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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
766/845

空ははれわたるのです③

******


「はあぁぁ……。キノコの森な……あの遺跡にあった重要な書物はすべて城の禁書庫に移動してあるはずや。どうやったかわからへんけどドルアグに禁書が流れていた可能性も――こりゃあ王族さんたち詰めんとなぁ」


 フェンにくっついているディティア以外、全員席に着いて一通り話をすると、ロディウルは酒を呑む手を止めずにそう言って頭をガシガシした。


「とにかく、諸々承知したで。遺跡は影に命じて再封印するわ。当然、中の魔法陣は消す方向やな。災厄になったふたりについても事情はわかった。俺らユーグルの監視下に置かせてもらって面倒みよか。ああ、悪いようにはせぇへんから安心してな。……で、あとは始祖の薬についてやな?」


 俺はロディウルに深々と頷いてアルミラさんとデミーグさんに視線を移す。


「私はさっさと始祖人を見つけてぶん殴りたいってだけよ? セウォルが始祖人でなかったとしてもぶん殴るけど」


「僕は研究を進めたい、かな。始祖の薬にはすごく興味があるからね」


「薬を試すのはかまわんで。災厄ふたりが同意すれば、まずはそこからってことやろ? ただし成果についてはすべてを情報開示してもらうんが条件やな。従わないなら俺らユーグルがどうするか王族さんたちはわかってるはずやし。というか、あんた……ええとデミーグ? あんたの研究はなんの古代魔法なんや?」


「大袈裟な表現だと不老長寿、かな。古い本に古代魔法で延命治療を施した記述があってね」


「…………えっ? 不老長寿?」


 思わず聞き返した俺にデミーグさんは心底楽しそうに目尻を下げた。


「うん。だからアルミラの治療もそこそこ自分のため、かな。高火力だった古代の魔法ならそれもまたできたのかもしれない」


「あら。そんなすごい魔法があれば当然伝わっていてもいいはずよ? それがないとなると欠陥があったか、そもそも完成していないか、あとは……流行病のせいで使えなくなったのか、かしらね? 私はヒーラーではないから疎いだけかもしれないけれど」


 食い付いたのはファルーアで、肩に掛かる金の髪を指先でくるくると弄りながら会話に参加する。


 ロディウルは酒をごくんと呑み下し、ふーんと鼻を鳴らした。


「なるほどな、始祖の研究と繋がる可能性があるってわけや」


「おう。そうなるわね。デミーグは古代魔法を研究するには寿命が足りないって話してたわ」


「わぁお、研究のために不老長寿の魔法を研究してるってことー? 俺は絶対無理なやつだー」


「俺も無理」


 話を始めてしまったデミーグさんに代わってアルミラさんが応え、ボーザックが瞼を擦りながら笑う。


 俺は同意してから水を差し出した。


「ボーザック。ほら。お前ちょっと呑みすぎてないか?」


「あはは、少しフワッとするくらいだからまだ大丈夫。それよりハルト……ティアがー」


「えっ?」


 見ればフェンに取りついたディティアがにへにへと緩い笑顔を浮かべている。


 フェンは彼女を優しくあやすように尾で撫でているみたいだけど。


「ハルトー、水飲ませておけー。それで、だ。シエリア王子、ロディウルと連動して動けねぇか?」


 グランにさらっと言われ、俺は立ち上がってディティアの水を取る。


 それからシエリアが「任せてください」と胸に手を当てたのを横目にテーブルを回り込んだ。

 

 ロディウルやシエリアとの調整はグランやアルミラさんがやってくれるだろう。


「ディティア、ほら水」


「わあーハルト君ー! ねぇ、フェンだよー! こんなに大きくなって……もう立派な淑女だねぇ」


「うん? 淑女? ……ああ、うん……?」


 フェンはふすーっと鼻を鳴らすとディティアを俺のほうにそっと押し出す。


 俺が水を手渡すと、ディティアは両手でそれを持って飲み始めた。


 小動物のそれだ。


「…………ごほん。それにしても本当に大きくなったなフェン。お前の両親よりも大きいんじゃないか?」


 いつもなら撫でるところだけど、なんとなく照れくさくなったからやめておく。


 フェンは俺の言葉に「あおん」と鳴くとジッと俺を見つめる。


 俺たちはどうだったか、と聞かれているような気がした。


「俺たちはアルヴィア帝国に寄って災厄を倒した。それから巨人族の町で岩龍と戦ったし――お前がいたらって思ったことも多かったよ。それから……そうだ、輸送龍がお前に会いたがってた。俺たちも楽しみにしてたんだからな!」


 言いながら、ゆるりと右の拳を差し出す。


 フェンはそれを見ると鼻先を拳にズンと当て、「ぐる」と喉を鳴らした。


 おお……! 応えてくれた……応えてくれたよな⁉ 


 いまなら撫でさせてもらえるんじゃないか⁉


 思わず左腕も上げると、フェンは俺の前にディティアを後ろ向きに押し出した。


「うわっ、と!」


 咄嗟に彼女を支えると肩越しに目が合う。


「……うぇあ⁉ は、ハルト君……⁉」


「えぇっ⁉ いや、ごめん! 不可抗力というか……!」


 ち、近い! 近い!


 酒で潤む瞳の煌めきがはっきり見える。


 慌てて彼女から手を放すと、ディティアは目をぱちぱちさせて向き直った。


 あれ、おかしいな……落ち着け、落ち着け。


「えぇと、あの……ハルト君もしかして照れてる?」


「そ、そんなことは! フェン! お前が……!」


『ふす、がふぅ』


 フェンはディティアに鼻面を押し付けると、どこか楽しそうに吐息をこぼす。


「わあフェン! ふふ、あったかい!」


「……。あー、とにかくディティア、もっと水飲んで。結構気を張ってたんじゃないか?」


 フェンを問い詰めたいところだけど諦めたほうがよさそうだ。


 なにより顔が熱いのを冷ましたいし……。


 俺が小さく息を吐いてから言うと、離れたところでシュレイスが盛大に鼻を鳴らした。


「まったくなにを見せられているのかしらね!」


 ……いや、お前が言うなよ……。


こんばんは!

今日が28日だとすっかり勘違いしておりまして!

大変恐縮です……。

来てくださった皆さんありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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