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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅡ

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229/847

まずは情報です。④

肉汁あふれる柔らかそうなステーキ。

軽く焼き上げた表面にそっとナイフを入れれば、レアな桃色がのぞいた。

ソースは煮込まれた果実酒のソースで、肉汁と絡み合って絶妙な味を演出する。


飛龍タイラントのステーキを思い起こす程に、そのステーキは旨かった。


トールシャの玄関港ライバッハ。

フェンの鼻に頼った俺達は、魚介だけでなく最高級の肉も味わうことが出来る、素晴らしい場所だという情報を得たのだった。


******


……翌日。


俺達は朝食後、支部で双子と待ち合わせていた。

「悪いな、今日はよろしく頼む」

グランが頭を下げて、俺達もそれに倣う。

「とんでもない、こちらこそよろしくお願いします」

「お願いします」

ありがたいことに双子は緑と赤の服で色分けしてくれていて、赤い方の服がどうやらナチのようだ。


それから、ライバッハのトレージャーハンターは必ず訪れるという店に案内してもらう。


「あそこです、正面の建物」

「うわ、でっか」


赤服のナチが指差した方向、歩く人々のその向こうに、大きな建物があった。

ボーザックが驚いた顔をして、思わず声を洩らす。


「すごい、あれがお店なんですか?」

ディティアが聞くと、緑の服のヤチが頷いた。

「正確には、店の、集合体です」

「へえ!じゃああの中にたくさん店があるんだな」

俺は言いながら、左右に並ぶ露店もチェックする。


露店でも、色んな物を並べてるようだけど……。


「ここの露店でも、たまに掘り出し物はありますよ。大抵は10日くらいで店が入れ替わります」


視線に気が付いたナチが教えてくれる。


「入れ替わるってことは、ここは貸出スペースなのかしら?」

「そうです。この通り沿いの家が、自分の家の一部を期間毎に貸してるんですよ。そこに店を出すんです。なので、大抵はライバッハの商人ではなくて、他の国や地域の商人達ですね」

「他の国か……そういや、トールシャには国はいくつあるんだ?」

「……えぇと、小さいのを含めると100はあるんじゃないかな」

「ひゃっ……100!?」

「ははっ、そうですよ!……未開の地も多い大陸ですから、もっと増えるかもしれませんね」


ナチに話を振ったファルーアとグランが顔を見合わせて、言った。

「世界は広いわね……」

「世界は広いなぁ……」


……そうこうしてる内に、店は眼の前。

見上げる程の建物が、どんと構えていた。


巨大な門が開かれていて、その左右に警備をしているらしいムキムキの男が2人ずつ並んでいる。


巨大な門の上にある看板には『ハンタウル』と書かれていた。


「ウルって、確か、王様とかって意味だっけ?」

少し後ろにいたヤチに聞くと、彼は驚いた顔をした。

「え、あ、はい。……驚いた、そんなこと知ってるんですね」

「はは、まあなー。……あれ、そうするとロディウルって族長とかなのかな」

思わずぼやく。


……ロディウルは、ラナンクロストで依頼中に出会った、トールシャの人間だ。

俺達に、トレージャーハンターの『認証カード』にあたる革の栞をくれた人物であり、俺達の戦った災厄のことも詳しく知っていそうな奴である。

ゆくゆくは、ロディウルに会う必要があるわけだけど、そういえば聞いてなかったな。


「なあ、ヤチ。ユーグルのロディウルってわかる?」

「えっ?ユーグル、ですか」

「わあ、逆鱗さん物知りですね、ユーグルをご存知なんですか?」


そこに、ナチが割り込んできて……って。


「ちょ、何だよその逆鱗さんって!?辞めてもらえる?それ、別に気に入ってるわけじゃなくて……」

「あはは、それでは逆鱗さん、ご案内します!」

「待て、待てってば!聞いてるかな?おい、ナチ!!こら!!」


「わあ、ハルト君の逆鱗にがっつり触れに行く感じだねー」

「そ、そうですか」


ナチを追い掛ける俺の後ろから、ディティアとヤチの声が聞こえた。


******


さて。

結局のらりくらりと躱されて憤慨していたものの、ナチとヤチの案内は完璧だった。


「まずは、必要なのは食糧です。トールシャで主流なのは袋に入った保存食で、そのままでも食べられますし、水を入れればもっと美味しいです。皆さん調理道具は?」

「軽くて畳める鍋に皿、水筒は各々持ってる」

グランが言うと、ナチは満足そうに頷いた。


「さすがですね!たまにお鍋持ってない人もいるんですよ。僕等はトールシャでの活動には、鍋は絶対必要と思っています。煮ないと固くて食べられない魔物もいるんですよ!……ナイフはどうしてます?」

「全員がこれ持ってるよ、タイラントの鱗のナイフ」

今度はボーザックが小さなナイフを差し出す。


それは、飛龍タイラントの鱗を加工した物だった。


「……こ、これ、飛龍の、鱗なんですか……?」

「触ってみるか?ほら」

俺のをヤチに差し出すと、ヤチは珍しくきらきらした眼でうんうんと頷いて、そっとナイフを受け取った。

「すごい、切れそうだ」

「ああ、切れ味は良いかも。刃こぼれもしない気がするし」


ヤチは、周りにスペースがあるのを確認して、ナイフを振ってみせた。

「……ふっ」


「わあ、ヤチ、様になってるね。探索専門でもやっぱり鍛えるんだねー。安心した」

それを見ていたボーザックが言うと、ヤチは、はっとした顔をして俺にナイフを返し、首を竦めた。

「す、すみません、何か格好良かったので、ちょっとやってみたくて……」


「そうそう。形になってても、実際は戦える程ではないんですよねー僕達」

ナチが笑う。


「次は雨対策ですね。何かお持ちですか?」

「ポンチョなら……」

ディティアが答えると、ナチは頷いた。

「……トールシャでは雨の日に活発化する魔物も多いんです、なので戦える状態を保つものが必要ですよ」

「具体的にはどんな物があるのかしら」

ファルーアが髪をくるくるしながら言う。


「水を吸わない服ですね。その上から装備をしている人が多いです」

「ほー、そんな物があんのか!」

グランも興味津々。


俺達は、話してからすぐに服を一新することに決めた。

ちなみに、汗も吸わないから、アンダーウェアは吸水性と速乾性が高いものを選ぶらしい。


「まあ、頭は濡れますけど、ね」

ヤチが、ぽつんとこぼした。



……そんな感じで、準備はとんとん進んで。

すぐに出発出来ると判断したのか、双子は、明日の出発を打診してきたのだった。


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