっかり見ていましたから!」


「いや仕事しろよ」


 思わず突っ込んだけど、海都オルドーアのギルド長マローネは華麗に無視して続けた。


「すぐに部屋にご案内します。ご依頼の資料も可能な限り集めましたから。ご一緒なのは〈祝福のアイザック〉さん……と、……?」


「ああ、〔白薔薇〕のスレイ(・・・)だ」


〈爆風〉が歯を見せて偽名を口にするけど。


 マローネはビビッと足先から背中、そして頭を震わせて悲鳴にも似た声を上げた。


「ヒェアッ……ば、〈爆風のガイルディア〉様ッ……⁉ ちょ、なんで〔白薔薇〕とご一緒してるんです? え、なんでです⁉」


「いやなんで様付け……?」


 再び思わず呟いた俺を再び華麗に無視したマローネは「バレていたか」と笑う〈爆風〉に釘付けである。


「おい、いま〔白薔薇〕って……」

「それに〈爆風〉って、もしかして伝説の〈爆〉?」

「嘘、〔白薔薇〕に伝説まで加わってるの?」

「〔グロリアス〕もいるらしいぞ」


 ざわめく冒険者たちから聞こえる様々な声。そして針のむしろのような気分になるほどの視線。


 するとグランが唸りながら顎髭を擦り、反対の手で呆けているマローネの肩を掴んだ。


「おいギルド長。早く案内してくれねぇか」


******


「すみません取り乱しました。まさか〈爆風のガイルディア〉様がご一緒していたなんて。トールシャに渡ったのは存じ上げていましたが……」


 マローネは長机を囲むように俺達を座らせ、自分は長辺の中央付近に立って資料を置いた。


 ドサドサッと音がするあたり、かなり重そうである。


「その……本みたいなのは帳票かなにかかしら?」


 ファルーアが問い掛けるとマローネは頷いて資料を開く。


「実は認証カードには隠し文字で番号が入っていまして。それがパーティーや冒険者と紐付いているのです。どのパーティーの誰がなにをしたか検索しやすくなっている、というわけですね。番号にすることで同一名であっても区別できますし結構便利なんですよ」


「へえ、俺達の名誉勲章にもあるのー?」


 ボーザックが感嘆の声をこぼすが、マローネは「名誉勲章なんて持っていたら番号なんかなくてもすぐわかります」と笑った。


「それで? 〔ラミア〕のシェイディのことはどこまで?」


 そこでアイザックが身を乗り出すようにして問う。


 俺も思わず机に両手を突いて上半身を傾けた。


「はい。彼女について実は私も覚えがありまして。なにせあまりに幼い容姿なので」


 マローネも似たようなもんだな、と薄ら考えたところでファルーアと目が合う。


 あ、余計なこと口にするなって顔だなあれは。


 いや、ごめん。ちゃんと聞いてるから。というか俺だって真面目なんだぞ。


 僅かに沈黙が降りたところで、俺の考えを知ってか知らずか――マローネは資料を右の人さし指でなぞりながら話し出した。



こんばんは!

本日もよろしくお願いします。

わんこは元気に走り回っています。

食欲も回復しました✨✨

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