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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ
208/845

目覚めの時ですか。④

「肉体強化、肉体強化、肉体硬化!」


全員にバフを広げると、すぐ傍まで下りてきたフェンが「がう」と鳴いた。


「試したいのか?……速さアップ!」

ぱかりと開いた口にバフを放り込んでやると、フェンは一直線にサイクロプスへと突っ込んでいく。


……前に戦ったサイクロプスは褐色で、山岳地帯に多い種類だったな。


こいつは色も見た目も少し違う。

岩場に特化した種類なのかもしれない。


『ルォォォウ!!』


「!!」


巨軀は、思いの外速かった。

向かっていくフェンに振り下ろされる棍棒。

しかし銀色の風となったフェンは、するりとその間をかいくぐる。


ドコォッ!!


地面に打ち付けられた棍棒に、すかさず間を縫って疾風のディティアが舞った。


「やあぁーっ!」

狙うは、その大きな眼。


ガチンッ!!


「…!」

ディティアが、直ぐさま飛び退いて距離を取る。


サイクロプスの瞼に、双剣が弾かれたんだ。


「硬い…岩みたい」

俺の隣に戻ってきて、ディティアが困った顔をする。

「それならグランの出番だな」

答えると、彼女は頷いた。

「グランさん、やっちゃってください!」


「ったく、仕方ねぇ…なっ!!」

ゴッ!!


大盾がサイクロプスを殴打する。

しかし。


サイクロプスが思わぬ速さで体勢を立て直し、棍棒が唸った。


「…っ、とぉ!?」


ガコオォンッ!!


グランが大盾で受けとめると、思いも寄らぬ大きな音が響く。

そこに、後ろからボーザックが斬り掛かった。


「やあぁっ!!」


ガアァンッ!!


「ちょっ、殴ったんじゃなくて斬ったんだけどッ!?」

弾かれて飛び退くボーザックを追いかけて、サイクロプスが身を捻った。

「……しかも速ッ!!」


たん、たたんっ!!


ボーザックは迫るサイクロプスから、さらに距離を取る。


「こりゃあ、魔法がねぇと困るな…」

グランが注意深く大盾を構えながら、ぼやいたのが聞こえた。


「そうですね…やっぱりファルーアがいないと駄目ですね!」

ディティアも双剣を構え直す。


「まあ、でも…ここはごり押すしかないよねー」

ボーザックはじりじりとサイクロプスとの間合いを測りながら、それでも明るい声で言い放つ。


フェンは諦めたのか、すたりと横にやって来て残念そうにあおん、と鳴いた。


俺は苦笑して、バフを広げる。

「ったく、しょうがないなあ。そんじゃ、ごり押してもらうとしますか!腕力アップ、腕力アップ、腕力アップ!!!」


「上等ォ!!おらあ!行くぞお前ら!」

グランが再度突っ込んでいく。


「おおおぉっ!!」

『ルオォォォッ!!』


グランとサイクロプスが吼える。

その大盾と、棍棒が、ぶつかり合った。


「っらあぁっ!!」

『ルグオオッ!!』


ガゴオォアッ!!!


お互いが弾かれるところに、俺はバフを飛ばす。

「脚力アップ!脚力アップ!!」

腕力アップを書き換えると、グランは踏ん張ってとどまり、蹌踉めいたサイクロプスに向かって再度飛び掛かった。

「腕力アップ、腕力アップ!!」

更に、バフを書き換える。


「おおおおっ!!」

ゴッッッ!!

「俺も行くよ-!!」

ドガアッ!!!


ボーザックが、グランの影から同じ場所を再度斬り付けた。

ここで、初めてサイクロプスの身体に傷がつく。


「いいぞ!!」

思わず言うと、その傷目がけてディティアが舞った。


「やぁぁっ!!」

ザンッ!


『ルオオアァァッ』


どうやら、表皮を突破すれば柔らかいらしい。

「がううっ」

その傷ならばと思ったのか、フェンが飛び掛かった。


『グルルルゥ!!』

呻くサイクロプス。


「ハルト!」

「おう!……いただき!!」

その間に詰め寄っていた俺は、双剣を振りかざした。



……

…………



「ふう~」


倒れたサイクロプスが動かないのを確認して、他の敵がいないかにも警戒。

……安全と認識した俺達はお互いに顔を見合わせ、思わず笑った。

「ははっ、硬かったね」

ボーザックが最初に口にする。

「うん、あと速かったぁ」

ディティアも、口元を被って笑いながら応える。

「ほんと、ファルーア様々だなぁ」

俺がぼやくと、グランが締めた。

「そのためにもそこの臭ぇ花、持って帰るぞー」


……ああ、そうだった。


「意識したら、すごく息苦しくなってきたよ、グラン~」

「うるせぇよ、気のせいだ」

「ひとり1本でしたっけ……うう」

「あー…ファルーア~恨むぞ~」


俺達は花を1本ずつ担ぐようにして、ラナンクロスト王都へと戻ったのだった。


******


21日分の投稿です!

日付かわってしまいました…


夜にもう1話更新予定です!

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