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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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目指す場所があるので。②

グランは、悩んでいた。


ハルトとディティアがマルベル王に呼ばれている間、皆思い思いに過ごしている。

ボーザックはフェンを連れて散歩に出掛けた。

ファルーアは買い物に行ったようだ。


そんなわけで鉄壁のガイアスについてを調べてみたが、中々どうして。

見付からないのだ。


確かに、ラナンクロストで名前を聞いたことは無い。


もしかしたら、ハイルデンではなく、ノクティア、次に行くヴァイス帝国で活躍していたのかもしれない。


ただし、先を見る力は充分だ。

盾の扱いも素晴らしかった。

あれなら、名前を付けてもらってもいい…。


「グラン、どうするか決めかねてるのかしら?」


「あ?……おお、ファルーア。いたのか」

意識が引き戻される。

ここは宿屋。

皆、まだ出払っていたように思ったが。

顔を上げると、ファルーアが自分を見下ろしていた。


「戻ったら難しい顔してたから気になってね」

ファルーアはそう言うと、グランが腕組みしながら座っている目の前に、お茶を差し出す。


「たまには聞いてあげるわよ」


グランは唸ったが、自分ひとりで考えてても堂々巡りだ。

話すことに決めて、お茶を受け取る。


「まあ、なんだ。箔を付けるには物足りないかとも思ってな」

「そうね。ギルドで少し聞いてきたけれど、ガイアスは近衛としての認知度もそれほど高くない。……まあ、長いこと奴隷だったようだから仕方ないわね」

「聞いてきてくれたのか。そりゃありがたいな」


グランが笑うと、ファルーアはベッドに腰掛けて優雅に足を組んだ。

「ついでよ、私もガルフのことを調べていたから」

「ほお?何でまた」

「そうねえ、特に意味は無いわ。ただ…」

「ただ?」

「目指す場所がどれ程か、それを追い抜くにはどうするか…考えたかったのかもしれないわ」

「……目指す場所、か」

グランはまた目を閉じた。


疾風のディティアを見た時、身体中がたぎったのを思い出す。

有名な冒険者は、その存在だけでああも人を魅了するのか、と、感心したほどだった。


「でも、まだまだ足りないわね、私達」

「まあな、タイラントの件も、こう言っちゃ何だがついてた。見付けた場所も、集まった討伐隊の面々も」

「そうね。うちの自称最高のバッファーさんの力もあったわ」

「ああ。あいつは……強くなる」

「ええ。その時は、私達が一緒に立ってたいわね」

「……そうだなあ。何だかんだ、俺達長いもんな。今更ばらばらとか考えられねぇな」

「ふふ、親父くさいわよグラン。それから…ティアを不安にさせる仲間ではいたくないって、思うわ。私」

「お前もそう思うのか」

「まあね。今は…自分も強くなって、それこそグランが言ってたように名前を遺したいとも思うけれど」


ふ。


グランは思わず笑っていた。

ファルーアが心外だとでも言いたげに眉をひそめるのを手で制する。


「いや、悪い。馬鹿にしたわけじゃねぇよ。ちょっと嬉しくてな」

「嬉しい?」

「同じ場所を目指す仲間がいるっていいもんだなと思ってよ」

「……あら、ふふ、嬉しいこと言ってくれるわね」


グランは、今手元にあるのが美しいカクテルじゃないことを心底残念に思った。


「いつか付く俺達の2つ名に乾杯」

「ええ、乾杯」



しばらく他愛もない話をしてから、グランはゆっくりと口にした。

「閃光のシュヴァリエ、完遂のカルーア、爆炎のガルフ、爆風のガイルディア。……やっぱり、鉄壁は…申し訳ねぇが弱いな」


ファルーアがたっぷり時間をかけて「そう」とだけ、答える。

それくらいが心地よかった。


「王族か……どうするかな」

「そうね、マルベル王にも頼んでみたらどうかしら?」

「アナスタ王はどうする」

「……そうねぇ…あ、ふふっ、ねぇグラン、いいこと考えたわ」

「?」

「これから行く国とラナンクロストも足して、4国の王から2つ名を賜らない?」

「……は?」

「全員に認めさせて……まあマルベル王とラナンクロストのルクア姫は何とかなるでしょうから。次のヴァイス帝国の皇帝を落としましょう」


「………」

呆気にとられる、とはこういうことか。


グランはファルーアの思い付きに、ぽかんとしてしまう。

お茶の無くなった湯呑みを意味も無くさわさわするくらいに。


「その4国に認められて、そうね、4国とも納得させた2つ名を賜るの。どうかしら、有名になる白薔薇のリーダーよ?それに名を付けるなんて王族にも箔が付くわよ?」


「いや、お前…すげぇ発想だな…。だが、悪くねぇ案だ」


むしろ、知ってしまったからにはやってやりたいくらいだ。

肩がうずうずした。


「決まりね、駄目なら駄目で考えればいいわ」


4国から認められる大盾使い。

甘いもんはそこまで好きじゃないが、その響は甘美で魅力的だ。


グランは満足げに頷いて、3人と1匹の帰りを待った。



ハルトとディティアが、良い報せを持って帰ってくるまでは、まだ、もう少し時間があった。



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