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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
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花をつみたいのです⑦

******


 作戦はこう。


 まず子の詰まった袋をさっきと同じ要領で潰す。


 この時点で親が動いたなら〈爆風〉が相手をする。討ち漏らした子がいればボーザックの担当だ。


 親が動かなければ討ち漏らした子を〈爆風〉とボーザックで対応することになる。


 そのあいだ、ファルーアの補佐のもとでグランとディティアがシエリアとラウジャの救出に当たり、ふたりを出せないのなら袋ごと離脱。


 俺はバフをかけつつ、全体の動きを皆に指示する役目だ。


 シエリア、ラウジャさえ離脱させればあとは全員で親を叩くだけ。


 この作戦のためには張り巡らされた糸が邪魔なんだけど――袋を潰した直後にファルーアが風で掻っ捌くことに決まった。


 魔力の糸は太めでわかりやすいものの、普通の糸は目を凝らさないとわからない。


 粘着質かどうか触るわけにもいかないんで、切ってしまえ! ってことだな。


 もし切れなかったとしても、焦らずここまで魔物を誘き寄せるつもりだ。


「それじゃあハルト、打合せどおりに頼むわよ」


「おう。皆もいいか?」


 ファルーアの言葉にぐるりと見回せば、皆がそれぞれ頷く。


 俺は最後にひとつ頷きを返し、バフを広げた。


「『肉体強化』『肉体強化』『反応速度アップ』『脚力アップ』」


 これはファルーアを抜いた全員に。


 滑る足場と重い装備対策に重点を置いたバフだな。


「『魔力活性』『持久力アップ』」


 そして『肉体強化』『反応速度アップ』とこのふたつがファルーア。


 彼女は万が一の場合に魔法を駆使してもらうことになる。


 シエリアとラウジャを傷付けないためにも精度を上げようという布陣だ。


「いくわよ、突きなさい! ――吹き荒れなさいッ!」


 第一陣同様に岩塊が袋を押し潰す。


 間髪入れずに風が吹き荒れて糸が散ったのを確認すると〈爆風〉とボーザックが地面を蹴った。


 討ち漏らした子は三……いや、四体!


 岩塊の表面から跳ね上がった魔物がこっちに気付く。


 そのあいだにグランとディティアが膨らみながらシエリアとラウジャの袋に肉迫し、天井と袋を繋ぐ糸をディティアの双剣が鮮やかに斬り放した。


「恐くない、恐くない、糸、ただの糸です……ッ!」


 なにか聞こえるけど聞かなかったことにしてあげたい。


 そこにグランが駆け寄り、普段は大盾の裏に隠している短剣で袋の表面を裂こうと試みる。


 そのとき、俺は天井の糸が震えたのを確認した。


「ディティア! 上! くるぞッ!」


 ミチミチィッ……


 嫌な音を立てて糸の表面に穴が開く。


 おそらくは巣の入口を隠していただけなのだろうが、そこからまず四本の脚が突き出され――。


『キチキチキチキチッ……ブシャアアァッ!』


 巨大な体がズルリと這い落ちた(・・・・・)


 ディティアとグランの近くに音もなく着地したそいつは子と違って白色。腹の背面に青い筋が稲妻のように広がっている。


 その大きさは腹だけでいえば俺の上半身程度。しかし脚が異様に長く、全長でいえば俺よりはるかにでかい。


「――……ッ」


 ディティアが一瞬硬直したところをグランが引っ張り、ふたりはシエリアとラウジャの袋を掴む。


「いいぞ、離脱してくれ! ファルーア、援護!」


「ええ! 突きなさいッ!」


 魔物の下から岩の針が突き出すが、重心をずらした魔物の脚の間を突いただけ。


 それでもグランとディティアがその場を脱するのに少し余裕ができた。


「そお……れぇッ!」


 次に攻撃を仕掛けたのは子を倒し終えたボーザック。


 手にしているのは白い大剣で、なるほどこの広さなら問題なく振るえそうだ。


 しかし振り下ろした大剣はガチンッと硬い音を響かせて跳ね上がる。


「こいつの脚、子蜘蛛よりずっと硬いよ。石みたいだ!」


「ならば腹か――ふっ!」


 報告しつつ一度距離を取ったボーザックの横から〈爆風〉が滑るように前に出る。


 彼は向きを変えようとする蜘蛛の脚の間を突いて一気に腹へと到達。


 大きく踏み切るとその横っ腹に双剣を突き立てた。


 その刃は確かに沈んだ――ように見えたけれど、〈爆風〉はすぐさま剣を引き抜いて飛び跳ね、脚を躱して戻ってくる。


「双剣では駄目だな。刺さったが――あれは皮だけの手応えだ。〈不屈〉の大剣で腹を突き破るのが効率的かもしれん」


「斬るのはいいんだけど――ファルーア。体液を凍らせるとかできるかな」


 ボーザックは〈爆風〉のひと言に眉尻を下げて言う。


 叩き斬った結果、派手に体液を浴びた記憶がそう言わせるのであろう。


「努力はするけれど期待はしないでほしいわね」


 俺は素気ないファルーアの返答に少しだけ同情しつつ、戻ってきたグランとディティアが引き摺ってきた袋の表面を斬り裂いた。


「シエリア、おい! シエリアッ!」


「…………」


 応えはないけれど、シエリアもラウジャも息はある。


 鼓動もちゃんと聞こえてくる。


 俺は安堵の息を吐き出して近くに控えているディティアにチラと目配せした。


「――まずはさっさと倒してこないとな。ふたりを頼んだぞディティア。ファルーア、援護よろしく!」


味覚と嗅覚がなくなってしまいましたが、とりあえず回復傾向にあります!

来てくださっていた皆様ありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 子供ですらハルトの手より2回り大きいとかデカすぎる…俺なら多分キモすぎて逃げる… 双剣は硬い系の相手には分が悪いね、関節とか狙ってもいいけど失敗したら剣折れるかもだし。 もし魔力付きの剣…
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