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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
728/845

親子関係は継続ですか④

******


 ――うーん、さっきより光ってるか……? もう少し練ったほうがいいか?


 早々に会話から外れ、ジェシカの両親の理性を保つためのバフを切らさないようにだけ注意しながら何度も何度も魔法陣を光らせる俺が唸っていると……隣にジェシカがやってきた。


「……なにしてるの〈逆鱗〉のひと」


「ぶはっ……! な、なんだよその呼び方? ボーザックか? アルミラさんか⁉」


 噴き出した俺に彼女は小さく笑みを浮かべると俺の隣に腰を下ろす。


「どっちも正解、すぐバレちゃったな」


「どっちもかよ! あとで覚えてろよ……」


 いや、ボーザックはともかくアルミラさんになにか言い返すのは恐い気もするけど。


 俺はごほんごほんと咳払いを挟み、目の前に描かれた魔法陣を指差した。


「ええとな。とりあえず……この魔法陣をすごく光らせたくていろいろ試してるんだ」


「すごく光らせる?」


 心なしか疲れた様子のジェシカはそのまま膝を抱える。


 彼女の視線の先は思い思いに会話する皆と――緑色の羽毛を持つ魔物。


 俺は少しだけそれを眺めてから魔法陣へと目を移してゆっくりと応えた。


「そう。すごく光らせるってことはバフ――俺が使う魔法が強くなったってことなんだ」


「……ふぅん。その魔法陣、そうやって使うものだったんだ」


「そうらしいな。ジェシカはどうだ? 商売の勉強はできたのか? っていうか……今更だけどどうして一緒に来たんだ?」


「ホグムワグムを料理して売ったよ。……母さんの得意料理だったんだ。……一緒に来たのはアルミラさんが『自分の目で見ることも大事よ』って言ったから」


「ホグムワグム……って、あの芋虫か……」


「揚げたホグムワグムに甘辛いのを絡めるんだ。美味しいよ」


「甘辛くするのか……」


 たしかプリプリしてるとかって話だったよな。甘辛くなっているとして、どうやって食べるんだろう。薄いパンみたいなやつに挟むとか……?


 ……いやいや、そっちを考えるのはあとだ。むしろ考えないでいるのが正解かもしれないけど。


「それにしても『自分の目で見ることも大事』か……アルミラさんらしいような気もするな」


 もしかしたらアルミラさんは――ジェシカたちの両親のことも考えてくれたのかもしれない。


 最悪は二度と会えないことだ。それを少しでもなんとかしてあげたくて……とかさ。


「――アルミラさんもね、家族と離ればなれになっちゃったんだって」


「うん? ……ああ」


「でね、とっても寂しかったけど――なら自分でなんとかしなくちゃって思ったんだって」


「……うん。それで本当になんとかしちゃうところがアルミラさんだよな」


 こうやって運命の糸を手繰り寄せた。


 グランと会えたのはアルミラさんが商売をしていたからだもんな。


 俺が笑うと、ジェシカはようやく肩の力を抜いて薄く微笑んだ。


 まだ小さな女の子が大人に交ざって生きなくてはならない――それはきっと大変なことだろう。


 このくらいのとき俺はまだ呑気に両親の元でのらりくらりと暮らしていたもんな……。


「……ねぇハルト。あのさ、この魔法陣どこで覚えたの?」


「え? 覚えたっていうか、教えてもらったんだ」


「当ててあげる。あの緑色の鳥たちからでしょう?」


「はっ? え、えぇと、そうなんだけど」


 しどろもどろ応えるとジェシカはじっと俺を見詰めた。


「――私、この魔法陣知ってるんだよ」


「はっ?」


「――お父さんとお母さんの作った魔法陣だから」


「えっ?」


「――話しててね、気付いたんだ。あの鳥、たまにこう……胸のあたりをポンポンってするでしょ?」


「む、胸のあたり? あー、どうかな……そういえばしてたか?」


 全然意識していなかったけど思い返せばそんな仕草もあった――か?


 いや、それよりもなんというか……この流れは……。


「えぇとジェシカ……」


「お父さんの癖なんだ。ポンポンってしながら話すの」


「…………」


 ――まさかジェシカ、気付いたのか?


 俺がなにも言えないでいると、ジェシカは困ったように笑った。


「ハルトは顔に出るひとだよね」


「うっ、そうか……?」


「…………」


 どうしよう。どうしよう。どう応える?


 十二歳にしては随分大人びた顔をする少女を前に、俺は情けなくも冷や汗を滲ませた。


 ――すると。


「うん。やっぱりそうなんだ……ハルトたちはちゃんと見つけてくれたんだね」


 そう言ってジェシカが立ち上がる。


「あ……ちょ、ちょっと待ってくれジェシカ。どうするつもりだ?」


「――アルミラさんが教えてくれたんだよ。そんなときはガツンとやっていいって!」


 いやいやいやいや!


 なんだよガツンとって! どんなときだよ! 物騒すぎる!


「うわ、おい! ジェシカ!」


 踵を返して走り出す彼女に、俺は跳ねるように立ち上がって追随。


 これから起こることを想像すると……なんというかこう、ヒュッとする。


 でも――もしかしたらいい方向に転ぶんじゃないかって、どこかに期待もあったんだ。


皆様こんにちは!

ようやく首がマシになりました。

でも、ペース戻します!と言ってまた遅いのもこわいのでボチボチ!とだけ。

いつもありがとうございます。

感謝を!

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― 新着の感想 ―
[一言] おおwwアルミラさんのような強い子に育ちそうですね!
[一言] わあい☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆ ハルトくんだぁ!! でも、奏さん、ご無理は禁物です〜 ゆっくり行きましょう〜
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