表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
710/845

古代遺跡は機密ですか②

 一気に気配との距離を詰めた俺たちは――そこにあるものに眉をひそめた。


 ……なん……ていうか……。


「ねぇハルト君……あれ……なにかな……?」


 ディティアが聞くけど……。


「俺にもわからない……」


 そう、わからない。


 俺の腰に届かない程度のキノコ……に見えるんだけど、異様なのだ。


「キノコを無理矢理異形にしました! って感じだね……」


 ボーザックがそう言って左手で頬を掻く。


 うん……例えるなら異形のキノコ。


 傘の部分にぶわーっと突き出しているのは棘。柄の部分を覆うのは『未知の魔物』と似たような濃い緑色をした羽毛。


 形はキノコっぽいのにキノコではないなにか。


「魔物……なのよね?」


「だろうな。下草の上に立っていることろから見ても移動できるのは間違いない」


 誰にともなく聞いたファルーアに〈爆風〉がどこか楽しげに言うけれど……。


 確かにそいつは瑞々しく青い下草を踏み締めて鎮座していた。


「あれか。上で戦った走るキノコの仲間か?」


 グランが大盾を体の前に構える。


「だとすると魔法も使うかもしれないな」


 俺も困惑しながら双剣を前に構えたところで、ディティアがむう、と唸った。


「敵意は感じないけど……。どうしましょうグランさん……?」


「……確かに。走るキノコも〈爆風〉が引っこ抜いたから走ってきたんだろ?」


 俺が聞くと、当のオジサマは楽しそうな微笑みを返してくる。


「うーん。なにもしてこないなら放置してもいいのかな……」


 ボーザックもそう言うけれど、あとあと襲われるかもしれないと思うと叩いておきたい気もするよなぁ。


 そんなふうにあれこれ話している俺たちの前で、キノコではないなにかは静かに佇んでいた。


 そのとき、しげしげとそいつを眺めていたファルーアが杖をくるりと回す。


「……ところで、どうしてこのキノコにも羽毛があるのかしら」


「あ、それ俺も思ったー。どう見ても『未知の魔物』と同じような気がするよね。……実は『未知の魔物』もキノコもどきだったのかな?」


「は? あれがキノコ? 手……っていうか翼もあったしさすがに違うんじゃないか?」


 俺が呆れてボーザックに返すと〈爆風〉がとんでもないことを口にした。


「ふむ。羽毛が生える菌でも保有しているのかもしれんな」


「ちょっと〈爆風のガイルディア〉。嫌なこと言わないでくれるかしら? その菌が移るのだとしたら私たちにも羽毛が生える可能性があるってことよ?」

 

「えっ、もふもふになるってこと……?」


「ティア……その感想は違う気がするなぁ、俺……」


 慌てるファルーアに不思議な返答をするディティア、突っ込むボーザックを順番に見て……俺はなんとなく羽毛に包まれた皆を想像してしまった。


 ディティアは……小動物とはまた違うけど……それはそれで撫で心地がよさそうだな。


 だとしたらグランはちょっと厳つすぎるかも――。


 すると目が合ったグランが心底嫌そうな顔をした。


「おいハルト……気持ち悪ぃ想像すんじゃねぇよ……」


「あれ? 顔に出てたか?」


 俺が笑うと、いまだにキノコではないなにかを眺めているファルーアがため息をこぼす。


「もう……真面目に考えるのが馬鹿らしくなったわ。……これも『未知の魔物』だとしたら討伐すべきだと思うけれど……菌とか言われたら近付くのも嫌ね」


「それじゃあこのまま放置だねー。魔物もそっとしておいてほしいのかもだし」


「――そうだな。戦闘を好まない魔物もいるだろうよ」


 ボーザックの言葉にグランが頷くので、俺たちはさっさと踵を返す。


 俺は大剣を背負い直すボーザックに笑った。


「張り切ってたのに残念だったなボーザック」


「ん? あはは、確かにねー! 暴れるのは次の戦闘まで取っておくよ。そういうハルトこそバフかけ直したのに残念だったね」


「ああ、そういえばそうだな。ま、これから建物も調査するし、そこでバッファーの本領発揮といこうか」


「はは。大きく出たな〈逆鱗〉! 期待しているぞ?」


「うわっ、聞いてたのか〈爆風〉……ふん、バッファーの有り難さを感じてもらうさ」


 俺が鼻を鳴らすと、ディティアがくすくすと笑う。


 俺はもう一度だけキノコではないなにかへと振り返り……なんともいえない気持ちになった。


 ――走るキノコはあんなに群れてたのにこいつは一匹なんだな。


 生物の気配がないこの森で、ただ一匹。


 それがどの程度の期間だったのかはわからないけど……寂しいとか思うのかな。


 もしかしたら俺たちの気配がして、仲間だと思ったとか――。


「……。ボーザック、その光るキノコくれないか?」


「え? これ? ……どうかした?」


「いや、なんかあいつ独りで寂しいんじゃないかなって。――その、考えすぎだと思うけど」


「……ふ、ハルトらしくていいんじゃない? ……それじゃあ」


 ボーザックはへらっと笑うとキノコではないなにかの近くに戻り、少し離れた場所に手にしたキノコをそっと置く。


「……仲間、見つかるといいね。襲ってきたら戦うけどさ!」


 再び駆け戻ってきたボーザックはそう言って、佇むキノコではないなにかに肩越しに手を振るのだった。


今日触ってみたらネットが重いのがすっかり治ってました!

やっぱり障害だったのかな。

更新遅くなりました、どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] キノコの恩返し来るかなww 毛が生えたグラン……熊さんかな⁇ [一言] 本編と何の関係もないけど適当に考えた 走るキノコオォ!の物語を妄想してしまってるwキノコの進化系 みたいなのが出て…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ