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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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211/847

有名になるので。①

「あら、お帰りなさい」

部屋に入ると、ファルーアは寝たままこっちを見た。


妖艶な笑みは俺の知るファルーアそのもの。


まるで人形のように眠っていた姿が、瞬時にかき消えた気がする。

…ファルーアだ。

ファルーアが、起きた。

実感が湧き上がってくる。


「ファルーアぁ!」

感極まったのか、いの一番に飛び出したのはディティアだった。

「起きてたなら教えてよ!びっくりしたんだから!」

頭をぐりぐりとファルーアに押し付けるディティアは、小動物そのもの。

俺は何となくほっこりした気持ちになって、彼女が落ち着くのを待った。


ファルーアはくすくすと笑いながら、そんなディティアの頭をぽんぽんする。


「悪かったわね、もう大丈夫みたい」

「うん…起き上がれそう?」

「それは……怠い気はするわ。……ひと月もあったんじゃ、ちょっと筋力も落ちてそうね」

「じゃあ少しずつだね!……何からしようかな、腹筋…?」

「え、ちょっとティア。私を壊したいのかしら……?」

「えー?」


2人がそのまま会話をひたすら続けてしまいそうな感じに、一瞬不安を覚えると。


「疾風の。先に、彼女も交えて聞いてほしい話がある。微笑ましい光景だが少しいいかい?」

シュヴァリエが、涼しい顔で割って入った。

ディティアははっとすると、おずおずと振り返る。

「あ、そ、そうでした、ね。閃光のシュヴァリエ…微笑ましいかは別として、どうぞ先に」


思わずふふっと笑うと、こっちを見て頬を膨らまされた。

「いや、リスみたいで可愛いなと」

「ハルトはややこしくするから黙ってなさい」

「えぇ……」

早速ファルーアに怒られた。

思わず振り返ると、グランもボーザックもやけに嬉しそうににやにやしている。


「いいわよ、閃光のシュヴァリエ」

ファルーアが促すと、シュヴァリエはゆっくり頷いた。

「さて、では事の顛末は白薔薇のパーティーで話したいだろうから、僕は今後についてだけ失礼しよう」

シュヴァリエが、やたら爽やかな空気を撒き散らして、颯爽と話し出す。


「ひと月後、4国の王を集めてラナンクロスト城での会議が開催される。議題は勿論、災厄の黒龍アドラノードについて。また、埋もれた歴史のすり合わせを行う。……そこに、主要ギルドの長と冒険者の代表も招集する必要があるんだ。僕達グロリアスは、僕の地位があるので対象外。必然的に君達、白薔薇が選ばれる。……何せ名誉勲章持ちだ。これ以上の適役はいないだろうね」


「代表って…前も思ったけど…何するの?」

ボーザックが手を上げて聞き返す。

シュヴァリエはいい質問だね不屈の、と満足げな顔で、続けて話し出す。


……どうでもいいけどいちいち煌びやかな仕草がまざるよなこいつ。


「君達は、恐らく冒険者から見たアドラノードの脅威を語る必要がある。つまり討伐の詳細を実際に王達へ説明するのが、君達の役目だ。報酬内容については、ギルド長と王達が決めるはずだね」

「ふうむ、それだけでいいのか。案外楽だな」

グランが髭を撫でると、シュヴァリエは頷いた……だけでなく、爆弾を投下していった。


「君達白薔薇は既に名の知れたパーティーだ。これくらい、簡単に熟してくれるだろうと信じているよ?……ちなみに、その前に開かれる式典へも、君達は強制参加だ」


******


式典の詳細は語らず、シュヴァリエはではね、逆鱗の。と言っていなくなった。

ついでにナーガも付いていったし、残ったのは俺達白薔薇と、アイザック、ガルフだ。


「で?式典ってのは何なんだよ、アイザック?」


聞くと、袖無し黒ローブの男は大袈裟に肩を竦めた。

その顔は……笑っている。

「……知らないな」

「えー、嘘っぽいよアイザック」

ボーザックの援護射撃に、アイザックは益々笑った。

「はははっ、予想はつくが、言ったらつまらないからな。……おい、ファルーア。身体の状態見るからちょっとじっとしといてくれ」

「ああ……そういえば貴方がずっと看ていてくれたらしいわね。恩に着るわ」

「ん?何だ、誰から聞いた?」

「閃光のシュヴァリエよ」


「……は?シュヴァ…閃光のが、俺のこと話してたのか?」


アイザックは、眼をぱちぱちさせる。


「そうよ。そんなに意外なことなのね」

ファルーアが突くと、アイザックははっとして背筋を伸ばした。 

「あー、ごほん。……べ、別に意外ではないぞ」

「ほっほ、そんなに嬉しいのか祝福よ。こりゃあ、肴に出来そうじゃ」

「じいさんは黙ってろよ!ご、ごほん。ごほん。……ほら、とりあえず治療だ!」


俺達はアイザックの意外な一面を見て、思わず笑った。

何だかんだ、仲良いんだな、こいつらって。


******


それからひと月は、あっという間だった。


ファルーアが歩けるようにディティアのスパルタなリハビリが行われ、俺達は各々依頼を熟して身体を鍛える。


それの繰り返しだというのに。


アドラノードの情報は日に日に増えて、今や王都でも聞かない日は無かった。


腐った龍だとか、焼き払われた荒野だとか、そんな話を肴に王都はお祭り状態。

たぶん、ほかの王都、帝都でもそうだろう。


……そんな中で会議が近くなると、式典の話も一気に広まって、王都全体がそわそわし始めた。

商人達も増えて、一般国民街にまで彼方此方で露店が見られるようになり、そこでは自慢の商品達が並ぶ。


その空気に呑まれ、俺達も毎日、何て言うか緊張が高まっていく。


ファルーアもその頃にはすっかり回復して、一緒に依頼を熟していたんだ。


……そして。


式典の日が、やってきた。


ぎりぎり!本日分の投稿です。


皆様のおかげでここまで走ることが出来ました。

感謝感激雨あられ、

いつも本当にありがとうございます!

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