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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 自由国家カサンドラ
661/845

共闘と勝者と①

******


 空は暗く、明けるまではもうしばらくありそうだ。


 暗い山道は危険だとわかっていたけれど、気にしている場合でもない。


 夜中活動する生き物の気配を感じながら、俺たちは巨人族たちと合流するために進んでいた。


 道中では岩龍ロッシュローク戦に備えて戦法を練ることになったんだけど、特徴や大きさなんかを細かく伝えるのに苦戦していた俺は……そこで閃く。


 ――そうだよ。あるじゃないか、俺には! 最高の情報伝達手段が!


「……? どうしたのハルト君、なんだか楽しそうだけど……」


 ディティアが訝しげに聞いてくるので、俺は片目を瞑ったみせた。


「ふふふ。広げるのは初めてだけど――いくぞ、『知識付与』ッ!」


 ちなみに俺たち〔白薔薇〕は五感アップと速度アップの二重、巨人族三人は速度アップのみ。


 ソナとソナの父親がどの程度バフに耐えられるかわからないからな。サの巨人族ヒーラーは彼らに合わせておいたんだ。


 知識付与のバフはそんな俺たち〔白薔薇〕とサの巨人族ヒーラーを包む。


 一瞬だけ皆の動きが止まり……次の瞬間、俺はグランの呻き声を聞いた。


「うぐぅ」


「ちょっとグラン! どこが大丈夫なのよ! あなた本当に怪我はないの⁉」


 おお……。


 踏み付けられたらしいグランはぶんぶんと首を振るが、ファルーアは怒り心頭……。


「消し炭にするまでもないわ」と吐き捨て念のためグランにヒールをかけるよう巨人族に頼む彼女に、俺は思わずうんうん、と二度頷いた。


 見れば、ボーザックも同じように頷いている。


「……俺、なんかこの感じ落ち着くー」

「……わかる」


 グランの姉だというアルミラさんはこう……もっと豪胆で物怖じしない感じなんだよな。


 だからファルーアのほうが少しだけ感情が籠もっているというか、なんというか。


 口にしたらますます怒りそうだけど。


「……えっと、ハルト君。いま見えたのが岩龍なんだよね? 思ったよりずっと大きいかも」


 そこでおずおずとディティアが口にしたので、俺は我に返る。


「……そう! それだ! 伝わっただろ?」


「俺が跳ね飛ばされて転がったところもばっちりねー」


 ボーザックが苦笑する。


「まあそれは……ほら。魔法の様子を伝えるのに必須だったからな!」


 俺が応えると先頭を歩く〈爆風〉がこっちを振り返って笑った。


「なかなか便利なバフだ」


「そうだろう、そうだろう? はー、覚えてよかったな……知識付与!」


 一緒になって笑うと、グランにヒールをかけたサの巨人族が呆れたように言った。


「あんなのを見て笑えるとは驚きサ」


 ソナとソナの父親は不思議そうな顔をしているけど、あとで説明してあげればいいか。 


 するとファルーアがくるりと杖を回して俺を見る。


「あの岩は体から生えているわけじゃないのね」


「うん、そうだと思う。岩みたいな龍だと思ってたけど、岩を纏う龍――だったんだな」


「……そうすると私の魔法でもその岩を使えるのかしら」


「ん?」


 口元に手を当てて呟くファルーアに聞き返すと、彼女は人さし指を立てて続けた。


「たまに私が地面から岩の槍を作り上げるでしょう? あれをその岩に使えたら……って」


「ふむ、内側に向けて槍状に変化させるというわけか」


〈爆風〉が続けると、ファルーアは頷いてから髪を払う。


「ええ。岩を纏うくらいだもの、本体はそこまで硬くないかもしれない」


「でもどうやって纏っているのかな? そもそもが魔法で体に貼りついていたとしたらファルーアの魔法と拮抗しちゃう気がするよ」


 ディティアが言うとファルーアは眉を寄せて難しい顔をした。


「そこね。龍を相手に魔法の撃ち合いなんてしたことがないわ――けれど一個でもなんとかできれば御の字よ」


「うん。その岩を盾にして攻撃もできるかも」


 ディティアが真剣な顔で頷くので俺は少し考えて言った。


「もしそれができたとして、岩龍相手に剣を突き通すなら柔らかいところを見つけないとだな。何度か突き刺したけど切っ先が埋まったのはほんの少しだ」


「……それなんだが、ひとつ提案がある」


 そこでグランが顎髭を擦りながらゆっくりと口にする。


 ヒールの効果があったのかは定かではないけれど――少なくとも元気そうだ。変に浮ついて見えたのも落ち着いたようだし、ファルーアのお陰なのかも。


「ほう、聞こう」


〈爆風〉が応えると、グランは頷いて続けた。


「……アブラッムンナの麻痺毒、あれを使えねぇかと思うんだが」


「アブラッムンナ……?」


 眉間に皺を寄せるファルーアに〈爆風〉はにやりと俺を見る。


 ふふん、いいぞ、それくらいお安い御用だ!


「……『知識付与』!」


 バフを広げれば、毒々しい『食人花(しょくじんか)』と戦った記憶が皆に共有された……はず。


 あの花が持っていたのは巨人族ひとりを簡単に麻痺させてしまう即効性の毒。


 確かにあれが岩龍相手に使えるならかなり有利だ。


〈爆風〉は満足そうに頷くと笑った。


「試す価値はある。効くのかどうか確認が必要だが、麻痺してしまうならあとは煮るなり焼くなり好きにできそうだからな」


開いちゃったのですが更新です!

いつもありがとうございます、感謝を!

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― 新着の感想 ―
[一言] 知識付与便利やな〜 逆鱗lllで読むの終えてたけど……更新されてて嬉しかった!
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