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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
709/845

古代遺跡は機密ですか①

******


 上から見えた三棟の建物はそれぞれ大きさが違った。


 どれも小さな灰色の石を積んで固めたような見た目で、凝ったところなんてひとつもない数階建ての箱型。


 汚れなのか白っぽく濁った窓硝子は所々割れていて、壁を這う枯れた蔦が廃墟感をかさ増ししている。


 五感アップは二重に戻してあるけど、森と同じで人の気配どころか生物の気配すらなく……どこか薄ら寂しい。


 心なしか空気の温度も下がったような気がした。


「うーん、不気味だね……ラナンクロストの地下遺跡を思い出すけど、それともちょっと違う」


 ボーザックがぽろりと口にすると〈爆風〉以外が思い思いに頷きを返す。


 血結晶の作り方を知ってしまったあの遺跡。レイスの上位種と思しきリッチに成り果てた『ザラス』という元人間が――「消えたい」と言ってきた場所。


「だとすれば、お前たちの持つ『情報』と同じものがあるかもしれんな」


〈爆風〉には俺たちが血結晶の作り方を知っていると話してある。


 だからなんだろう。


 その言葉に冗談の響きはなくて――俺たちが心の奥で不安に思っていることそのものだった。


 けれど、彼は黙っている俺たちを見回すと――(おもむろ)に続けたんだ。



「――さて、目を閉じろ」



「うぉ――ッ⁉ い、一、二、三ッ……」


 反応したのはグランで、俺は条件反射よろしく瞼を下ろしていた。


 ――ああ、そうだった。このオジサマはこういうところがあるんだった……。


 いまやるのか? っていうのは愚問以外のなんでもない。やるしかないのである。


 ため息がこぼれかけたけど、俺はすぐに意識を切り替えて集中することに成功した。


 自分でいうのもなんだけど……〈爆風〉との遊びには慣れてるからな。


 とにかく気配、気配だ、気配を探れ――。


 ……満ちる魔力のなかで滲む気配……俺がもっと読めるようになれば〈爆風〉に微妙だなんて言わせなくて済むはずだ。


〈疾風のディティア〉の背ですら遠いけど、それでも諦めるなんて選択肢はないわけで。


 俺はその瞬間、咄嗟に手を突き出していた。


 僅かな揺れだけ――そんな気配が近くを掠めたからである。


 こんなふうに気配が薄いのは隠しているからに違いない。


 つまりあんただろ、〈爆風〉!


 指先に微かに感じた熱はすぐ離れて空気に溶けていく。


 ――どうだ⁉


 俺はギュッと唇を引き結び、息を呑んだ。


 俺の右側、離れた場所にもうひとつ気配がある気がしたんだ。


 滲んでいるせいか読みにくくて遠く感じるのかも。


 ボーザックが俺を捜している可能性もあるし、〈爆風〉には触れたと信じるしかない。それなら自分の気配を隠してやり過ごす練習をするべきだろう。


 そう考えて息を殺し、その場にそっとしゃがみ込んで背を丸めた――そのとき。


「いいだろう」


〈爆風〉の渋くていい声がして目を開ける。


 いまがどのくらいの時間なのか不明な森の光が戻り、ぱちりと瞬きをした俺は前方斜め左前(・・)にいるボーザックに首を傾げた。


 ん、あれ? じゃあ右側にいるのは誰だ?


 ……というか、皆、俺の前にいるな……?


「……あれ?」


 俺と視線がかち合うとボーザックも呟いて首を傾げたんで、俺は咄嗟に双剣に手を伸ばした。


 見れば――〈爆風〉もいつでも剣を抜ける状態で意味深な笑みを浮かべている。


 ディティアに至ってはものすごく困った顔をしており、胸元で指先を困惑に泳がせていた。


「――〈逆鱗〉と〈不屈〉は感じたな?」


 試されていたのだと気付いて、俺はひょいと肩を竦める。


「おう。俺の右側……少し離れた位置になにかいるみたいだ」


 俺が応えると、グランとファルーアが目を瞠って顔を見合わせる。


 いまも気配は離れた位置にあるが、向こうも俺たちに気付いたのか動きを止めているようだ。


「は、まったく気付かなかったぜ――近くに意識を集中させすぎたか」


「私は全然わからないわ……やっぱりまだまだね……」


「俺、ハルトかと思って狙ってたんだけどー」


 ふたりの言葉のあとでボーザックがへへっと笑う。


「俺もお前だと思って気配を殺そうとしてたところ」


 立ち上がって口角を吊り上げると……ようやく〈爆風〉が双剣を抜いた。


 シャアンッと力強い音が森の木々に反響して木霊し、俺も剣を抜く。


「もういいぞ〈疾風〉」


「はい!」


〈爆風〉の言葉にディティアが双剣を抜き放つ。


 やっぱり〈爆風〉が止めてたんだな。


〈爆風〉の音とは少し違う軽やかな音が追随すると、ボーザックが白い大剣をひと振りした。


「キノコのときは全然戦えなかったし、ちょっと張り切っちゃうよー俺!」


「はっ、そりゃあいいな! 思い切り大盾を唸らせてぇと思ってたところだ!」


 乗り気なグランにファルーアが呆れた顔をする。


「あんたたち、キノコ持ってるんだから魔法には気を付けるのよ……?」


「……おお、そういやそうだったな!」


 応えるグランはどこか楽しげだ。


「もう、ボーザックもグランさんも! まだ魔物だって決まったわけじゃないです! もしかしたらジェシカちゃんたちのご両親かもしれないんですから!」


 ディティアが釘を刺したところで……俺はバフを広げ『五感アップ』の二重を書き換え、さらにひとつ追加した。


「それじゃとりあえず確認しよう! 『速度アップ』『反応速度アップ』、『属性耐性』!」


ネットが重いです……!

二日間あいてしまいすみません。

制限かかるような契約でもないのにWEBページが開けずです……。(ちなみにいつもスマホ投稿してます)


来てくださった皆様に感謝を。

よろしくお願いします!

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