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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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28/847

名誉あるお役目なので。②

完遂のカルーアが救った姫と共にやってきたのがこの国。


王都ラナンクロスト、小高い山のてっぺんに君臨する美しい城が、ルクア姫の居城である。


現在の王はルクア姫の父。

彼は姫を連れ帰ったカルーアと、その途中で眠りについたミシャに感銘を受け、生涯にわたり賓客としての扱いを約束した。


ルクア姫に至っては、道中で2人と打ち解け、名前を呼ばせる間柄となったらしい。




そんなルクア姫が、何故か書状を持って俺達の前にいる。




「本来は城まで呼ばねばならなかったのですが、カルーアが一緒だと聞いたので意気揚々…いえ、仕方なく出て参りましたの」

凄く本音が洩れている。

くすりと笑ったらディティアに肘打ちされた。


…ファルーアに似てきたんじゃないかなあ。


グランが跪くべきか悩んでいるところに、座ろうとカルアさんが助け船を出してくれる。

俺達は姫が座るのを待って、席に着き直した。

「えー…ルクア様、何故、俺た…私達白薔薇に?」

グランがしどろもどろ聞く。

「ふふ、驚いたでしょう?それは、貴方の首にかかるその名誉勲章の力ですわ」

あ、ああー。

俺達はやっと合点がいって、頷いた。


そうか、これ、国からの依頼もあるかもしれないカードだったなあ。


今のところ驚かれた以外に役に立ったことは無い…気がする。


「今回の遺跡調査で、皆さんは強力なカードを手札にしましてよ。それはわかりまして?」

…レイス製造と、魔力結晶のことだ。

俺達は頷いた。


「そして、ギルドに各国で協力体制を築くよう掛け合った…ここまではいいわね?」


またも頷く。


「わたくし達は、それを呑みました。しかしながら、各国での調整はこれから。そこで、白薔薇には我が国の書簡を、各国に届けてもらいたいのです」


……。

俺達は顔を見合わせた。

各国に書簡を?


「それって、普通は国の中でそこそこの地位の奴がやるんじゃねぇのか?」

グランがこぼす。

すると、姫はふふっと笑った。

「ええ、普通はそうですわね。ただ、これはカルーアとシュヴァリエからの推薦があってのことですわ」


ぶはっ。

吹き出したのはカルアさん。


「おいルクア、あたしは…」

「あら?シュヴァリエにさり気なく進言したこと、わたくしは存じてましてよ?」

「ぐぅ」

「ふふ。それはもう、大事な親友の頼みとあれば、わたくし頑張りましたわ」

姫は口元を隠し、意味深に笑った。

カルアさんも、この姫の前だと為す術すらないみたいだ。

「名誉あるお役目、白薔薇に不利益は無いはずですわ。各国からすれば、欲しい情報を持っている皆さんを無下にすることもないでしょう。取り入ってくる輩はいると思いますが、上手く対処してくださいませ」


******


さて、ここで状況を整理しよう。

訪れる国は3国、ラナンクロスト国に隣接している国々だ。

全部駆け足で回れば半年くらいだろうか。


その間、俺達はラナンクロスト国の使者となるかというと、そうではない。

書簡を預かった、いち冒険者という扱いなんだ。

中立の立場だな。


これは、冒険者達は国に縛られないというギルドの決まりに則っている。


名誉勲章に国家間の移動制限を簡略化する効果があるのは、各国に貢献してもらうためでもあるのだ。


よく出来た制度だなぁと思う。


ちなみに、このギルドの制度を作り上げたのが、協力体制にあるラナンクロスト国に書簡を届ける3国を足した4国だった。

そのため、各国に養成学校とギルドがあり、ギルドは国から独立した存在となっている。


そこで、今回の依頼を考えると。 

各国からすれば、俺達は中立の立場となり、扱いやすい。

また、俺達は各国に名前を売るいい機会だ。


何より、カルアさんが俺達にその機会を与えてくれたと取るべきだしな。


シュヴァリエは、どうでもいい。


つまり、断る理由が無いのだった。


******


「さて、どうする?」

グランが切り揃えた顎髭をさする。

皆は思い思いのことを考えてたんだろうけど、頷き返す。


「まあ、乗らねぇ手はねぇよな!」


姫はその言葉に、うんうんと頷くと、近衛に指示して三つの書簡を出させた。

「では、書状にサインをしてもらわなければなりませんので、カルーア、ギルド長を呼んでくださる?」



王都ラナンクロストのギルド長は、まさにジェントルマン。

ギルドの制服である黒パンツと白シャツに、ネクタイとジャケット。

白髪交じりの黒髪をオールバックにして、口髭が綺麗に揃えてあった。


「お呼びですかな、ルクア様」

「ええ。例の依頼を受けていただけることになりましたわ。書状のやり取りは任せます」

ジェントルマンはぺこりとお辞儀をして、洗練された動作でペンを取り出した。

いや、洗練というか…くるくると異状な速さで回転させながらペンを出した、って感じ。

「僭越ながら、ラナンクロストギルド長、ムルジャが承りましょう」

すげーアグレッシブだった。


******


姫は満足したのか帰って行った。


預かった書簡はファルーアが保管することになった。

グランだと戦闘で潰すかもしれないし、ボーザックは無くしそうだからやだーと笑ったし、俺はそんな恐い物持ちたくないし、ディティアはにこにこと拒否したからだ。


「私が無くしたらどうするつもりなのかしら」

「そりゃもう連帯責任だよね!」

「……不屈のボーザック、それ真面目に言ってくれてるのよね?」

「あははっ、当たり前でしょファルーア!不屈とか言われると照れるなー」

「……はあー、不安になるわ。大丈夫かしら」

明らかに不安そうなファルーアに、グランが笑った。

「心配すんな!お前なら無くさないだろ!」

「それ、プレッシャーにしかならないわ」


俺達は、とりあえず今後の予定を練るために宿に戻ることにした。

カルアさんとカナタさんにお礼を告げると、2人共笑ってくれる。


ん、そういえばカナタさん、姫が居る間見事に気配が無かったな……。


「そうだハルト君、ちょっといくつか伝えておきたいんだけどいいかな?」

カナタさんに言われて、皆を振り返ると頷いてくれる。

少し待っててくれるみたいだ。


「まず、僕のバフはハルト君のバフと併せて二重までならかけられる。ハルト君が三重にしているバフに重ねようとしても、上書きして相殺して、二重になっちゃうはずだよ」

「!いつの間に…」

「気になってたでしょう?」

「はい!」

「うんうん、そう来ると思いました!では続けましょう。逆に言うと、ハルト君なら僕のバフの上に重ねられると思うんです。少し試してみる?」

「はいっ」

俺達はしばらくバフを試した。

結果、やっぱりカナタさんは二重まで、俺はその上からいくらでも…って言っても4重までしかやってないけど…重ねられる。

「やっぱりハルト君のは天性の才能です。素晴らしい」

嬉しそうなカナタさんに、俺は首を竦める。

「いや、そんなことは…」

「僕は鼻が高いです。いつか学校を開いたら、講師として招きますからね」

にっこりするカナタさん。

「範囲バフも、僕は100人が限界です。ハルト君はその倍を期待しますよ!」

そして、無理難題を突き付けてくる。

「そんなにですか…」

そもそも100人ですら未知の領域だ。

タイラント戦ですら80人だったよな…?

「ふふふ、そうと決まれば準備を進めないと。バッファーが使えるってことを世に知らしめましょう!」

俺は苦笑して、頷いた。

「頑張ります、カナタさん」



カナタさんは最後に、紙を1枚くれた。

「特別なバフを考えました。やってみてください」

俺はありがたく本に挟んで、カナタさんに別れを告げた。



本日分の投稿です。

毎日更新しています!


平日は21時頃になりそうです。


よろしくお願いします!


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いつもありがとうございます!

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