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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅡ

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258/847

砂の海は初めてです。②

奇蹟の船ジャンバックが寄港したのは、それ程大きくない港町だった。

……砂漠の街ザングリ。

それが、今回降り立った街の名前だ。


人々は布を頭に巻いて、白いローブを纏っている。


建物は砂を固めたような四角い箱型で、ライバッハの橙色の建物よりは薄く、黄色に近い色をしていた。

所々に細くて背の高い木が生えていて、その天辺にだけ5枚の大きな葉が広がっている。

下草……のような植物もあるが、大半は肉厚の葉が何枚か地面から突き立っているような形だ。


見たところトレージャーハンターらしき人はライバッハ程多くなく、ちらほら見えるかな?程度。

街自体が大きくないせいもあるのか、少し物寂しい感じがする。


「世話になったな」

グランが頭を下げるのに続いて、俺達も頭を下げる。

ジャンバックの船長と副船長のカタール、船医のアルタナ、そして船員達が、なんと総出で見送ってくれていた。


「豪傑のグラン、忘れていた!!これを持っていけ」

船長が何かを差し出して、グランが受け取る。

手のひらくらいの、蒼くて薄い板のような……あれ、これって。


「海龍の鱗だ。裏ハンター認定の証とでも思ってくれ。何処かで証はと聞かれたら見せろ。それだけでいい」


やっぱり思った通りだ。

丸い板……海龍の鱗は、日の光に虹色に光る。

グランはわかったと頷いて、鱗を大事そうに懐にしまった。


ジャンバックは荷下ろしなどでこのまま暫くは停泊するんだそうだ。


……ちくちくする視線は、恐らくこの異様な光景に対してだろう。


「気を付けていけよ!冒険話、楽しみにしているぞ!!」

船長が腕を組みながら楽しそうに頷く。

「またの機会にね~」

ボーザックが答えたら、ディティアが笑う。

「ボーザックの船酔いもその頃には克服してるかもしれないね!」

「出来たらいいけどね……」

遠くを見て呟くボーザックに、フェンが足元で「あぉん」と哀しげに鳴いた。

「ははっ、そっちも楽しみにしてるぞ!」

「では皆さん、気を付けるっす!」

「ここに居る間は何かあったら治療してやるさね!さっさと来るんだよ!」


心強い言葉に各々頷き、俺達はまずトレージャーハンター協会の支部へと向かうことにした。


******


俺達白薔薇も、ジャンバックで貰った白いローブを頭からすっぽり被っている。

日射しは容赦なく、曝された肌が常に痛いくらいだったから、だいぶありがたい装備だ。

生地は薄めで風通しよく造られているらしいけど、暑いのはやっぱり暑い。

……感じる暑さや寒さを緩和するバフを覚えるときが来たかな……。


足元は踏み固められているものの、やはり砂。

しゃりしゃり、ざりざりした感覚が足の裏から伝わってくる。


暑さのせいか、外を歩く人は多くない。

……普段はどうやって生活してるんだろう。


「あ、ありましたよ!」

物珍しそうにきょろきょろしていたディティアが、大通りから逸れた先に、短剣と宝箱が重なった看板を見付けた。

何て言うか、民家らしきものとそうかわらない建物に見える。

周りに人気は無く、ひどくひっそりとした雰囲気を醸し出す建物に、少し躊躇ったくらいだ。


「トレージャーハンターはあんまり人気ないってこと、なのかなぁ」

ボーザックが不思議そうに言うけど、実際そうだってことはわかっていた。

一攫千金だけじゃ、安定して生活するには厳しいだろうしなー。


そう思うと、冒険者は恵まれていたんだろう。


「とりあえず、行ってみればわかるわ。ねぇ、日焼けしそう……早く行きましょう?」

ファルーアに言われて、俺達はトレージャーハンター協会へと赴くのであった。


…………

……


トレージャーハンター協会、ザングリ支部。 


中には受付嬢がひとり、何やら本を読みながらぼけーっとしていた。

高く結い上げた黒髪に黒眼、白い肌。

年の頃は20前後だろうか。


左肩から布のようなものを斜めにかけていて、それはベルトに結ばれている。

……この民族衣装……何処かで……?


逡巡すると、暫くしてきりっとした釣り眼が思い浮かぶ。

同時に、ぞわりと寒気がした。


「迅雷の、ナーガ……?」

ディティアがぽかんとした顔で呟いている。

何となく撫でようとしたらファルーアの杖で払われた。


……迅雷のナーガ。

それは、俺の天敵がいるパーティー、グロリアスのメンバーのことだ。

彼女は俺の天敵であるシュヴァリエに救われたことがあるとか無いとかで、それから一緒にいるらしい。


「あれ、いらっしゃーい。気付かなかった!」

「ああ、邪魔してるぞ」

グランが返事をする。

突然こちらに気付いた女の子は、手を上げてへらっと笑う。

「ようこそ!今日は仕事?報酬??……初めての顔だねぇ」

……うん、性格はおよそナーガとは似ても似つかない、人懐っこそうな感じだった。


「仕事も欲しいが……ディティア、爆風のガイルディアのことを聞いてみるか?」

「えっ、いいんですかグランさん!」

「ああ」

お前らもいいだろう?と言いたげな顔をされたから、笑って頷いてあげた。

ディティアはぱあっと笑顔になると、受付の女の子に詰め寄る。

「爆風のガイルディアさん、知りませんか!」

……爆風のガイルディアは砂漠を越えていったって、船長が教えてくれたけど……上手くいけば何処へ行ったかわかるかもしれない。


ところが。

受付の女の子が何かを言おうとすると、突然、後ろから野太い声がした。


「臭えな!」


……女性陣が素晴らしい速さで服の臭いを確かめたのを、俺は見逃さなかった。



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