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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
725/845

親子関係は継続ですか①

******


「……ジェシカたちには伝えたいか? 自分たちのこと」


 そう口にした俺がいるのは、巨大なキノコが聳え、遺跡への入口がぽっかりと闇を讃えた場所。


 遺跡前には俺とジェシカたちの両親、それからファルーアが残ることになったんだ。


 誰かが遺跡に入るのを止めるためで、ほかの皆がアルジャマの町のトレジャーハンター協会に事情を説明しにいくあいだの留守番である。


 ――まあ……緑色の羽毛が生える菌の話をするのに緑色の羽毛を持った怪鳥を連れていくのはどう考えてもマズいしな……。


 俺の問い掛けにジェシカたちの両親は顔を見合わせ、なにかを考えたようだった。


 けれどその答えが炎の文字になる前に……焚火を起こしたファルーアが口にする。


「どちらにせよ、しばらくは私たちと行動してもらうことになるわ。バフを切らすわけにはいかないのだし。ハルトのバフの精度を上げることも考えないとだけれど……ひとつ提案があるの。あなたたちもバフを覚えてみない?」


『ギュエ……?』


「ハルトは古代魔法を使えない。それを使えるあなたたちがもしバフを覚えられたなら精度を上げる切っ掛けになるんじゃないかと思って。秘匿魔法のことも知っているのでしょう?」


 金色の髪をひと房掬い上げてくるくると弄んだファルーアは妖艶な笑みを浮かべ、そのまま続けた。


「ついでといってはなんだけれど、私に古代魔法について教えてくれないかしら? 魔法陣を使うのが主流だったとは思えないわ。でもあなたたちは魔法陣を使う……やっぱり魔力の消費を抑えるためだったのかしら? それとも……」


 ――ああ、目的はそっちか。


 俺は半分呆れ、半分尊敬の気持ちを覚えて肩を竦めた。


 バフを教えるならすぐ取り掛かりたいところだけど……どうやらジェシカたちの両親もノリノリだからだ。


『魔法陣を使うのはいくつか理由がある。ひとつは予測のとおり魔力消費を抑えるため。ひとつは強力な魔法を使うのに同時に何人もの魔力を注ぐことができるため。そして最後は……おそらくより新しい部類の理由だ。魔力の減少した者(・・・・・・・・)でも使えるように改良されたため』


 空中に描かれる炎の文字がチラチラと瞬いて散っていく。


 息を呑んだ俺は……その言葉を胸のなかで反芻した。


 ――そっか、アイシャで生み出された()で魔力が減った……もしくは不活性化したとき、古代魔法を使うことができなくなったひとは大勢いたはずだ。それを魔法陣で補おうとしたのか……。


「……私の見立てではかなりの魔力がひとから削がれたと思うのだけれど……それでも魔法陣にすれば古代魔法が使えたということ?」


 ファルーアが不思議そうな顔で小首を傾げる。


 緑色の怪鳥はバサバサと腕……もとい翼を振って、すぐに次の文字を描く。


『さすがに同等の規模は難しかったようだ。だから、それを少しでも補うために魔法陣は特殊な塗料で描く必要がある。少しでも強力な魔法を使える者の()を使っていたのだ』


「!」


 びくりと肩を跳ねさせた俺にファルーアが一瞬だけ視線を送ってくる。


 わ、わかってるよ、余計な反応はしないようにするよ……。


 俺がひらっと手を振ってみせると彼女はなにごともなかったように続けた。


「血に含まれる魔力もそのまま活かしていたのね?」


『そうなるな』


「あなたたちの拠点だった場所に赤黒い液体が入った小瓶があったわ。あれが……?」


『そうだ。ただこの方法も年々難しくなっていた。強力な魔法を使う者そのものが減っていったからだろう』


「そう……。ちなみにこれは私の興味本位なのだけれど、魔法陣の紋様には法則があるのかしら?」


『ある。塗料の形に魔力を流すことで『炎を生み出す』力を持たせたりするが、その形はいろいろある。派閥によって違う、といったところだ』


「つまり……古代にも派閥があって、派閥ごとに研究していたのね。あなたたちの組織――ドルアグはそれを解明している、と」


『古代魔法も魔法陣もどんどん廃れていって、いまや風前の灯火だ。しかし我らはそれに浪漫を見出した。はるか古代の人々のなんと素晴らしかったことか。できることなら住む場所に縛られずあらゆる場所で古代魔法を読み解きたい』


「…………」


 ファルーアは炎で描き出された言葉を読み終えると静かに瞼を下ろす。


 長い睫毛が頬に影を落としたところで……彼女は冷たい声を唇から滑らせた。


「素晴らしいことには同意するわ。けれど――あなたたちはジェシカたちよりも古代魔法を取った。災厄を生むのはそういうことよ。それは許されない」


 俺はその言葉に唇を噛み締める。


 ――そうだな、どんなに素晴らしくても……家族を……子供を置いて……『災厄』を生み出そうだなんて。


 彼らはちゃんと調査を終えて戻るつもりだったんだろう。


 だけど……。


 そう思ったとき、彼らは互いに視線を交わすと頷いた。


『そのとおりだ。だから、私たちは死んだことにしたい』



皆様こんばんは!

相変わらず遅々としてしまってますが、少しずつ取り戻したく思います!

引き続きよろしくお願いします。

いつもありがとうございます。

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