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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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202/847

秘密を握る者。②

ぱらり、と。


封筒の中からは、紙切れが2枚と、三角の栞みたいなのが出てきた。

まずグランは栞みたいなのを手にとって、両面を眺める。

「何だこりゃ」

ぱたんとファルーアの横に置かれたそれに、俺達も眼を向ける。


……鳥?みたいな模様が刻まれた、何かの革のようだ。

黒地に、濃い緑色の模様である。


そして、手紙。


「……読むぞ。……騎士団は3組に分かれて昼夜問わず交代制。災厄の黒龍アドラノードの亡骸を監視している。……成る程、カルヴィエの騎馬隊からの手紙みてぇだな」


グランは言いながら、やきもきしている俺達を制止して、続けた。

ちなみに、アイザックもちゃっかり紛れている。



…………



我々騎士団は、新月の夜、羽音で眼を醒ました。

大量の鳥形の魔物が押し寄せており、アドラノードを啄んでいた。


担当していた騎士達が、ことごとく眠らされている。


驚くべき事に、一際巨大な怪鳥から、声がした。

正確には、その背に人が乗っているようだった。

恐らくは、男。


『こんな短期間でよう討伐したな!見直したで、咎人』


咎人。

何故そのようなことを言われるか見当も付かないが、変わった語り口調からするに、海の向こうから来たものと推測される。


『よくもまあこないな未熟な状態でやらかしたもんやな。……まあ、いいか。……褒美にいいこと教えたる。こいつ、咎人のウルは何にも識らない。要するにお馬鹿さんやな!……災厄は、あらゆる所に封印された。最近、ちょっと嫌な動きが各地で多いんや。その討伐を手伝うなら、古代の歴史と事の顛末をちょっとくらい教えたるわ。もしそれを希望するんやったら……』


…………


グランが読み上げる、この語り口調。

それから、巨大な怪鳥の背から話す、男の声。


俺は、唇を噛んだ。


知ってる。

俺達は、この人物を。


『白薔薇。彼等を、使者として指名するわ。ほなこれ、渡しといてな』


ユーグルの、ロディウル。

……あいつ、何かを知っていたんだ……。


大陸が起きると意味深に教えてくれた、緑色の髪で赤眼の男を、俺は懸命に思い出した。


「もう1枚は、くそ。バルハルーアからだ。…怪鳥は災厄から魔力結晶を根こそぎ回収した。それと、啄まれた災厄の上半身が骨になり、下半身が巨大な鎖でぐるぐると巻かれ、大地に繋ぎ止められているのが見えるようになったそうだ。それを見せたかったのだろう。………君達に任せる、健闘を祈る。だとよ」

グランは読み上げて、すっかり切り揃えられた顎髭を擦った。


「何だ?お前達、そのおかしな奴と知り合いかなんかなのか?」

アイザックがサンドイッチをもごもごしながら聞いてくる。


「知ってるっていうか……まあ、たまたまだと信じたい」

俺はそう答えて、口元に手を当てた。


うん、あれは…間違いなくたまたまだ。

俺達は、あの依頼を受けなかったかもしれないし。


怪鳥は鋭い嘴に緑の堅い羽毛を持つヤールウインド。ロディウルは、その怪鳥を使う魔物使い、ユーグルだと名乗っていた。


「つまりこの三角形は、ロディウルからの招待状ってことだね」


ボーザックは、眠るファルーアの横に置かれた革の栞をまじまじと眺める。

ディティアは、サンドイッチを飲み込んだアイザックに聞いた。

「アイザックさん、咎人とか……ウルってわかります?」

口をもごもごしていたアイザックは、んん、と唸った。

「ウル……族長とか、王様に似た意味合いにそんな単語があったな。咎人は……咎人だろう?」


まあ、そうだよな。


「何でカルヴィエ達は咎人って呼ばれたんだろう?……咎人のウル…って、そうするとドリアド?」

ボーザックの言葉に、災厄の黒龍になろうとした男を、俺は思い浮かべる。


確かにあいつ、自分のことを魔法都市国家の王族だって言ってたしな。


ふわりと外から風が流れ込むのと、ドアが開いたのはその時だった。


「昼食だよ!存分に食べな!」

真っ赤な髪と眼。

惜しげもなく晒された、鍛え上げられた腹筋。


俺達は、眼を見開いた。


「カルアさん!?」


******


「覚えてるかい?あたしの弟」

皆でサンドイッチを食べながら、急にカルアさんに言われて、一瞬思考が停止した。


そういえば、遺跡調査依頼の時に少しだけ一緒に過ごしたな。


「えっと、トロントさんですね」

ディティアが答えてくれたので、グランとボーザックと、さり気なく目配せした。


うん、あいつらも忘れてたな。


容姿は覚えてる。

カルアさんに似た赤髪赤目で、色黒。

武器は珍しいかぎ爪で、あの時は…。


「そうだ、クロクとユキもいたな」


思わず言うと、カルアさんはうんうんと頷いた。

クロクとユキはまだ駆け出し冒険者で、遺跡調査の後はトロントが面倒を見ていたはずだ。


「その3人に、あんたらが連れて来た坊や…フォルターだっけ?あいつを任せた。面倒くさいから、ルクアに言って冒険者にしてやったんだよ」

「えっ、フォルターを??」

聞き返すと、カルアさんはげんなりした顔でため息。

「全く、ここに来るまでも毎日毎日、冒険者になりたいって煩かっただろ…?実力はそれなり、生きるための知識も十分だ。養成学校に行っても時間の無駄だしね」

そういえば、確かにフォルターはいろんな人の所に行ってはそうやって語っていたなぁと思う。

それを聞いていたグランが、呆れ顔で言う。

「本当に面倒見いいな、あんた」

「うるさいよ」


とはいえ、カルアさんのお願いを簡単に聞いちゃうルクア姫もどうなんだろうな。


俺はちょっとだけ、ラナンクロストの先行きに不安を覚えるのだった。

本日分の投稿です!


す、すごーい!

ブクマ100人です!


また減るかもしれませんが、それでも嬉しくてスクリーンショットしました笑


わあ、本当に皆様のおかげだなあ。

ありがとうございます!!

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