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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅡ
446/845

災厄の宴には。⑤

******


大規模討伐依頼。

ここ、トールシャのトレージャーハンター協会でもその呼び名なのかは知らないけど、参加するのはかなり久しぶりな気がした。


最後は災厄の黒龍アドラノードだったはずだから、半年以上前になる。


「……各地の協会支部から手配をします。トレイユ方面には百を目標とした部隊を手配し、砂漠方面には二百を」

「に、二百? そんなに?」

説明をしてくれるマルレイユに、ボーザックが目を丸くする。


確かに、飛龍タイラントの時ですら八十人だしな。

アドラノードの時はもっといたのかもしれないけど、部隊をいくつにも分けて行動したからあまり実感はない。


「ええ、あくまで目標ですけれど。また、この討伐はカサンドラ首都の中央治安部隊長……実質、自由国家カサンドラの頂点の男性と、アルヴィア帝国皇帝、ソードラ王国の国王からの依頼として行う許可を取ります。……いえ、『取れます』ね? ユーグルのウル」

慈愛に満ちた優しい笑みが、ロディウルに向けられる。


ロディウルは思い切り首を竦めると、苦虫を噛み潰したような顔をして、両手を上げた。


「……まあ、取れるやろな。俺らユーグルが動くのんやから。なんなら、さらに北のドーン王国からも取れるで」

「そういえばシエリア王子がドーン王国の王族だったわね。ドーン樹の原産国でしょう?」

ファルーアは金の髪を指ですきながらこぼす。


……ドーン樹って、聞いたことあるような気がするな。


俺は少し考えて、白髭のメイジを思い出した。


「あー、確か、龍眼の結晶の杖……それを作るときに、柄の部分の素材として名前が上がってたな」

「あら、ハルトよく覚えてたわね。そうよ、爆炎のガルフが教えてくれたわ。まあ、角が足りたからいいのだけど」

彼女は言いながら、白い杖の柄を指先でなぞる。


「その通りや。せやからかもしれんけど、あの国は魔法を使える奴らが集まってるで」

「へえ……」

感心しながら頷いて、そういえばシエリアと一緒にいるラミュースもヒーラーだったなと思い当たった。


うふふ、と笑いながらシュレイスをからかう姿が、脳裏の隅に浮かんで消えていく。


少し前に別れたばっかりだけど、早速力を借りることになるかもしれないな……。


「では、とにかく動き出します。災厄の討伐、そして、なにかを知っていると思われる『アルバス』という男の捕縛が目的です。……白薔薇の皆様にはここ、カサンドラ首都で『演説』を――」

「――待て待て待て。『演説』? なんだそりゃ」

マルレイユが流れるように紡いだ言葉に、グランの突っ込みが入ったのはそのときだ。 


俺は顔を上げて、グランとマルレイユを交互に見た。


「勿論、災厄の黒龍アドラノードを倒した冒険者としての演説ですよ」

さも当然、と言いたげなマルレイユは、それはそれは慈愛に満ちた笑顔で柔らかく言い募る。

グランは仏頂面で、顔を歪ませた。

「それ必要か?」

「ええ、とても」

「それで人が集まるのか?」

「ここは自由国家カサンドラですからね、豪傑のグラン。国民は皆、夢を追いかけているのです」

「いやいやいや、演説に関係ねぇだろ」

「ですから、夢のような物語を実現した者の話に、士気は高まるでしょう」

「聞けよ……」


肩を落としたグランは、ため息をつく。

隣で、ボーザックが苦笑しながら言った。


「マルレイユ会長って、結構強引だよね」


******


ユーグルの偵察部隊はすぐに動き出し、同時に爆風も出発するそうだ。

偵察結果はわかり次第、伝達龍によってすぐに各国へと伝達されることになっている。


俺たちは明日カサンドラで演説、そのあとは輸送龍を操るカンナと一緒に、先行してトレイユの近く……輸送龍を飼う村まで移動することになった。


その途中でソードラ王国王都を回り、そこでも部隊参加を呼び掛けなければならない。


……アルヴィア帝国には、まだ会ったことすらない皇帝と、研究都市ヤルヴィのトレージャーハンター協会支部長ストーがいるため、そこに部隊編成を依頼。

ついでに言えば、研究都市ヤルヴィに駐屯していた帝国兵の隊長アーマンや、俺たちと剣を交えた黒鎧の大男ガルニア、バフが使えるヒーラーのリューンもいる。

こちらはなんとかなるだろう。


内容をしっかり聞いた俺たちは、準備のために一度解散。

部隊の必需品はマルレイユが手配をするそうだ。

馬車もかなりの数必要になるだろう。


「商人さんが戻ってきてるから、買い物はできそうだね」

ディティアがそう言いながら、買い足すものを口にした。


館の外に出てきた俺たちは、傾いた陽をいっぱいに浴びながら、商人たちが簡易的な露店を開く場所へと向かう。


人はそれなりに多くて、瓦礫を運ぶトレージャーハンターたちや、おそらくは一般人もいるようだ。


「夜はロディウルともう少し話がしたいなー」

「爆風のガイルディアとも、ね。ハルトと違ってフェンが気を許してるようだし?」

呟いた俺に、ファルーアが笑い、フェンはふす、と鼻を鳴らした。


いつもならすぐ突っ込むんだけど……。


五人とフェンでこうして歩けることが感慨深い俺は、思わず笑ってしまうのだった。




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