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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ アイシャ
789/845

帰還は名声とともに①

******


 結局休む暇なんてほとんどなく、戻った〈爆風〉とフェン、そしてロディウルからセウォルを捕り逃がした旨の報告がなされた。


 龍のような蛇のような黒い魔物で逃げたようだけど、傷を負わせることはできたそうだ。


「戦闘ならかなり強い部類だろうが俺には及ばん。飛ばれると厄介だがな」


 渋くていい声でさっぱりきっぱり言ってのけるオジサマに胸のなかで賞賛を贈る。


 始祖にだって対抗できるってことだからな。

 

「〈爆風のガイルディア〉のおかげで町の被害も少なかったんとちゃうか? 魔物も途中で退きよったしな。セウォルを逃がすために呼び戻されたんやろ」


 ロディウルはそう言いながら右手で傍らの怪鳥を撫で、反対の手でフェンを撫でている。


「……いいなあ」


 ぽつんと呟くディティアにふと「代わりに撫でてやろうか?」と言ったら飛び離れられた。


「な、撫でてほしいわけじゃないからねッ⁉」


「はは。わかってる、わかってる。冗談だよ」


「えっ、わかってるのハルト? 本当に?」


 何故かボーザックが目を剥いたけど、なんだよ、さすがにわかるだろ。


「俺をなんだと思ってるんだよ?」


「勿論ハルトはハルトだと思ってる」


「はあ? ……いッ」


「少し黙りなさい。消し炭になりたいの?」


 そこでファルーアの踵が足の上に落とされる。


 久しぶりに踏まれたから心構えができてない――痛すぎるだろ!


 涙目で見ればボーザックの脳天には龍眼の結晶が落とされていた。


 くっそ、絶対俺のほうが痛いからな……!


 恨めしい思いはあるけど、これ以上ファルーアを怒らせるのは得策じゃない。


 俺が黙ると〈爆炎のガルフ〉が説明を始めた。


 俺のバフとヒール、そして魔力回復の妙薬を使った治療のこと。〈爆〉ふたりのこと。「血結晶」と兵器のこと。始祖鳥の風将軍(ヤールウィンド)ならフェンのように結晶を探せるかどうか。


 血結晶の具体的な作り方を〈爆風〉に伝えてはいないけど、事情は話してある。でも、そもそもこのオジサマは興味がないだろう。


 あるとするなら、それは――


「〈爆突〉と〈爆呪〉か。まったくあのふたりは余計な仕事を増やしてくれる」


 ――〈爆〉ふたりを捕縛することへの興味だ。


「〈逆鱗〉、もう大丈夫そうだな。治療は任せるぞ。捕縛は俺と〈爆炎〉の爺さんで受け持とう」


「任せろ。絶対に治してみせるから。あんたたちなら大丈夫だろうけど無茶しないでくれよ?」


 俺が胸をポンと叩くと〈爆風〉は歯を見せて笑った。


「ふ。言ってくれる。余裕があればお前たちにも戦わせてやろう。曲がりなりにも伝説の〈爆〉だからな」


「あ、じゃあ俺は〈爆突のラウンダ〉と戦ってみたいなー? 槍ってあんまり戦ったことないし!」


「それなら私は〈爆呪〉ね。足止めや妨害の魔法を参考にしたいわ」


 ボーザックとファルーアが応えるけど……。


「おいお前ら。遊びじゃねぇんだ。気を抜くなよー」


 グランが呆れた顔で突っ込んだ。


「まったくお前らは余裕でいいな。それでユーグルのウル。血結晶は探せるのか?」


 アイザックが太い腕を組んで話を戻すと、ロディウルが首を傾げる。


「どうやアロウル。さっきのあいつみたいなん、わかるか?」


『クルル』


「ほー。わかるみたいやな。とはいえアロウルが着地できる場所が必須や。離れた場所に降りて埋まった石まで案内させるんは大変やで」


「ああ、でかいもんな……歩くのもそこまで得意じゃないだろうし」


 歩み寄って怪鳥を見上げるとアロウルはなにを思ったか俺の頭をドッと(ついば)む。


 いや、たぶん加減はしてくれているんだけどさ……。


「……地味に痛いんだけど? なんだよこれ?」


「ぶ、ははっは! 気に入られたんやな〈逆鱗〉! アロウル、もっとやってええで」


「ええ……勝手に決めるなよ。やめてもらえる……?」


 するとファルーアが俺のことを完全に無視して話を進めた。


「始祖人や縄張りをユーグルたちに探してもらう作戦は有効ね。そのあいだ私たちは襲われている町に対処できるわ」


「そうだね。治療も進めれば戦力の確保にもなるし。でも新しく操られるのは避けないと。そのための対策がいるんじゃないかな?」


「ふむ。始祖人がふたりひと組で行動しているならば『精神安定』バフは外せん。眠らされては避けようがないからな。全員が目を見ないでいられるわけでもないだろう。とすれば〈逆鱗〉を治癒だけに注力させるわけにもいかない。ほかのバッファーは使えないのか?」


 ディティアと〈爆風〉が言うと、黙っていたシュヴァリエが蒼い瞳を細める。


 ちなみにアロウルは機嫌よく俺の頭を啄み続けていた。


「その件については、治療だけでなく操られているものの捕縛にも君たち〔白薔薇〕を使わせてもらうことにしたよ。まず丘陵の町フルシュネを完全に制圧してもらいたい。バッファーは僕が召集をかけておこう。次の場所は追って連絡するよ」


「ああ? そりゃかまわねぇが――またなんか言ったのかハルト?」


「はっ? あー、いや、言ったっていうか……」


 グランが不思議そうな顔をするので、俺はなんとなく視線を逸らす。


「俺たちを使えと息巻いたのでね。眠る暇はないと思ってくれたまえ!」


「さすがに多少は眠らせてもらいたいわね……」


 ファルーアが腕を組んで呆れたように言うけど、仕方ないだろ。


「だってさぁ、誰の命も諦めたくないだろ、皆だって……うわッ」


 むうと唇を尖らせると、俺の頭をアロウルがすっぽり咥え込んだ。


 おい、やめろよ……。

 

いざ故郷へー!

皆さまよろしくお願いします。


2024.01.25追記!

更新忘れているわけではなく、別作品の文字数が応募したいやつに足らなくて1月中はブーストしている状態です!

2月後半からは元通り予定です!

よろしくお願いします。



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