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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 自由国家カサンドラ
676/845

武器と防具と⑥

******


 翌朝。


 目元を擦って体を起こした俺は隣のベッドで大の字になっているグランを寝ぼけ眼で眺めて頭を掻いた。


 ……あれ。俺、グランと同室だったか?


「ん、おぉ、起きたかハルト。邪魔してるぞ」


「あー、うん? おはよう……。えぇっと? ボーザックは? ふあ……」


 盛大に欠伸をして返すと、彼は上体を起こして大きく肩を回す。


「俺の寝床で潰れていやがったな」


「へえ? 〈爆風〉と呑んでたのかな?」


「だろうよ」


「はは。なに話したんだろ、珍しい。……そういえばグランはファルーアとなに話したんだ?」


「あ? なんでそれを……」


「グランがファルーア連れ出したあとに、俺がディティアを連れ出したからさ」


「んっ、ディティアをか? ……それで?」


「それでって?」


「なに話したんだ、そっちのほうが重大案件だろうよ!」


「……はぁ? 双剣を作るかどうかって話だけど……あー、俺がディティアの双剣を壊したから気にしてくれてたんだな……ごめんグラン。大丈夫だと思う」


「………………」


 グランはものすごく渋い顔をして顎髭を擦ると、ひとつため息をこぼした。


「聞いたのが間違いだったな……」


「……いや、なんかすごく不本意なんだけど?」


 思わず突っ込むとグランは笑いながら「悪い」と言ってベッドから下りる。


「なあハルト。ドーン王国に行ったら少し時間が欲しい。付き合ってくれねぇか?」


 突然の質問に首を傾げてから……俺は思い当たって頷く。


「アルミラさんのことでか? 俺は……っていうか、皆、反対なんてしないと思うけど。……そうすると早いところ手紙も送らないとだな……」


「――ふ。さ、そうと決まれば準備して朝飯にするぞ。今日からは武具の製造だ」


 グランはどういうわけか嬉しそうにそう言って……さっさと準備を開始する。


 俺は顔を洗うために立ち上がった。


 窓から差し込む外の光は今日が晴天だと告げている。


 なんとなくだけど――いい日になる予感がした。


******


「グランとボーザック、それから私が鎧。ハルトとティア……〈爆風のガイルディア〉は双剣ね」


 朝食を食べながら各々の希望を確認したファルーアはさらさらと告げ、アルミラさんと意味深な目配せを交わす。


 アルミラさんはすぐに立ち上がって部屋を出ていった。


「早速だけれど、このあとは採寸よ。完成までは数日ね。今回は巨人族の職人たちが総出で作ってくれることになっているわ」


「総出で? すごいファルーア! そんな交渉までしてくれたの?」


 妖艶な笑みをこぼすファルーアに、ディティアがきらきらと瞳を輝かせる。


「私よりもミラの功績ね。ミラの交渉術は勉強になったわ。……それで、そのあとの予定だけれど」


 ファルーアはそう応えてグランを見た。


「……ああ、次はこのままドーン王国に向かう。今回の報酬は龍素材の武器と防具だ、トレジャーハンター協会も文句ねぇだろうよ。商人たちも集まってくれば復興も進む。ここはもう大丈夫だ」


「ドーン王国か。シエリアとも謁見するのだろう?」


 そこで〈爆風〉がこっちを見たので、俺は肩を竦めて笑ってみせる。


「約束したからな。……ついでに手紙も出したいし……あ、そうだ」


 俺は自分の荷物から一枚の栞を取り出し、ディティアの前に置いて頬杖を突いた。


 ――渡してやるのはちょっと不本意だけどな。


「……えっと?」


 不思議そうな顔をする彼女に、俺はなんとなくモヤモヤしつつ素直に告げる。


「シュヴァリエからディティアにってさ。ラナンクロストによく咲いている花だとかなんとか」


「……そういえば『故郷の押し花でも送ろう』なんて言っていた気がするかな」


 ディティアはそう言ってクスクス笑うと栞をそっと手に取った。


 ……故郷の押し花ね。確かにディティアからそんなことを聞いたような気がしないでもないけど。


 有言実行なのがどうにも腹立たしいところである。


 俺が顰めっ面をしていると……珍しくおとなしいボーザックが額に左手を当てながら口にした。


「……ハルトー。会話が頭に入ってこない……バフかけてー……気持ち悪い、頭痛いー……」


「お前、そりゃ二日酔いだろうよ」


「うん。少し呑ませすぎたか」


 グランが呆れたように口にして、〈爆風〉が歯を見せて笑う。


 ……うーん。精神安定バフって二日酔いにも効くのか?


「そうだわ、ハルト。製造するあいだにバフを試しましょうか」


 考えていた俺にファルーアが言ったのはそのときで、俺は思わず頬杖から顔を上げた。


「え?」


「なんだかんだ試せていなかったからな。俺も付き合おう」


〈爆風〉までそう言ってくれたんで、俺は大きく首を縦に振る。


「助かる! それじゃあ『魔力活性』の検証と……デバフの練習と……」


 やばいぞ。やりたいことだらけだ!


「ねぇ、俺は助けてもらえないのかな……」


 あれこれ考えている俺に、ボーザックが捨てられた犬のような面持ちでぼやくのだった。


日付変わってしまいましたが更新!

よろしくお願いします!

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