武器と防具と⑦
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どういうかわけか体の隅々まで採寸された俺たちはどんな形がいいかとか装飾をどうするとかの聞き取りのあとで解放された。
うん、朝からやってもう夕方だけど……。
とはいえ俺はファルーアと〈爆風〉にバフを試すことを許されているわけで、夕飯までの時間を活用させてもらうことにしたんだ。
場所は念のため広場にした。ファルーアには魔法を使ってもらうことになるからな。
「じゃあいくぞ。――『魔力活性』」
まずは意識せず、いままでどおりのバフをふたりに。
最初は感覚を掴んでもらうことからだ。
「燃えなさい」
間髪入れず、ファルーアが龍眼の結晶の上に小さな炎を浮かべてから掻き消した。
「そうね、確かに変換率が高い気はするけれど……威力アップとはまた違うようよ。――少し誤算だわ」
「……威力アップは同じ魔力でもより強力な魔法になるって気がしているけど……どう違うんだ?」
「うまく説明できないのだけれど――より本物の炎が生み出せる、といったところね」
「ふむ。〈逆鱗〉、お前はたしかバフが安定すると話していたな。つまりメイジの魔法も同じなんじゃないか」
〈爆風〉はそう言うとシャアンッと双剣を抜き放ちくるくるっと回してみせる。
どうでもいいけど――器用だな。
俺もちょっと練習してみようかな? 結構格好いいというかなんというか。
「安定……たしかにいい表現ね。威力が上がるかと思っていたけれど、例えばこの状態で岩の槍を作ればより鋭利にできるし、水を生み出せば鍋から派手に飛沫を上げずに済むかもしれないってことだわ」
「おお……」
全然違うことを考えていた俺はその言葉で一気に引き戻された。
ファルーアが水を出してくれるんで旅はかなり楽だけど、鍋に入れるとき派手に跳ねるんだよなあ。
それがなくなるって、すごいんじゃないか?
「今回、岩龍ロッシュロークを焼いた光の球ももっと小さく凝縮できそうだわ。敵の隙を突くなら威力アップより断然こっちね」
ファルーアは再び炎を灯すとそれをぐるぐると渦巻かせて小さく纏めてみせる。
「なるほど。よくわかったよ――そうするとバフが切れたときは精度が下がると思っていたほうがいいかもしれないな」
「そうなるわね。まあ、精度が下がっても広範囲を一気に燃やせばいいのだけれど」
……いや、物騒だからやめてほしい。
「……ごほん。で、〈爆風〉はどう?」
俺は咳払いして口にしかけた言葉を濁し、〈爆風〉に問い掛ける。
彼は刃を荒々しく――だけどぶれない体捌きで何度か振り抜き、姿勢を正した。
「うん。特に変わりはないように感じるな」
「ええ、変わらないのか?」
「そのようだ。どちらかというと魔力より筋力に頼った戦い方をしているだけかもしれん」
「あー……」
俺は曖昧に頷いて少し考える。
そうだよな。〈爆風〉に古代の血が濃く残っているとして。
古代の人々にも魔法を使う者が集う『魔法都市国家』と魔法を使えない者が集う『古代都市国家』があったわけだから、なにも魔力に頼って戦っていたとも限らないか。
でも病にならずに受け継いだ魔力だ――そう違いはないだろう。
――うん。それってむしろ好都合じゃないか?
「なら〈爆風〉が変わったって思えるバフができれば――」
「そうだな。キィスの病により効果があるかもしれん」
俺の言葉に〈爆風〉が笑ってくれる。
「よし、じゃあちょっといくつか試させてもらうな。ファルーアにも同じようにかけるから違うかどうか確認してほしいんだけど」
「任せなさい、付き合うわ」
妖艶な笑みをこぼして金の髪を耳に掛けた彼女は、龍眼の結晶の杖をくるりと回す。
俺は頷いて手の上にバフを練り上げた。
――そうだな、魔力活性は治癒活性の応用って感じだ。
細胞の動きを活性化させるのと同じように魔力を動かすというか……なんというか。
さっきとは違う、俺の魔力とも違うものを動かせ!
「いくぞ、『魔力活性』ッ!」
すみません、投稿できていませんでしたっ
昨日分です!
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