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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 魔法大国ドーン王国
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魔物退治は得意ですか③

 ジェシカと弟たちは別室でほかの職員が見ていてくれるそうだ。


 両親に関わるような内容はあとでちゃんと報告すると約束し、俺たちは別室に入った。


 木製の机と椅子はジェシカの家で見たものと似ていて、使い込まれ艶がある。


 ――各々がそこに腰を落ち着けたあとで支部長ロロカルさんの話を聞くと――遺跡を荒らしているのはドルアグだけでなく未知の魔物(・・・・・)ではないかとのこと。


 数件だけれどトレジャーハンターの被害報告が上がっていて調査隊を組むところだったらしい。


 正直、未知の魔物なんて聞いて想像するのは『災厄』だ。


 冷たい汗が背中を伝うけど……いまはまだ確定したわけじゃない。落ち着かないと。


 考えながら机を挟んだ向かい側のロロカルさんに視線を向けると、彼は机に資料を置いて肘を突く。


「ちなみにドルアグは古代魔法の習得を目標に掲げる……どちらかというと過激な組織です。トレジャーハンターではないので遺跡で出会すと敵対することが多く……彼らの乱暴な発掘作業や大々的な封鎖への不満が絶えないのですよー」


 ロロカルさんは朗らかにそう言うと「ただ……」と続けた。


「乱暴な発掘作業を行うのはトレジャーハンターも同じです。この地域は遺跡が多いのですが荒らされたところも多いのが現状ですねー」


「ああそっか……扉とかもこじ開けたりするもんな」


 俺がぼやくと隣のディティアに肘で突かれた。


 余計なことを言うなと言いたいんだろうけど……ファルーアが移ってきたんじゃないかな……突きかたは柔らかいけど。


 俺が渋い顔をするとディティアはわざとらしくコホンと咳払いをしてみせる。


 その仕草は可愛い、うん。


 ……そこでグランが顎髭を擦りながら唸った。


「支部長。未知の魔物ってのは――まさか『災厄』じゃねぇよな? 俺たちが〔白薔薇〕だって知ってんなら『災厄』のこともわかるだろうよ」


「ええ、まあ……お話はお伺いしているんですけどねー。ロロカルさんはその災厄についてあまり詳しくはありません。ただ言えるのは――未知の魔物は新しく見つかった遺跡から現れたようだ、と――それくらいですねー」


「! 新しい遺跡が見つかっているんですか? ……もしかして往復で十日前後だったりしませんか?」


 応えたロロカルさんにディティアがぱっと目を(みは)る。


 ジェシカたちの両親に関わっているかもしれない、そう考えたんだろう。


 ところがロロカルさんは少々困った顔をした。


「それが……もっと近いんですよー。ここから二日もあれば到着できちゃいますねー。先ほどの子供たち、ご両親は十日もあれば戻ると話していたんですよね? 探索に時間をかけたかったとすればあり得なくはないですが……」


「――なにか問題でもあるのかしら?」


 その様子にファルーアが問い掛ける。


「問題というか……時間差というかですねー。その遺跡が発見されたのは、なんとまだ一週間前なんです。なので子供たちのご両親が二週間前に向かっていたとしたら彼らは未発見の遺跡を知っていた(・・・・・)ことになるのですが……ドルアグの痕跡はいまのところ報告にありませんー」


「ドルアグの痕跡って?」


 俺がさらに聞くとロロカルさんは少しだけ考えてから説明をしてくれた。


「そうですね……ドルアグが遺跡調査を行う場合、組織的になるので大規模な封鎖を行うことが殆どなんですよー。よくわからない魔法陣とかが並べられていて……触るとドカンといくこともありますね。もし少人数だとしてもこの罠は必ずといっていいほど設置されていますー」


 ああ、そういえばアイシャで初めて遺跡調査をしたとき――つまり俺たちが血結晶の作り方を知ってしまったあのとき――遺跡の建物には罠が仕掛けてあったよな。


 扉に魔力が渦を巻いていて……触れると火を噴き出した。


 あれと似たようなものだろう。


 とはいえ俺たち冒険者は依頼を受けて罠や魔物退治を行うわけで……遺跡自体もギルドや国が管理していたような気がする。


「なあ、ドーン王国の遺跡って誰が管理するんだ? 遺跡を勝手に封鎖されたら困るだろ……?」


 だから続けて俺が聞くと……答えてくれたのはアルミラさんだった。


「誰のものでもないのよ。魔法大国と呼ばれるだけあって古代の魔法都市国家がドーン王国の前身と言われていてね。その叡智を解き明かすこと自体を国がよしとしているというわけ。だから基本的にはご自由にどうぞという形を取っているわ。……そのせいで組織的な対立もこうやって起きているんだから笑えないけど」


「あー。だから過激組織ができちゃったりするんだね……結構物騒な国なんだ」


 しばらく黙っていたボーザックがぼやくけど――そのとおりだよなぁ。


「あの、それじゃほかにジェシカちゃんたちのご両親が向かいそうな遺跡って……」


 ディティアが困った顔でおずおずと口を開く。


 支部長ロロカルさんは首を振った。


「往復で十日前後の距離にある遺跡は今回発見された遺跡を入れて三つあります。ですがあとのふたつはもう何年も前に見つかったもので調べ尽くされているかと……」


「そんな……」


「……諦めるのは早いわティア。だとしたら一番怪しいのはやっぱりその新しい遺跡ってことじゃないかしら。トレジャーハンター協会はどうやってその遺跡を見つけたの?」


 しょんぼりと肩を落としたディティアをファルーアが励ますと、ロロカルさんはそんな彼女たちに微笑んだ。


「そういう考え方もできますねー。発見されたのは通りがかったトレジャーハンターが情報を持ってきてくれたからです。……あの子供たちに怒鳴った三人組ですよー」



「――うん。どうやらいいところで戻れたようだな? ……その遺跡の話を聞いてきたぞ」



 ……扉代わりの布を捲り――渋くていい声をした伝説の〈爆〉が戻ってきたのはそのときだった。

 


日付変わってしまいました!

本日?もお疲れ様でした。

いつもありがとうございます。

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