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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
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魔力感知は才能ですか②

 問答無用でディティアの前に出た俺は鼻息も荒くキノコを睨み付ける。


 まずは目を開けて三回……避けるだけならなんとかなるはず。


 ただ――問題は目を閉じての三回だ。


 足の裏でしっかりと土の感触を確かめ、俺は腰を落として少しだけ踵を浮かせた。


 パリパリ……ッ


 キノコ二体が氷の礫を生み出し、ひとつが放たれる。


「……ッ!」


 ところが、である。


 ディティアを真似るように一歩横に移動した場所に二体目の礫が飛んできて……俺は慌ててさらに飛び退いた。


 れ、連携されるのはちょっと困る!


「あっはは、ハルトやるー!」


「う、うるさいぞボーザック! 集中してるんだから邪魔しないでくれるか⁉」


 怒鳴ってみたものの、既に次の一体が氷の礫を生み出している。


 飛来する礫を左上半身を捻ることで躱して――俺は声を張り上げた。


「く、これで三回……次ッ!」


 目を閉じての三回。


 しっかりと瞼を閉じ、視界を閉ざした俺は息を殺して気配を探る。


 気配はなんとなくわかる。〈爆風〉が言うには魔法発動時に魔力によって気配が(にじ)むらしいから――。


「いっ……⁉」


 ――しかし、努力も虚しく氷の礫が額に直撃。


 皆の気配が緩く笑ったような気がするけどいまは無視!


「くそ、もう一回だ!」


 魔法を見ないで避けるなんてやったことないから、魔力を読むっていう感覚が掴めないとどうしようもない。


 このキノコがもっとこう……殺気みたいなのを出してくれたらいいんだけど。


 まだファルーアのほうがわかりやすい――ん? 待てよ、ファルーア?


 そう思ったとき、俺はふと気付いてしまった。


 そう、そうだ。ファルーアだ!


 俺たちはファルーアが魔法を撃つとき、その魔力を感じているんじゃないか?


 慣れていてあんまり気付かなかったけど――反射的に体が避けてくれることすらあるだろ!


 あの感覚、あの感覚が思い出せれば……。ええと、殺気とも違う、こう『なんかやられそうだ!』っていう……。


 瞬間、俺は懸命に探ったキノコから例えようのない『揺れ』のようなものを感じた。


「これ――だッ!」


 右に一歩。


 確かに――なにかが俺の左側を行き過ぎた感覚があった。


「いま避けられただ――ろッ⁉」


 ビシィッ!


 思わず瞼を持ち上げて振り返ろうとした俺の額に、続けて飛んできたらしい礫がぶち当たる。


「い、痛い――」


 なんで額ばっか……。


「うん。いいだろう。最後もお前らしい終わり方だな」


「呆れた。せっかく避けたのに気を抜くからよ……でも……すごいわ、ちゃんと感じられたのね?」


〈爆風〉が歯を見せて笑い、ファルーアが鼻先で一蹴してから褒めてくれるけど――。


「いや、どうせなら褒めるだけにしてもらいたいかな……ちゃんと避けられたんだし」


「贅沢言うんじゃねぇよ。それで? どんな感覚なんだ? わかったんだろうよ?」


 グランが笑って聞いてくる。


 俺はキノコに視線を合わせたまま頷いてみせた。


「ファルーアだよ」


「えぇ? ファルーア? どういうことハルト」


 聞き返してきたのはボーザックだ。


 俺は口角を吊り上げて右手の双剣を振った。


「俺たち、ファルーアが撃つ魔法だったら感覚で避けられることないか?」


「…………え? あー、あるある!」


「それだよ、そのときの感じっていうか! あの感覚を薄めた『揺れ』みたいなのがわかった気がしてさ」


「すげぇなハルト! そうかファルーアか。するってぇと俺たちは案外鍛えられてんだな? ――お、おい褒めてんだぞ、わかるだろうよ⁉」


 無意識にファルーアを見たグランに、ファルーアがなんともいえない妖艶な笑みを以て応えている。


「じゃあ次は俺ね!」


 そこでボーザックがさっさと前に出てきたので場所を代わり、キノコが撃ち出した魔法を〈爆風〉が弾くのを眺めながら……俺は双剣を握り直した。


 ついでだから、こっちに飛んできたら俺も弾いてみるか。


「ふふ、ハルト君、コツを掴むの早かったね」


 とことこと隣にやってきたディティアが濃茶の髪を弾ませて微笑む。


「ファルーアさまさまだな。……強い魔物ならもっとわかりやすいかも。当たったら大変だけどさ」


「そうだね……未知の魔物が使う空気を弾けさせる古代魔法は見えないし、範囲も広いかもしれない。だから避けるのは大袈裟なくらいがいいと思う。『魔力感知』が使えるのが一番なんだけど――」


「うん。眩しいのは難点だよな――あ、そうだディティア。ちょっと思い付いたことがあるんだ。未知の魔物も『魔力感知』をかけたら眩しいんじゃないか?」


「……わ! それは名案かもしれないね! じゃああとはどうやって口を開けさせるか……かな?」


 俺たちが話していると……ボーザックの笑い声がした。


「あっはは! ファルーアならわかるのにキノコじゃ全然わからないや! 一回避けられたのもどっちかというと勘なんだよねー」


「見て避けるのは完璧だったわね」


「ふむ。〈不屈〉は魔力感知は苦手なほうか」


「うーん、そうかも。むしろ俺、大剣で受け止めちゃうかもしれない」


「ああ――それは俺もわかるな。大盾がありゃ大概なんとでもなっちまう」


 しまった、すっかり見逃したな。


 俺が頬を掻くと、隣でディティアが「ふふ」とはにかんだ。


「ボーザックはガイルディアさんと同じ感覚なのかもしれないよ。目を閉じて避けた一撃目は魔法発動よりちょっと遅れて動いてたから」


「あー、やっぱり遅れてたのかー。ハルトは動くのぴったりだったもんなぁ」


 …………ん、あれ?


「……ディティアはボーザックが避けるの見てたのか?」


 思わず聞くと……ディティアは首を傾げた。


「うん? ……見てたけど……どうかしたハルト君」


「……あー、いや。なんでもない……」


 たぶんこういうところも差になるんだろうなぁ……。


 俺は情けなくて肩を落とすのだった。


本日は日付変わる前に!

いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 流石ディティア…認識出来る視野が広いなぁ
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