表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
700/845

魔力感知は才能ですか③

 ……次はグランの番。


 今度は見逃すまいと双剣を収めてどっしり構えた俺に、ディティアも隣で向き直った。


「…………」


 グランは無言で白い大盾を構え、キノコが礫を生み出すのを待つ。


 ――ちなみにキノコ五体は逃げるわけでも攻めるわけでもなく、とにかく俺たちを追い払いたいのか懸命に礫を撃ってくる。


 串焼きにしてやろうと思ったけど……これはこれで少し可哀想な気も……いやいや、襲ってきたんだ――一般人からすればこいつら群れてるし危ないか。


 いや待てよ。最初は〈爆風〉が引っこ抜いたからじゃなかったか?


 どうでもいいことを考えていると――氷の礫が生まれた。


 グランは右足を下げ、半身を開いて躱したけど……ん?


「ふ。大盾が反応しているわよグラン」


 ファルーアが珍しく口元を手で押さえて笑う。


 そうなんだよ、グランの腕が……こう、つい受け止めようとしましたって感じで動くんだよな。 


「し、仕方ねぇだろ……」


 次の一撃も一歩移動して躱したグランだけど、やはり大盾が一瞬だけ前に出ようとする。


「あはは、職業病ってやつだね!」


「うるせぇぞボーザック! 集中してるんだから黙ってろ!」


 グランは渋い顔をするとボーザックに向けて俺と同じようなことを言い、顔を顰める。


 隣でディティアがくすくすと笑った。


「……これで三回だ。…………くそ、仕方ねぇな」


 グランは三回目も避けると大盾を背負って目を閉じる。


 大盾でつい受け止めようとした結果、回避を阻害されるってのも微妙だよな。


 ……とはいえ。


 グランは大盾なしでもすこぶる強い。


 正直肉弾戦で勝てる気がしない……速いし一撃が重いから一発で意識が飛ぶんじゃないかな。


 そんなグランだけど……。


「ぐっ!」


 鎧のない無防備な腹に一発。


 ぴくりと反応したものの回避が間に合わず腕に一発。


 最後は俺と同じく額に飛んでいった礫を……どういうわけか右の手のひらで受け止めた。


「……うん、攻撃がきているのは感じているようだな?」


「ああ……つっても至近距離まできてようやくだ。反射的につい受け止めちまった……」


〈爆風〉に応えたグランが肩を落として右手をひらりと振ると、受け止めた氷の礫が土の上に転がる。


「グランさんもガイルディアさんやボーザックと似ている感じですね。あとは魔法をどこまで受け止められるか……飛龍タイラント素材の大盾と岩龍ロッシュローク素材の鎧が活かせそうですけど……」


 ディティアが言ったところで……少し考える素振りをみせていたファルーアが細い肩に掛かった金の髪をさらりと払った。


「空気が弾ける方向と場所を誤らなければ耐えられるかもしれないけれど――見えないんじゃ難しいかもしれないわ。私もどこまで捉えられるか腕の見せどころね」


 そういえばファルーアは魔力を捉えられるよう鍛えているって話だったな。


 砂漠で戦った災厄――災厄の砂塵ヴァリアスの核を見抜けなかったことを〈爆炎のガルフ〉に指摘されたからだと言っていた気がする。


 たしかその話をしたのはアルヴィア帝国の帝国宮――その地下に広がる『中枢』と呼ばれる区画だ。


「魔力を捉える鍛え方があるんだったっけ?」


 俺が聞くと彼女は頷く。


「ええ、けれど……これだけ魔力が濃い場所だと難しそうよ。宝探しみたいな方法だもの」


「……宝探し?」


「そう。目を閉じて魔力を込めたものを適当に放り投げてから……その魔力を探り当てるの。魔力含有率が高いもの――たとえば宝石類ね。それだと探しやすくなるわ」


「はー、なるほどな。魔力を含みにくい物なら難易度も上げられるってことか」


 俺が頷くとファルーアは妖艶な笑みをこぼし、グランと入れ代わった。


「ファルーア頑張って!」


 ディティアが声援を送ると……彼女は返事の代わりに龍眼の結晶の填まった杖をくるりと回す。


 水色のぴったりとしたローブと金色の髪が淡く光るキノコたちに照らされるさまは――なんというか、うん。


 その向こう側にある氷漬けのキノコ群も相まって……こわ……もとい、強そうだ。



 そうして。


 見守る俺たちの前でファルーアは魔法を三回躱し、目を閉じての三回も難なく熟すのだった――。



「……ふう。捉えきれたわね」


「ファルーア、すごかった!」


 自分もさらっと熟したはずのディティアが手を叩いて喜ぶけど……。


 グランとボーザックは居心地が悪そうである。


 ……いや、俺もなんだけどさ。


「さて、全員終わったな。このキノコを片付けて腹ごしらえといこう。反省は食べながらでいいな?」


「賛成ですッ!」


〈爆風〉の言葉にディティアが胸元で手を合わせる。


 そんなに腹が減ってたんだな。


「……ハルト君、こっちを見て微笑むのはちょっとやめてほしいな……」


「あれ? 顔に出てたか?」


「もう!」


「はは。そう恥ずかしがることでもないぞ〈疾風〉。腹が減ってはなんとやらだ。〈逆鱗〉、鍋を温め直しておけ」


 言うが速いがゆったりとした動作で踏み出し、〈爆風〉はあっという間にキノコ五体を狩ってしまった。


 ちなみに氷漬けのキノコ群は放置することにしたようだ。しばらくは溶けそうにないしな。


「ガイルディアさんまで……意地悪です……」


「まあまあティア。俺も腹減ったし、一緒だよ」


「うう……べ、別に、その、お腹が空いて言ったんじゃ……」


 ボーザックに言いかけたディティアから、きゅー、と音がしたのはそのときで。


「…………」


 真っ赤になる彼女の背中を、ファルーアがぽん、と叩くのだった。



本日分です。

いつもありがとうございます✨


ほかの作品への誘導もたまには貼ってみようと思いますので、気が向いたらどうぞ!

(明日忘れなかったら試します!)

たしかリンクは貼れないんだっかな……URL記載くらいですかねー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ