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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ
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気に入りませんか。②

俺達は1度ナンデスカットに帰ることにした。


返事はいつくれるんだ?と笑うアナスタ王に、グランはギルドと繋がってるんだったらいつでもわかるだろうと一蹴。


ふて腐れた顔をして、彼女は言った。

「お前、そんな口を利いて後悔するからな?」


でも、どことなく楽しそうだった。


******


「おい、お前らはどう思う?」


ナンデスカットの俺達の部屋に集まって、グランが言った。

俺はうーん、と首を捻る。


「正直、意味わかんなかったな。…俺達を支援するように見せてたけど…魔力結晶ってさ、隣の大陸にはもっとあるはずだろ?…この大陸で買い占める意味もわからない…まさか他の大陸の分もーってことないよな?」

「そうだね。そもそも私達である理由も無いかなーって思うよ」

ディティアが同意してくれる…って、あれ?

「あれ、ティアお酒もう抜けたの?」

ボーザックが俺の気持ちを言葉にしてくれた。

「べっ、別に酔ってたわけじゃないよ!?」

「へーえ?」

「ハルト君まで!」

彼女は顔を真っ赤にして頬を膨らますと、言葉を続けた。

「と、とにかく!ナンデスカットを宣伝するなら別に私達じゃなくてもいいと思うの!だから、欲しいのは富じゃなくて私達の持ってる情報なんじゃないかなあ」


「私も同意ね。気さくな王様だけど、書簡の内容まで持ち出して…やりすぎな気がしたわ」

「俺はあの人が嘘ついてるようには見えなかったけど、まだまだ思ってることはあるんだろうなーって思うよ」

ファルーアとボーザックが話を引き継ぐ。


「ラナンクロストにはグロリアスと、姫と懇意にしてるカルアさんがいるしな。俺達以外はラナンクロストが後ろ盾になってると思っていい。何としても情報源に取り入っておきたい可能性はありそうだ」

グランも同意する。


「魔力結晶を集める意味はそれでも説明出来ないけどな…しかも俺達の物にしていいんだろ?」

俺が言うと、ファルーアがふふっと笑った。

「集めた結晶を持ち歩くのは無理だと思うから、ギルドに預けるわよね。私達が何もしなければ…最悪死ねば、それがギルドの物になるわ」

「…うえ、それはちょっと…」

「ギルドから買い取るくらいはするかもしれねぇなあ…」


俺達はうーん、と唸るしかなかった。


アナスタ王が悪い人だとは思いたくないし。

かと言って、俺達の後ろ盾になってもらうにはちょっと不安だ。


「さあて、どうするか。腹の探り合いは面倒臭ぇな」

「そうね。もういっそ、腹を割るのも手かもしれないわ」

「そうと決まれば…俺達の上に頼るとするか」


******


そんなわけで、俺達はギルドにやってきた。

個室をとって、ギルド長を呼び出す。

ナンデストの幼なじみ、カコが景気よく大きな部屋を貸してくれる。


待っていると、そこに白髪をお団子にした細身のおばあさんが入って…あれ?

「たっ、タバサさん!?」


眼鏡も赤いリボンもしてなかったけど、確かに、国境の街トラディスで俺達に作法を叩き込んだ、タバサさんだ。


思わず直立不動に構えると、彼女は優雅に微笑んだ。

「あらあら、初めましてよ。ノクティア王都ギルド長、タバナです。タバサとは双子なのよ、ふふ」


ふ、双子…!!

俺達はほっとしたやら動揺したやらで、とりあえず着席したのだった。


そして。

「なるほどねぇ、アナスタ王がそんなことを。…詳しくは知らされていないのだけど、やはり情報を傍に置いておきたいんだと思うわ」

「傍に?」

「ええ、後ろ盾になれば、貴方達の動向はそれなりに入ってくるはずよ。いざという時に、誰かに先を越されないようにしたいのね」

「やっぱりそう考えるか」

「ただ、魔力結晶ねぇ…」

タバナさんは少し考える素振りを見せる。

やっぱり、集めさせる理由が見付からないんだろう。


自分が使うわけでも無いのに。


「…牽制、かしらねぇ」

「牽制?」

「貴方達白薔薇は既にギルドでは有名よ。その人達が結晶を集めているとしたら、警戒するわ。それを指示させているのが、ノクティアだと思わせたい。けれど、本当に自分が買い占めると、反意に取られちゃうわ。だからただの牽制」

「でも、私達が死んだら3年後にはギルドの物よ?」

「そこはそれでいいのよ。ギルドは、国から独立しているわ。だからそうなった場合は、恐らく魔力結晶の分配が話し合われるんだもの」

「思惑がばれてたら、牽制にもならなくねぇか?」

「疑う人は、何でも不安がるのよ。アナスタ王には、もしかしたら誰が不安がるか、心当たりが……」


そこで、タバナさんはふと言葉をとめた。


「……そうね、ちょっと気になるわね」

「魔力結晶を集めてると知って疑う輩がいるってことか」

「ええ、それを炙り出すつもりなのかもしれない」


彼女はそのまま考え込むようにして、ぽんと膝を打った。


「よし、ギルドで集めましょう」


「は!?」

驚いたろうグランに、タバナさんは言葉を足した。

「ギルドに魔力結晶が集まることを警戒する輩を、ギルドで捉えましょう」

「そ、そんなんでいいのかなあ?」

疑問を呈するボーザックにも、タバナさんはゆるゆると答える。

「構わないわ。各国のギルド長を集めて……うふふ、忙しくなるわね」

「ええっと、じゃあ俺達はどうしたらいいのかなー?」

「普通に過ごせばいいわ。危険があったら知らせます」


何か、どんどん大事になるなあ。

俺達は、抗えない波に呑まれているのかもしれない。

そんな不安を抱く話だった。


******


次の日、いきなり城から使いが来て、俺達は連行された。

装備もそのまま、フェンもそのままに、謁見の間まで一直線。


「まさか打ち首とかないよな?」

「さあ……その時は逆鱗が助けてくれるのよね?」

「そんな無茶ぶりされてもなぁ…」


緊張のせいで口数が増える。

俺達はアナスタ王の前に半ば引き出されるようにして並んだ。


「まったく、やってくれるな」


開口一番、アナスタ王は鼻を鳴らす。

控えている2人は、今日もぴくりともしない。


「まさかいの一番にギルド長に話すなんて……いや、確かにお前達はギルドの人間だけどさあ…素直すぎないか?」

「もう話があったのか?それとも調べたのか?」

グランが聞くと、アナスタ王はため息をついた。

「ギルド長が直々に、ギルドで引き受けるって言いに来たのさ。…もう、あのばあさんは頭がよくて苦手だよ」

「それで?俺達は何で呼ばれたんだ?」


彼女は黒髪を弄りながら、ちらりとこっちを見た。


「どうせ後ろ盾になるなら、ついでに儲けようと思ったんだ。けどギルドで引き受けるって言われちまったら余には何も出来ん。……だから普通に言う」


彼女は、グランを真っ直ぐ見つめ、姿勢を正した。


「お前達を有名にする手助けがしたいのは本心だ。余を後ろ盾にしないか?グラン、なんなら2つ名も余からくれてやる」


……。


………!?


「は、はあ!?」


グランは余程驚いたのか、珍しく左足が一歩下がったほどだった。

かなり引いた反応である。

俺達も予想外だったけど、唯一ボーザックだけが笑い出す。


「あははっ何それ王様、そんなにグランが気に入ったの?……っいてっ」

ファルーアがボーザックの脛を蹴飛ばす。


アナスタ王は少し困った顔をした。

「まあ、気に入ったのはあるな。…お前達は気に入らないか?」


(これ、もうグランにお任せだよな)

(そうね、王族からの2つ名とか箔がつくわね)

(すごいですね、グランさんアナスタ王のタイプだったのかな)


ぼそぼそと小さくやり取りしてると、グランが咳払い。

うわ、めっちゃ睨まれてる。

俺は愛想笑いをしてぐっと親指を立てた。



「あ、あー…ありがてぇが、ちょっと考えたい。2つ名に関しては、出来れば大盾使いが……」

「それさ!」


え?


「大盾!思った通りの業物だな!……余は盾コレクターでな。ギルドからグランは白薔薇の大盾なるものを持ってるときいて、どうしても手助けしたくなった!」


え、そういうオチ?


俺達はどっと、肩の力が抜けるのを感じた。


「譲れとはもちろん言わない!頼られたら必ず力を貸そう。だから、せめてその盾、撫でさせな!」



馬鹿らしくなった俺達は、グランを生贄にナンデスカットに戻るのであった。


本日分の投稿です。

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