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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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名誉あるお役目なので。③

大量の魔力結晶。


遺跡調査報酬の一部として確保したそいつらを、俺達はどうするか迷っていた。

宿に持って帰ってきたのはいいけど、元々レイスの血の塊、装飾品にするのも気が引けるしなあ。

お金はパーティーで10万ジール。

グランからはお小遣いとして臨時ボーナスが支給された。


何食べようかな…。

鎧の下の服も新調したいし、双剣の手入れ道具も新しくしたいかも。


「魔力結晶はいくつかは魔法を込めておきたいわね。いざって時に投げれば使えるから」

ファルーアが手頃な大きさの結晶をテーブルで転がす。

「じゃあ2~3個あればいいか?」

「そうね。この辺のをもらっておくわ」

「ハルトは?」

「うーん、今のところバフを込めるのもあんまりなあ。必要なら全員分作るけど」

バフを込めておいても、持ってるだけじゃ何の効力も無いことはファルーアに確認済み。

壊すことで発動するらしい。

「壊すのに苦労しそうだよね!」

ボーザックが笑う。


そうなんだよなあ。

カナタさんが研究したかったのも分かる気がする。


「じゃあ残りは売るか?」

「そうですねぇ」


グランとディティアのやり取りを聞きながら、バフの本からカナタさんのメモを取り出す。

特別なバフって言ってたよな。

「…おお」

思わず、食い入るように見てしまう。


すごい!


そのバフは、負傷者に使うバフだった。

傷口の周りの細胞を活性化させて修復を速めるもので。

例えばこの前のボーザックについても、これがあればもっと早く処置が出来たはずだ。


ただ、欠点も書いてあった。


ヒーラーのかけるヒールと違い、損傷が酷い場合役に立たないだろうってこと。

細胞を活性化させるってことなので、その後は細胞が活動を抑えてしまうかもしれないこと。

つまり、その時にけがをすると致命傷にもなりやすいってことだ。


…カナタさんは、バフの創造力に長けてるんだと改めて認識した。


俺は、バッファーとして自分がどうしたいかなんて考えたこともなかったし。

けど、色々考えていかなきゃならない時期なのかも。


今は、白薔薇で有名になりたい。

ディティアに会って、有名になりたいと思ったし、皆もそう感じてたけど。

このパーティーで強くなりたい。

有名になりたい。

すごくそう思ってることに気が付いた。


疾風のディティアは笑うようになったし、打ち解けたと思う。

だけど、まだまだ彼女は高みにいるんだよな。

ルクア姫の言葉からも、それは推測出来た。


……もっと、強く。

もっと、バッファーとして必要とされる存在に。


俺は、自分の気持ちを改めて確認して、手を握った。


そのために、まずはバフを増やそう。

それから、範囲バフは必須だよな。

あとは重ねがけしても大丈夫な身体作り。


やることはまだまだある。


これから各国を巡ることになるし、きっとそれが力になる。

「……ハルト君?」

「あ、うん?何、ディティア」

「……」

ディティアは俺の顔を覗き込み、笑った。

「何だか少し大人びた?」

「はは、ちょっと大人になれたかな?」

応えると、彼女はますます破顔する。


きっかけをくれた有名な双剣使いの、屈託の無い笑顔。

これを見ることが出来る俺達は、間違いなく幸せ者なんだろう。


******


大金を持ち歩くのも重いので、俺達は初めてギルド預金なるものを利用した。

物も預けられるとわかったので、魔力結晶も預けてしまうことする。


このギルド預金は、ギルドが責任をもってお金や物を預かってくれるシステムだ。


面倒くさいのが、預けた場所以外のギルドだと引き落としに時間がかかることと、お金以外の物品になると取り寄せになるという点だ。


いくら預けてるとかいう情報はギルドで保管されるけど、その照会が大変なんだよな。


なので、必要な金額は基本的に持ち歩くほうがマシなのだ。


疾風のディティアはパーティーで管理していたギルド預金が有るという。


ちなみに、動きがないまま3年放置するとギルドに自動的に寄付されてしまうので注意が必要。

ディティアはこの際だからと白薔薇で作ったギルド預金に全額入れたらしい。


グランは金額は言わなかったけど、ちょっと引いてた。


「いつかギルドハウスでも建てるか…?」

なんて苦笑してたくらいだ。


とにかく、俺達は当面のお金や目的には困らない。

それは冒険者としては幸せで、贅沢なことだった。


「次は、まず北のノクティアから行こうと思うんだが」

グランのひと言に、反対意見は無い。

「よし。じゃあ馬車で国境まで行っちまうか」

目指すは、ラナンクロスト国の北側、山脈の向こうの国、ノクティア。



名誉あるお役目とやらを携えて、俺達白薔薇の目的地は決まった。


「さあて!今日はぱーっと贅沢するぞ!!」

「待ってました-!」

「グラン!たまにはバーじゃなくて高級なお店がいいわ」

「あっ、私もそれがいいな!」

「何だそりゃ」

「コース料理、王都には有名なシェフがいるのよ」

「ええ、俺達、そんなところに行ける服無いよ?」

「確かに」

ボーザックに納得したところで、一瞬静寂が訪れた。



たぶん、皆、気が付いたんだろうな。

もちろん俺も。



「思ったんだけど、国をまわって偉い人に会うなら正装もあったほうがいいんじゃない、かな?」



ディティアが、恐る恐るといった感じで切り出したのだった。



本日分です。

遅くなってしまいました…


平日は毎日21時を目安に更新中です!


いつもありがとうございます。

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