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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅡ

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285/847

迅雷は元気です。④

さぁて……それじゃあやってやるとしようか!


俺は腰を落とし、サンドワームに食らい付くフェンに声を掛けた。


「離れたら俺が行く!頼んだぞ!」

着地と同時にサンドワームの背後に回り込むように走りながら、フェンが「アオゥッ!」と返してくれる。


サンドワームは思い切り胴体を捻ると、フェンに向かって食い付こうとした。

フェンがそれを避け、さっと距離を取る。


砂へと頭を埋める勢いで食い付いたサンドワーム。

「はあぁっ!」

俺は間合いを詰めると、胴体へと双剣を突き立てた。


ズブシュウッ!!


……うげ、気持ち悪い……!


微妙に弾力があり、かと言って決して硬くないサンドワームの胴体に、双剣が埋まる。

それを左右に薙ぎ払い、俺は直ぐさま距離を取った。


ドロリ、と、緑色の体液が零れる。


砂に頭を突っ込んだままのサンドワームが、俺が突き刺した傷口に驚いたのかそのまま胴体を回そうとした。

それに追随し、頭がかなりの量の砂を掻き上げながら、俺の方に向き直ってくる。


バババッ!!!


その口の中、またもやブレスが瞬くのを見て、俺は避けるために足元を確かめた。

避けて、もう一度だ……!


しかし、今度は違った。


「グァォウッ!」

ブレスが放たれる前に、横から、銀色の風が突進したのである。


バチバチバチッ!!

バオォンッ!!


その反動で、サンドワームの身体が傾いで、ブレスがあらぬ方向へと吐き出された。

「よし!いいぞフェン!!」


生まれた大きな隙。


俺は一気に距離を詰め、バフをかけ直した。

「腕力アップ、腕力アップ!!……おおぉっ!!」


真っ二つにしてやる……!!


サンドワームに双剣を突き立て、そのまま。

俺は、胴体に刃を這わせるように、そのまま駆け抜けた。


******


「……どうだ?」

「……駄目。ここ、まだ汚れがある」

「うっ…………よし、これでどう?」

「よく見てハルト君」


俺とフェンがサンドワームの1体を屠った時、既に他のサンドワームは息絶えていて。

手慣れたサルーヤさん、ガルードさんはともかく、グランが俺より先だったことにはかなり驚いた。

そりゃ、ボーザックとファルーアの組み合わせには負けるだろうけどさあ。


……グランの奴、大盾でサンドワームを思い切り殴り飛ばし、失神させてしまったらしい。

やばいだろ、それ、人間だったらどうなってたんだよ……。


とりあえず、目的の牙の内、使えそうな物を剥ぎ取り、少し進んだところで今日は休むことになった。


今はサンドワームの体液で汚れた双剣を磨いているところだ。

もちろん、疾風のディティアが付きっきりで見てくれるという特別待遇なんだけど……。


「…………これで、どうだ!」

「うん、今の場所は良さそう。はい、次はここ見てみて」

「うわ……磨いたつもりなんだけどなぁ……」


彼女の指導は相変わらず容赦が無い。

こと双剣となれば、ディティアの情熱はもう本当にやばいのだ。


「汚れ1つでも、滑りが悪かったりするからね!特にあんな……どろーっとしたやつとか……固まったら大変なんだから!」

一瞬だけ身震いして、彼女は俺の双剣へと視線を戻す。


日は既に沈み、焚き火に照らされて、ディティアの頬がオレンジ色に染まっていた。


「1回中断よ、ティア。ご飯にしちゃいましょう?」

そこに、ファルーアがお椀を2つ、持ってきてくれる。

焚き火はもう一つあって、そっちでサルーヤさん達が料理を作ってくれていたのだ。


「あ、ファルーア」

ディティアはもう少しだけ……とでも言いたげに視線を彷徨わせた。

それを見て、ファルーアがくすりと笑う。

「剣は逃げないわよ、今はボーザックが警戒してくれているし。折角サルーヤさんが作った料理が冷めちゃうわ」

「う……は、はい。……いただきます」

お椀を受け取るディティア。


ファルーアがこっちにぱちりとウインクしたのを見て、俺は、ファルーアが気遣ってくれたことに気付いた。


「ありがとな」


お椀を受け取りながら、いろんな気持ちを込めたお礼を口にする。

そう。

かれこれ長いこと、俺は剣を磨いていたわけで。

じつは右手が結構痛いくらいなんだよな……。


これでも前よりは早く磨けるようになったんだけどさ。


******


結局、オアシスの北側には流砂は無く、10日程でダルマニに辿り着くことが出来た。


港街であるザングリに比べたら、本当に小さな村。

ただし、こっちには井戸があるらしく、足元も砂ではなくて乾いた粘土のようだ。

背の高い木はここにも生えていたけど、ザングリと違ってちゃんと葉を茂らせた背の低い木も生えている。


とは言え、箱型の家が幾つか並んでいるだけの殺風景な村は、アイシャでは見たことが無いものだった。


俺達は外で遊んでいた数人の子供達からきらきらした視線を浴びながら、サルーヤさん達と一緒に村へと入る。


……うん、あの視線は主にフェンへの視線だな。

俺も小さかったら、フェンが格好良く見えていたに違いない。


ぱしっ。


足を尻尾で叩かれて、俺は鼻を鳴らした。

残念だけど、可愛さの欠片もないからな、こいつ!


そうこうしていると、正面に見えていた村の中では一際大きな建物から、男が飛び出して来た。


「サルーヤ!おかえり!早速だが聞いてくれ!手紙が……おや?」

黒髪、黒眼、色白。

歳はたぶん、サルーヤさん達と同じくらいだろう。

あまり外に出たことが無さそうな線の細い男は、ボーザックくらいの背。

手には何か白い紙切れのような物が握られていて、聞こえた『手紙』という単語。


あぁ……何か嫌な予感がする……。


「……銀色の魔物と、5人の……ああ!何てことだ!素晴らしいよサルーヤ!……君達、白薔薇だろう!?」


もしかしなくてもそうだ。

この人、きっと迅雷のナーガの父親、ナーラさんだろう。



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