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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
702/845

魔力感知は才能ですか⑤

******


 そんなわけで。


 食器を片付け終えてテントに引っ込んだ俺は早速バフの教科書を取り出した。


 ちなみにグランたちは鎧を磨き終えて見張りをしてくれている。


 ディティアと〈爆風〉は焚火の横で双剣を磨き始めたんだけど――そう。俺はバフの習得が優先だからおあずけ(・・・・)ってわけ。


 うんうん。たまにはいいよな。


「さて、属性耐性は……っと」


 何度も読んだ一冊目はバラバラになってしまったけれど、俺の先生的な存在である〈重複のカナタ〉さんがくれた新しい教科書はまだまだ綺麗だ。


 ラナンクロスト王都を発つときにデバフ特集ももらったけど、新しい教科書が出たら絶対に自分で買おうと思う。


 ――目当ての頁はすぐに見つけることができた。


 というか、どのへんにあるかは覚えているわけで。


 俺は左手に本を広げ、右手の上でバフを練り始めた。


 基礎のバフでもある『属性耐性』は、例えるなら『浄化』のときに付与する力とは反対の力を纏うものだ。


 この『浄化』はいわば光の属性強化の上位版であり、レイスやリッチといった不死系の魔物への攻撃が強力になる。


 それの反対――つまり光の属性に対して強くなるってことで――撃ち出された光の魔法をうまく中和させるような感じだな。


「――とりあえず風で練習するか……」


 風の魔法はそんなに見たことがあるわけじゃないけど――なんとなくの形は覚えていた。


 それを分解するような形に魔力を練っていく。



「――こんな感じか……?」



 思いのほか早く形になったバフを……試すものがなかったんで自分に。


 見た感じはちゃんとバフになっていそうだ。やっぱり俺も成長していたんだろうか?


 ここまで早く形になるとは思ってなかったのもあって疑心暗鬼だったりもするけどな。


「あとはファルーア……だよなぁ」


 風の魔法か――下手したらズタズタ……いや、考えるのはやめておこう。


 俺は膝に手を置いて立ち上がり、テントの外に出る。


 見回すと光るキノコ群のそばにファルーアの姿を見つけた。


 ……ん、なんか枝を持ってるな?


 俺は後ろから近付いて――淡い水色に照らされた彼女に声を掛けた。


「なにやってるんだ?」


「――ッ⁉ な、なによハルト……驚かせないで」


「えぇ……」


 弾かれたように振り返るファルーアの金髪が鳥の翼みたいに広がって――また纏まる。


 俺は困惑の声をこぼしながら、ファルーアの持つ枝を見た。


 光るキノコを悠に貫通できそうな……俺の腕の長さくらいはあるただの枝――みたいだけど。


「キノコの串焼きでもするのか?」


「馬鹿なこと言わないで。……あんた魔力海月を覚えている?」


「は? ……えぇと、幽霊船対峙のときの奴か? それともアルヴィア帝国の……」


「たぶんどちらもだけれど、例にするなら幽霊船対峙のほうね」


「……。ええと、なんの話……?」


「このキノコにも魔力が詰まっているわ。だから突けば魔力の霧みたいなものが出るのかしらと思って。それだけじゃないわ、このキノコを魔法に巻き込んだとしたら……」


「…………!」


 俺はゴクリと息を呑む。


 幽霊船対峙のときに現れた『魔力海月』は攻撃すると毒々しい紫色の霧を吹き出す魔物で、その霧はふんだんに魔力を含んでいた。


 当然、そこに撃ち込まれた魔法は威力が増幅されて凄まじいものになるわけで――つまり、このキノコも同じなのではないか、と。


 ファルーアはそう言っているのだ。


「私の魔法だけじゃなく敵の魔法も当然強化されてしまうでしょう? ……ただでさえ魔力が濃い場所なのに、さらにこのキノコがある場所での撃ち合いは危険かもしれない。それを確かめようと思って」


「なるほど――でも突いたら毒霧が出るって可能性は? むしろ――走り出すとか……」


「…………あるわね。一応、長めの枝にしたのだけれど……」


 俺は納得して腕を組んだ。


「そういうことか。なら遠くから一発……いや、群生してるから危ないよな……」


「……そうね。……ああ、でも……石かなにかを投げ付ければいいかしら」


「おお、その手があるな。じゃあ俺がやるよ。距離取ろう」


「助かるわ。……ところでハルト、なにか用があったんじゃないかしら?」


「あっ……そうそう、風の魔法撃ってほしくてさ! 『属性耐性』の効果を試したいんだ」


「あら……もうできたの? 早いわね、やるじゃない」


「へへ、だろ? キノコのあとに頼むよ」


「ええ、任せて。切り刻まないように注意するわ」


「…………」


 いつもの妖艶な笑みで放たれるひと言に俺が固まると、彼女はさっさと踵を返す。


 や、やめてくれよ……冗談に聞こえないんだけど。


 俺は寒気の走った体を擦り、ファルーアとふたりでキノコから距離を取った。


 その途中、歩きながら足下にあった土塊(つちくれ)を手に取り硬さを確かめる。


 うん、こんなもんならいいだろ。


 一度『属性耐性』バフは消して、俺はすっと息を吸った。


「――『腕力アップ』……それじゃいくぞ。……ふっ!」



昨日は寝落ちしました、すみません……

なので今日は夜にもう1話いきます!

(これから頑張ります笑)


いつもありがとうございます。

よろしくお願いします!



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― 新着の感想 ―
[一言] そういやグッドの解禁はしないんですか?あれにどんな効果があるのかは知らないんですけどねw
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