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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ

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810/847

ただ捜すのも必要だから①

******


 俺の両親、ディティアの両親、ファルーアの母親、ボーザックの父親は町が襲われたときの状況やその後の動きを教えてくれた。


 幸いなことにファルーアの家族は皆無事だったそうで、彼女が密かに安堵の吐息をこぼしたのを俺は見た。


 素直じゃないなファルーアも。もっと喜べばいいのに。


 そして思ったとおり俺の両親はギルドを手伝っていたけれど――ただ手伝っているのではなかった。


 どういうわけか、この町で『冒険者』として仕事を請けているらしい。


 いや、元々冒険者だったのは知っているけど。引退して腰を落ち着けたんじゃなかったのか?


「ハルトが立派に育って冒険者になったからな。聞こえてくる〔白薔薇〕の物語は心躍るものばかりで――はっきり言うが羨ましい。だから俺たちもまた冒険をすることにしたんだ。そうは言っても遠出はしないけどな。近くの薬草採取だとか、小さな魔物の討伐だとか、そういう簡単な依頼を受けているだけだ」


 ヘラッと笑う顔はたぶん俺に似ているんだろう。胡散臭い雰囲気は父親譲りだと思ってる。


 呆れているとボーザックの父親が微笑んだ。


「冒険者として人々の力になっているなんて凄いことです。私は家族の力にさえなれず、ボーザックに苦労をかけてきましたから」


 彼の妻……つまりボーザックの母親は自ら命を絶っている。


 そのことだと思うけど、こればかりは聞き難い。


 するとボーザックが首を振った。


「そう言わないでよ。父さんだって酷い思いをしてきたんだからさー。ちゃんと感謝してるよ」


「ボーザック……」


「ボーザック君は優しくてとってもいい子です。貴方なくしていまのボーザック君はいないってことですよ」


「そ、そう……ですか?」


 親子のいいところだっていうのに俺の母親が間髪入れずに言い切ったので、ボーザックの父親がはにかんだ。


 目の前のボーザックは微妙に困惑した表情になったけどな。


 まあ急に優しくていい子とか言われても困るだろ……。我が親ながら、突然なにを言い出すんだよっていう気はする。


「そうですわね。そのように育ったのなら素敵だと私も思いますわ。うちの娘なんて家族に関わりたくないと言って家を飛び出したのですから」


 そこでファルーアの母親がファルーアよりも冷たい笑みを浮かべるけど――うん。なかなか迫力がある。


「あら、誰が家を継ぐとかそんな揉め事ばかりで鬱陶しいのは本当でしょう? 私が家を出ることで恩恵はあったはずよ? 十分貢献できているのではないかしら?」


 言い返すファルーアも恐い。さすが親子というかなんというか。


 ふたりはにっこりと笑みを浮かべたまま至近距離で見詰め合う。


「……どの家も大変だなぁ」


 思わずこぼすと、隣にいたボーザックが我に返って笑った。


「あっはは、ほんとだね。でも少し息抜きになったかも、俺ー」

 

「これで?」


「うん。ティア取り戻して、始祖人をなんとかして、また皆で冒険したいって気持ちがすごい」


「ああ……それはある」


 いろんなことがあっても、冒険を嫌いになったりしなかったもんな。


 俺は手首に光るエメラルドに目を落とし、頷いてみせる。


「そのためにも早く捕まえてやらないとな」


 ディティアを取り戻せなかったら――なんて考えない。俺たちなら大丈夫だって信じてるから。


 俺はグランたちが戻るまで皆の家族と話をして過ごした。


 ちなみにギルド員も大幅に増員されたらしく、俺の両親はディティアの両親とは面識がなかったらしい。


 親同士で接点があるというのも、なんとなく気恥ずかしいんだけど――折角だからこれを機に付き合いを始めるそうだ。


******

  

 そんなこんなで夜も更け、俺たちはアイザックやガルフ、ロディウル、〈爆風〉と合流して今後の話を終わらせた。


 余計な手合わせをさせたことで怒られるかと思ったけど……〈爆風〉は「丁度憂さ晴らしがしたかったところだ」とか言って歯を見せて笑う。


 あとで聞いたけど、養成学校の教員はボコボコにされたが恍惚の表情をしていたそうな。


 とにかく。俺たちはまず海都オルドーアに向かい、始祖人と思われるシェイディとかいう冒険者の情報を集めるのだ。


 先に伝達龍を飛ばし、情報を探しておいてもらうのも忘れない。


 こっちにはフェンもいるし、フェンが千切った薄い桃色の布切れもある。


 フェンが布切れを何度も嗅いでいるので、たぶん臭いを覚えてるんじゃないだろうか。


 始祖人としての臭い以外にも個人の臭いがあるのなら、フェンの鼻は絶対に必要だ。


 ディティアの匂いも追えるはずだしな。


 グランはといえば、姉であるアルミラさんの話と彼女を眠らせた始祖人――セウォルの話を両親にしたらしい。


 アルミラさんが生きていたことに歓喜し犯人が目の前にいたことに憤慨したそうだけど、彼らはすぐに気持ちを切り換えた。


 急ぎラナンクロスト王都へ向かいアルミラさんと会うとのこと。


 グランはギルドから伝達龍を飛ばしてもらい、その手配を済ませていた。


「よし、明朝発つぞ。少しでも休んでおけよ」


 グランはそう言うとポンと膝を打って立ち上がる。


 次は海都オルドーア。


 俺たち〔白薔薇〕が彼の飛龍タイラントを発見し大規模討伐に成功した大都市だ。



皆さまこんにちは!

うちのわんこの療法食をたくさん調べては試し調べては試ししたところ、腎臓ケアチュールが最強でした!

かければどんなご飯でもムシャリです。

わんこ元気になってきたし、ペース戻さないとなと思っています。

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― 新着の感想 ―
爆風にボコボコにされて恍惚としてるの精神的に訓練に向いてそうやね..
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