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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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旅しませんか。②

旅立ちの日の朝、ナンデスカットの前にナンデスカさんを含めた職人さん達とナンデスト、ウルとルフが揃っていた。

フェンは控えめに、その後方で座っている。

そして、何故かギルド員のカコの姿も。


「それじゃあ出発する、世話になった」

ウルとルフを存分に撫でてからグランが言うと、ナンデストが大きな包みを差し出した。

「これは携帯用の高栄養バーです。皆さんのために試作してたんですよ。保存も利くし、そんなにかさばらないので」

「高栄養バー?」

グランが受け取った包みの中に、人数分の小袋が入っている。

覗いてみると、1本が片手に収まるくらいの細長い物がたくさん。

クッキーみたいな、ビスケットみたいなやつだ。

「道中、街までもう少し、とか、遭難した!とか、そんな時に食べてください」

「そ、遭難した!とかはちょっとやだなぁ俺」

「ふへへ」

それから、と、ナンデストが振り返ると、今度は別の職人さんが包みを差し出した。

「菓子白薔薇がいくつか入ってます。これは1年くらいしか持ちません。早々に配ってください。1個か2個くらいなら食べてもいいですよ」

それはディティアに渡して、ナンデストは珍しくちょっと俯いた。

「僕、ディティアさんに会えてよかったです」

「?、私達もよかったです!」


……。

あれ、うーん?


俺はなんとなく変な感じがして、首を傾げた。

ナンデストは困ったような、はにかむような、変な顔をしている。


「……はい、絶対にまた来てくださいね」

「もちろんです!いっぱい宣伝しますね」

「!……ふへへ、約束ですよ」


何となくもやっとする気持ちでそれを見ていたら、ファルーアに肘で突かれた。

「えっ、何、ファルーア」

「私は一応ハルトを応援してるわよ」

「応援?一応??」

「ま、気張りなさい」

何だ…?


ナンデストはディティアと握手をして、こっちを向く。

「それじゃあ気を付けてくださいね」

「おう」

「困ったらギルドに頼ってくださいね!」

カコが溌溂とした笑顔で手を振ってくれる。

俺達は頷いて、街道の出発点である街の東へと向き直る。


……最後まで、フェンはこっちを見なかった。


******


湖畔の街、アデルドまでは徒歩で行く。

大体2週間程度で到着する予定だ。

久しぶりな気さえする、五感アップのバフをボーザックとディティアにかける。


フェンが来なかったことは心残りだったけど、ウルとルフがいる場所なら幸せかもしれない。

俺達が登録した魔物であることはギルドで把握してくれてるし、大丈夫だよな。


そんな気持ちで、俺は草原が広がる中、街道を歩いた。

出会いも別れも、冒険には付き物だもんな。


「そうだ、ディティア。2つ名の話、聞かせてくれるんだろ?」


俺は気持ちを切り替えて、ディティアに話しかけた。


少し前を歩いていた彼女は、驚いたように振り返る。

「えっ?ハルト君、本気だったの?」

「え?当たり前だろ?…ボーザックも聞きたいよな?」

「うんー!興味あるー!」

「ほら」

「…え、えぇ…そんな面白くないよ?」

「あら、いいじゃない。私は聞きたいわ」

「ファルーア!」

「参考にしてみてぇしな、頼むぞ」

「ぐ、グランさんまで」

彼女は観念したのか、ふうー、とため息をついて肩を落とす。

「面白くないからって文句言わないでね」


******


冒険者養成学校でのディティアは、リーダー的存在だった。

俺達は全員同級生だから、それを知っている。


小さな女の子なのに、彼女の強さが彼女を特別な存在にしていたのは間違いなくて。


そんなディティアは、当たり前だけど養成学校の頃はまだ2つ名を持っていなかった。

卒業と同時に、女の子同士5人でパーティーを組んだ彼女は、半年で認証カードを取得。

一躍有名人になっていく………。



大規模討伐依頼を眼にした彼女達のパーティー、…名をリンドールと言う…は、迷わずうけることにした。

まだ見ぬ強い魔物と、冒険への期待が背中を押す。

リーダーのディティアは、後衛の4人を背にして尚、強かった。


「ねぇディ-、どんな魔物だと思う?」

回復を担う、金髪のツインロールのルウがぴょんぴょんしながら話し掛けてきて、ディティアは笑った。

「説明では、大きな牛だって!」

彼女も大きくはないけど、ルウはそれよりも小さい。

ヒーラーのルウは白いフリルのローブに、真っ赤な水晶のついたロッドのマスコット的存在で、的確な判断でパーティーの安全を保っていた。


「牛かあ、今夜はステーキだ」

反応したのはディティアより背が高いショートカットの金髪の女性。

深緑の軽装に背負うのは弓で、弓使いのナレル。

全体的に細身の彼女は、鷹の目のような視力で狙った獲物の命を刈り取る事が出来る腕の良いアーチャーだ。


「あたし野菜がいいな」

ぽっちゃりした体型に黒髪のユヴァ。

しっとりしたストレートの髪は背中まである。

黒いローブは彼女がメイジであることを物語っていた。

炎の魔法を得意として、火力はパーティーで1番高い。


「野菜かー、そしたら肉と一緒に煮込んでシチューがいいわね!」

黒縁眼鏡に濃紺の足首までのローブ、青色の石のロッドのスウはルウの姉。

その背はやはり小さく、ルウと同じ金の髪は高く1本に結われていた。

氷の魔法を得意として、敵の足止めやディティアの補助的な立ち位置をとる。


…そんな5人は、養成学校のクラスが一緒になったことから仲良しになり、ルウを除く4人は成績も優秀。

ルウは真ん中くらいだったけど、それは授業をさぼっていたからだった。

つまり、パーティーの実力で言えば同級生よりは頭1つは抜きんでていたことになる。


…ちなみにディティア以外の俺達白薔薇は、半分より下ばっかりの集まりだったりする。


ファルーアはやる気なさそうなだけで実力はあったし、グランは練習用の大盾が軽すぎて何度も壊してた。

ボーザックはおもちゃを手に入れた子供みたいだったし、俺はバフを重ねられることを隠してた。

だからきっと、本当はもう少しマシだと信じたいとこなんだけどさ。


とにかく、パーティーリンドールの話を、ディティアはゆっくりと始めた。


疾風の誕生の物語。

同時に、彼女が自分でパーティーのことを詳しく語る、最初の日になった。



間に合いませんでした……


毎日更新中ですが日付が変わってしまいました…すみません。


今日は夜にも更新します。


平日は21時を目安に更新中で、

休日はまちまちです。


よろしくお願いします。

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