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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
705/845

遺跡調査は難航ですか②

******


 黒っぽい石をみっちりと積み上げたような造りの遺跡は、とにかく下へ下へと続いていた。


 幅はふたり並べる程度、高さは俺が手を伸ばして天井に届くかどうかってところだ。


 しばらく進むと折り返すジグザグと延びた階段は静かで、空気は湿っぽくて冷たいけれど息苦しさはなく、むしろどこか――清々しささえ覚える清純さを感じさせる。


 芳醇な土の匂いと爽やかな森のような香りが肺を満たすのは心地よかった。


 バフは全員に『五感アップ』の二重。


 一度だけ『魔力感知』を試したんだけど――自分たちの持つキノコが眩しすぎたんで断念することにしたんだ。


 ただ……このキノコ。ランプより遥かに先まで照らせるのは確かにありがたい。これなら五感アップと併せて魔物への対応も早くできるだろう。


「ここは埋もれたわけじゃないな。最初から地下に造られたようだ」


 歩きながら口にしたのは〈爆風〉だ。


「へー。なんでだろうね、わざわざ掘ったってことでしょー?」


 ボーザックがキノコを片手に応えると、ファルーアが首を傾けて湿っぽい石の壁に触れた。


「――気候が厳しくて地下のほうが暮らしやすかったとかかしら……」


 その言葉に俺は「うーん」と唸る。


 ……地上の森は豊かで魔力も濃かったよな。


 当時は魔法大国じゃなかったと思うけど、それでも魔法に長けた民が暮らしていただろう。


「どうだろうな? そんなに過ごしにくい環境には見えなかったけど」


 だから続けて俺が言うと、ファルーアは肩を竦めた。


「そうよね――狩猟民族もいたくらいだもの。食べ物もあったでしょうし……やっぱりミラも連れてくるべきだったかしら。情報が足りない気がするわ。ティア、なにか理由は思い浮かぶ?」


「うーん。なにか隠したいものがあった――とかかな。こんなに深くまで掘り進ん……で……?」


 ディティアはボーザックの少し前あたりに出ていて、半身だけ振り返り応えたんだけど。


 その言葉が尻つぼみとなり、彼女の視線は前方――階段の先に戻されてしまった。


 階段はどうやら終わりらしく、最後の一段の先が平らな道になっている。


 ディティアはそこに足を下ろしたところだったけど、その先は俺の位置からはまだ見えない。


「どうした?」


 思わず聞くと彼女は前を向いたまま……まるで夢見心地のようなふわふわした声をこぼした。


「…………森が」


「もり?」


「森があります…………」


「……え? 森……?」


******


 ――なんというか。


 本当に森だった。


 俺たちは眼前に広がった景色に目を奪われ、たぶん息をするのも忘れていた。


 遥か高く弧を描く天井は半球状で、見下ろした先には広大な森と中央に聳える青々とした巨大な樹が見て取れる。


 その大樹に比べれば当然小振りだけど森を形成する木々も葉を茂らせ、大樹のものらしき太い根が縦横無尽に伸びた間に建物らしき人工物が三つ見え隠れしている。


 根は半球状の壁にまで張り出し、遠くまで見通せるほど明るいのは光る岩が天井を含めた所々に突き立っているからだった。


「なんだこりゃ……地下にこんな空間が……これが遺跡なのか?」


「すごっ……アルジャマの町より広いんじゃない? 魔法で掘ったのかな?」


 グランがポロッとこぼし、ボーザックが右手で庇を作ってぐるっと見渡す。


「ははっ、だろうな! これだから旅はやめられない! いい眺めだ」


「ほんと……すごい……」


〈爆風〉の嬉しそうな声に思わず頷きを返し……俺は呆然と森を見下ろした。


「空気が澄んで感じるのも森が呼吸しているからなのね――魔力が濃いし、あの岩も……魔力で光るもののようだわ」


 呆けていたファルーアが我に返ってそう言ったとき。


「さて、迎えが来たようだぞ」

「なにか来ます!」


〈爆風〉とディティアが反応し、間髪入れずにボーザックが大剣を構えた。


 俺たちの下りてきた道は半球状の壁沿い――崖に張り出した場所に繋がっていて、そこからは左手に向かって壁を這うように下り坂が続いている。


 その先で森と合流するんだけど――そこから。


「鳥……みたいな『なにか』だね……。あれが『未知の魔物』か」


 ボーザックの言葉どおりに。


 ずんぐりとした二足歩行の鳥……のような『なにか』が登ってくるのが見えた。


 色は濃い緑。


 翼は退化しているのか体より小さく、かといって人の腕とは似ても似つかない『羽根』が生えている。


 しかもこれがまた……嘴らしきところから涎のようはものを撒き散らしているんで――うん、絶対に友好的じゃないっていうか。


「まずいわね……いったんキノコは通路にでも投げておいて頂戴。ここは狭すぎるわ、魔法の撃ち合いになったらやりにくそうよ」


 ファルーアはそう言ってくるりと杖を回し……ふーっと息を整えた。


 俺たちはすぐにキノコを通路に投げ入れ、各々武器を構える。


「先手必勝、やるぞお前らッ! ハルト、いけるな?」


 グランが大盾を体の前にしてニヤリと笑ってみせるけど――当然ッ!


「任せろッ! いくぞ、『属性耐性』『属性耐性』!」


 ――俺は既に手を突き上げてバフを広げていた。


 まずは『五感アップ』を書き換えて全員に風の『属性耐性』を二重。


「『肉体強化』『反応速度アップ』『速度アップ』『持久力アップ』ッ!」


 グランには『肉体強化』を。


 ボーザックと自分には『反応速度アップ』を。


 ディティアと〈爆風〉には『速度アップ』を。


 そしてファルーアには『持久力アップ』をかける。


 これで全員三重、あとは様子を見てからだ。


 すると〈爆風〉が白銀と黒い鈍色の刃を体の脇にゆったりと構えて言った。


「まずは俺が行こう」


戦闘回いきます!

今週もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] キノコ爆弾が見れるかも…((o(´∀`)o))ワクワク [一言] まさか…ここがキノコの隠れ里か⁉︎とか キノコ、タケノコ戦争に敗れたタケノコが作った隠れ里⁉︎なんて想像して楽しみまし…
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