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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅢ 自由国家カサンドラ
614/845

情報と仕事と⑦

「……聞いちゃいるが……ストールトレンブリッジから手紙でもあったのか?」


 グランが聞き返すとマルレイユはゆっくりと頷く。


 その動きに合わせ、左肩から前に流した太い三つ編みがゆらりと揺れた。


「ええ。トレジャーハンター協会ヤルヴィ支部長の曲者(くせもの)ストールトレンブリッジから、あなた方が龍の噂を聞き付けてこちらに向かっていると。まだおおやけになっていないというのに……どこから情報を持ってくるのやら。……まあいいでしょう。実際、事は動き出しております」


「動き出しているということは――龍は本当にいるのね?」


「ええ、〈光炎のファルーア〉。ここから北東方面に谷があるのはご存知ですね? 以前、災厄の毒霧ヴォルディーノが眠っていた場所です。自由国家カサンドラとドーン王国の境界付近でもあるその場所で目撃情報が出ました」


「ってことはまだ被害は出ていねぇのか? この町でも噂の欠片すら聞こえなかったが」


 グランが顎髭を擦るとマルレイユは困ったように眉根を寄せる。


「――それなんですが。皆様にその調査と……可能であれば討伐(・・)を頼みたく」


「ほう? 討伐とはまた思い切ったな」


〈爆風〉がなぜか楽しそうに言うけど――いやいや。


「俺たちだけで討伐も?」


「伝説の〈爆〉の物語みたいだね……」


 ディティアも驚いたのか目を丸くして呟く。


「あはは。そしたら俺たちも伝説になれるのかな? すごくない?」


「悪くねぇ――なッ⁉」


「馬鹿言ってないで真面目に聞きなさい。……マルレイユ会長、まだ情報収集の段階ということかしら?」


 ……いまのはグラン、踏まれたな。


 豪快に笑ったグランの顔が一変して引き攣っているのを横目で見ると、ファルーアの向こう側でたまたま踏まれなかったのだろうボーザックがそろりと視線を逸らすところだった。


 そんな俺たちのやり取りに慣れているのか……マルレイユは表情を変えることなく淡々と続ける。


「ええ。情報が欲しいのは間違いありません……が、実は少しばかり手を出しにくいのです。あの谷には巨人族の町がありまして……交流はあるのですが、最近どうも二部族が争っているようで」


「……巨人族?」


 俺は思わず聞き返し、今度こそグランを見た。


 皆の視線も自然と集まる。


 グランは盛大に眉をひそめると――顎髭を擦ってから口を開いた。


「おい。お前ら俺を見るんじゃねぇよ……」


 ……だって、なぁ。巨人族の町って……俺たちの次の目的地だぞ?


「あのう。マルレイユ会長。まさか、まさかとは思うのですけど……ストーさんからなにか聞いています、か?」


 いたたまれない空気にディティアが右手をそろそろと上げて言うと……マルレイユはにっこりと微笑む。


「アルヴィア帝国帝都で巨人族とご交流なさった……その程度しかお伺いしていませんね」


「いや、それ絶対知ってるだろ……」


「はは。これはしてやられたな」


 ひとり楽しそうな〈爆風〉は肩を落とす俺にそう言って笑うけど……なんだかなぁ。俺たち、ずっと手のひらの上で踊らされているような気がする……。


「はぁ……。仕方ねぇな。マルレイユ会長、その目撃情報ってのはどんな内容だ?」


 グランが言うと、マルレイユは頷いて……説明を始めた。


******


 龍は岩盤のような堅い皮膚を持つ『岩龍(がんりゅう)』と予想されているそうだ。


 灰色や白、黒が入り混じった体色は岩場に寝そべれば龍とわからなくなるほどで、擬態能力が高いという。


 目撃者によれば谷底を這うように進む姿が見えたらしいけど――巣や行き先についての追加情報はなにもないとのこと。


 情報収集にあわよくば討伐、といっても……まずはその『岩龍』捜しから始めろってことだな。


 ……で。


 その龍がいるとされる谷には巨人族の住まう町がある。


 当然、龍の情報がある可能性も高いわけなんだけど……巨人族たちは二部族間で絶賛喧嘩中らしい。


 しかもどうやら互いが牽制しあって交易も滞っているのだという。


 腕のいい鍛冶師がいるかもと期待していたんだけどなぁ……大丈夫かなぁ。


「あれだけデカいんだからさ、喧嘩も大規模なんだろうねー」


 ボーザックが物騒なことを言って笑うけど……。


「やめてくれよ……想像しただろ……」


「でも、もし巨人族が協力してくれるなら心強いかもしれないよハルト君」


 俺がげんなりしていると、ディティアが胸元で両手を握り締めてうんうんと二度頷く。


「…………」


 ちょっと和んだので頭を撫でると、ディティアが目を丸くして固まった。


 兎とか、リスとか。やっぱり小動物だよなぁ。


 想像するならゴツい巨人族よりそっちがいいって話だ。


 すると……マルレイユが苦笑して纏めに入った。


「そのような状況ですから、この情報をもとに探索も戦闘もできる『裏ハンター』へのお仕事としたかった、というわけですね。……それと皆様。災厄討伐を証明する名誉ある書簡をお受取りになっていませんね? 報酬もです。仕事なのですからそこはきっちりお願いいたします」


「……おお」


 グランがこぼすと、〈爆風〉が笑った。


「ははは、報酬をもらっていないのか? さすがだな〔白薔薇〕」



そろそろ戦闘がしたいですね。

本日もよろしくお願いします!

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