表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
748/845

花をつみたいのです②

******


 雪月蛾(せつげつが)は素晴らしい案内役になってくれた。


 いつのまに聞いたのか、はたまた調べたのか……〈爆風〉が言うには雌を追って大量の雄が競い合うように飛び、一番早く辿り着いた雄が子孫を残せるのだという。


 そのため彼らは()にいる雌へと猪突猛進――実際は腹の石のせいでそれなりに遅いが――するらしい。


 つまり、だ。後ろに戻ることがないから、俺たちが向かうほうへと放してやれば真っ直ぐに次の目印に飛んでくれるってわけ。


 すごいな雪月蛾。


 そんなわけで俺たちは積もった雪を踏み締めながら進み、シエリアたちが向かったはずの中腹に到着した。


 ぱっと見は一面の広場。


 積もった雪が頭上で燦々と輝く太陽に照らされて光を散らし、目がチカチカするような眩しさだ。


 だけど――。


 なんだろう、なにかが……変というか。


「さて。感じるか?」


〈爆風〉に問われた俺たちは互いの顔を窺ってから各々頷いた。


「嫌な感じがしやがる」


「なんか気持ち悪いのはわかるかな、俺ー」


「魔力――も感じるわ。けれど、そうね、濃い場所と普通の場所が混在しているような……」


 グラン、ボーザック、ファルーアが答え、ディティアはなにかわかっているらしくコクコクと首を上下させただけ。


 俺はファルーアの言葉にぽんと手を打った。


「ああ、この変な感じは魔力のせいか……なら『五感アップ』じゃなくて『魔力感知』だな!」


 いまは五感アップ、肉体強化、脚力アップの三重。


 俺はそこに『魔力感知』を広げて四重にする。


 出し惜しみしている場合でもないだろうしな。


 すると……どうだろう。


 なんだろう……紐、みたいな魔力が光りを放ち、それが縦横無尽に張り巡らされているというか。


「なんだこれ……」


 こんなのがあったら変に感じたのも頷ける。


「〈爆風〉、アルミラさんの地図になにか書いてあったか?」


「いや。特筆はないな。想定外ということだろう」


 俺はその言葉を聞きながら目を凝らし、『似たような事例』に思い当たった。


「……イータ系の魔物……?」


「あー、なるほどー。蜘蛛かぁ……」


 頷いたのはボーザックだ。


 例えば『ダハルイータ』。


 例えば『アダマスイータ』。


 イータ(喰らうもの)と称される魔物は蜘蛛の形をしていて、前者は砂漠の下で巣を張っていた。


 途端にディティアの肩が跳ねたのは……可哀想だけど見なかったことにする。


 ボーザックも嫌な顔をしていたが、これは砂漠で派手に体液を浴びたことを思い出したからに違いない。


「……それにしては気配がねぇと思うが……誰かなにか感じるか?」


 そう言ったのはグランだけど、思い切り首を振ってディティアが即答した。


「いえ、気配はありませんグランさんっ! 近くにはいませんっ……戦いたくないです……ないですけど……でも」


「気持ちはわかるわティア……放ってはおけないわね。王子様たちが狙われている可能性が高いもの」


「うう、そう思う――獲物と判断して追い掛けた、のかも……」


 ファルーアに言うとディティアは少しだけ頭を後ろに傾け、息を吸った。


「すー…………はぁ。……ハルト君、魔力感知を消してもらって五感アップを二重にしてもらえるかな? 捜してみる」


「お、おう……『五感アップ』!」


 捜してみるなんて簡単に言ってくれるなぁ……。


 とはいえ、こういうのはディティアや〈爆風〉のほうが得意分野だ。


 素直に頼ることにしつつ、俺は全員のバフを書き換えた。


 もしかしたら俺でも捜せるかもだしな。やってみよう。


 俺は息を殺し、神経を研ぎ澄ませ、より遠く――遠くへと意識を集中させる。


 呼吸はゆっくり、細く長く。



 だけど……。



 やっぱりなにも感じない。


 この極寒の季節は獲物も少なくなるだろうし、移動しながら狩りをするのかも。


「俺は駄目だな、感じないや。ディティアはどう?」


 聞くと彼女は首を振った。


「私もなにも感じない。本当に近くにはいないのか……それだけ気配を隠すのがうまいか……。どっちにしても王子様たちもいないってことだと思う」


 彼女はそう言って真っ直ぐに広場の先を見つめているガイルディアへと視線を向ける。


「ガイルディアさんはどうですか」


「うん、〈疾風〉の意見に賛成だ。広場の雪に足跡らしきものもない。移動したのであれば積もる前だ。距離を離されているかもしれん」


「……足跡ね。考えてもいなかったわ」


 ファルーアはそう言うとグランの脇を杖で軽く小突く。


「どうするのかしら?」


「よし、このまま先に進むぞ。地図には山の頂上まで記されていたはずだ。……ただし山の天気ってぇのはすぐ変わる。気が急いても焦らずいく。そのつもりでいろよ」


 グランは即断すると前を見据えた。


「広場は糸だらけだからな。迂回するぞ」


「了解ッ! なんか冒険の始まりって感じがするねー。早く王子様たち見つけてあげよう!」


 ボーザックが応えたところで、俺は五感アップのひとつを魔力感知に戻して頷いた。


「おう!」


冒険らしくなっていきたいところですー

皆さまおはようございます!

9月だというのに暑い暑い……

引き続きよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ