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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅡ

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237/847

裏家業は大変です。②

「……僕達は、探索専門じゃなく、本当は戦闘専門のトレージャーハンターなんだ。

港町ライバッハのトレージャーハンター協会で、仕事の斡旋をしながら……時には一緒に同行する役だね。


そんで、協会支部では、基本的にはアイシャから来た冒険者の担当になる。

僕達が冒険者とギルドについて、結構詳しいからなんだ。


冒険者は、白薔薇みたいに樹海を何も知らない奴等が多すぎるから、僕達みたいな樹海のエキスパートが付いてってあげるわけ。


……で、今回はアイシャにいる僕等の支援者から、白薔薇のことを頼まれた。

この人が……まあギルドについて詳しいわけで、自然と僕達の冒険者の知識も増えたわけだけど……今は後回しね。


実力を試し、白薔薇を仲間として引き込むこと。

これが、僕達2人に与えられた本当の仕事ってわけ。


仲間ってのは、トレージャーハンターってことじゃないよ?

表向きはトレージャーハンターなんだけど、そうじゃない裏の仕事があるんだ。


で、僕達は、バッファーである逆鱗さんを引き離すことにした。

バフってのをよく識らなかったから、1番念入りに確認する必要があったんだ。


僕はヤチに魔力結晶を持たせた。


特殊な器具で魔力を放出させることで魔物をおびき寄せることが出来るんだ。


……そんなわけで」


ナチが立ち上がると、ヤチも立ち上がる。

火に掛けた鍋からは、良い香りがし始めていた。


話の間に雨は止んだようで、辺りは静かになり、すっかり暗くなっている。


ナチとヤチ、2人は顔を見合わせて頷き合うと、とんでもないことを言った。



「僕達と勝負しよう、白薔薇」

「僕達と勝負してください、白薔薇」



……一瞬の静寂。

パチッと薪が爆ぜて、影が揺らめいた。


「って、いやいやいや、おかしいだろ、何でそうなった」

グランが顎髭を擦りながら突っ込む。

うん、あの擦り方は、そろそろ手入れがしたい時のやつだ。


「貴方達の話し振りだと、今回ハルトが樹海の死者を倒したことで確認は出来たんじゃないかしら?」

「そうだねぇ。グランがハルト背負ってここに戻ってくる途中でも、怒ったティアひとりでナハトルやっつけちゃったし……俺達の方もハルト無しでも結構戦えるんだよー?……あーあ、俺も戦いたかったなぁ」

「ちょっ、ちょっとボーザック!そんな、怒ってたんじゃなくてね?……わ、私はただ、早くここに戻りたくて……」

「いや待て!俺無しでも戦えるって、バッファーの威厳が無くなるようなこと言うなよなボーザック!?」


ファルーア、ボーザック、ディティアの話から、俺が思わず文句を言って収拾がつかなくなった。

グランが大きく肩を竦め、双子を見る。


しかし、ナチとヤチはナイフを抜き放つと、一切を無視。

しかも、予想外なことを言ってきた。


「勝負は2対2!僕達と、逆鱗さん!それから……光炎のファルーアさん!それですっきり終わらせる!参ったと言わせた方が勝ち、致命傷はヒーラーがいないから気を付けてよね!」


瞬間。


「はあ?…………ハルト」

氷のような冷えた声に、思わず背筋を伸ばして、俺は。

「だっ、ふ、不可抗力だって!俺のせいじゃないぞ!?」

ファルーアに首を振る。


やばい、ファルーアの逆鱗に触れたけど!?

双子は一瞬で冷えた空気に、ちょっと後退った。


「な、ナチ……な、何か……」

「ぼ、僕を売るなよヤチ!……や、やるぞ」


ファルーアは、カツン、と龍眼の結晶の杖を鳴らして、ゆらりと立ち上がった。


「私達が勝ったら、貴方達は何を差し出すのかしら」

「じょ、情報を……あ、あげます、僕達の知ること……そ、そのかわり、僕達が勝ったら、皆さんには、僕達を手伝ってもらいたい……です」

ヤチがそろそろっと答える。


「あんた達が勝っても、その条件は呑まないわ。勝手に吹っかけておいておこがましい」

「ちょ、ええっ」

しかし、ファルーアはばっさりだった。


おいおいおい。

俺は背筋がゾクゾクするのを感じた。


「ハルト、反応速度だけ3重」

「えっ、あ、はい、反応速度アップ!反応速度アップ!反応速度アップ!!」

「私を死ぬ気で守りなさい」

「うぐ、そ、速度アップ、速度アップ、反応速度アップ!!」


五感アップを双子にかけようか迷ったけど、ファルーアの魔法が炸裂するかもと思うと気が引けて、やめてやることにする。


「ったく、怪我に気を付けろよー」

グランに合わせて、皆は壁側に避けてくれた。

スープはボーザックの手でちゃんと避難されている。


それを見届けて、双子がゆっくりと腰を落とした。

俺も、双剣を構える。


「……行くよ!!」

ナチが飛び出す。


「……っは!」

ギンッ、ギィンッ!!


刃の短いナイフは小回りが利く。

弾いてもすぐに繰り出される刃に、俺は蹴りを繰り出した。


さっと下がるナチのすぐ後ろから、すかさずヤチが飛び込んでくる……が!


ボボンッ!!


「……っ!」

目の前で弾けた魔法に、ヤチが距離を取った。


「突きなさい」

ゴッ!!


その足元から、今度は石の柱が突き出してきて、ヤチはさらに飛び跳ねる。

ナイス、ファルーア!


「ハアッ!!」

余所見をしていた俺に、ナチが再び肉迫し、俺はナイフを避けて双剣を振る……と見せ掛け、また蹴りを繰り出した。


反応速度アップを掛けてなかったら対応出来そうにない。

こいつら、強い。


「もらった!!」

瞬間。

ナチが俺の蹴りをかいくぐり、ファルーアへ迫る。


「しまっ…」

狙いはそっちか……!

俺はナチを追うように踵を返す。

間に合うか……!?



「……ふっ」

ガイインッ!!



お、おお!?


俺は眼を見張った。

ファルーアの杖が、ナチのナイフを受け止めたのである。



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