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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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196/847

華は散るだけなので。③

「なっさけねぇなあ…」

グランがぼやく。


アイザックが頭上に投げ上げた光の球が、太陽みたいだ。

既に高くなった日と合わせてふたつあるようで、とにかく眩しかった。


しかしながら眼を閉じても瞼を透かして光は届く。


…うん、何て言うんだろ。

こう、眩しいからって顔を伏せることも出来ない。


指先ひとつ動かせないで、俺達は転がっていた。


バフ切れの身体は糸の切れた人形よろしく、突然倒れた俺達にアイザックが取り乱したほどだ。


ちなみに、最初に切れたのはグラン。

次にボーザック、それから俺とディティア。

いやぁ、かけ直せばよかったのかどうかすら、判断出来なかった。


すると、隣に転がったボーザックが、その向こう側に座っていたアイザックに話し掛けた。

「ねーアイザック-、土が温まってきて暑いんだけどー」

「知るか!……ったく、こんなところでバフ切れなんてやってくれるな」

「仕方ないだろー……俺だって万能じゃないの!」

「万能じゃないのは重々わかってる」

「えぇ……」


ちょっと酷い。


土の匂いと草の匂いが俺達を包み込み、まるで火山のようにくすぶる山脈が遠くにそびえている。


「……終わったねぇ」

ディティアがぼんやりと呟くと、グランが笑う。

「あぁ。……俺達の名前ががっつり広まるぞー」

「ファルーアにも2つ名付くよね?」

ボーザックが言うと、アイザックがおう、と答える。

「うちのじいさんが考えてたからな。炎を継ぐだろうよ」

「えっ?継ぐって何のことだ?」

俺が返すと、アイザックは笑った。

「ははっ、お前らは知らないか。彼の地龍グレイドスを屠りし伝説のパーティーは、全員『爆』の名が入ってるのは知っているな?」


あー、そういえば本で読んだ。

あの話をしたのは、ディティアの2つ名が付いた話をしてくれた時だったかな。


遠い昔のようで、俺は思わず苦笑した。


あの時は、こんなことになるなんて全く思ってなかった。

強くなりたい、有名になりたいって、ただそれだけで。


アイザックは同意と見なしたのか、話を続けた。


「爆の冒険者達は、自分の後継者に一部の名前を継ぐことにしてたらしい。爆炎なら炎、爆風なら風ってな。……疾風の、お前は風を継いだんだな」


言われて、ボーザックとは反対に転がっているディティアが、息を呑む。

「爆風の、ガイルディアさん……」

いつか必ず会いたいって、ディティア言ってたっけなぁ。


あの時の、花の咲いたような笑顔は、まだ俺達は見られていない。

……うーん、ちょっともやもやする。


「ガルフに会ったら聞いて、次は会いに行くぞディティア」

そこに、グランが声をかける。


ディティアが笑ったのがわかった。

「ほ、本当ですかグランさん!や、やったぁ……!」

「そのためには、早くファルーアに起きてもらわないとね~」

ボーザックの言葉に、アイザックが笑った。


「お前らは元気だなぁ……」

「わふっ」


既に自分で歩けるフェンが、同意するように鳴いた。


******


「白薔薇ともあろう者が、これは見物だね」

「出たな……」

思わず呟くと、颯爽と現れた白馬が俺を跨いで止まった。


俺の上で撒き散らされる爽やかな空気に、思わず眉をひそめる。

「いや、どけよ……」

「おや、これは失礼」


アイザックの光球を目印に、冒険者達が移動してきてくれた。

後方の馬車部隊も駆け付けてくれて、全ての冒険者達が合流する。


「そっちは」

「……予断を許さない者が多くいる。彼等はまだ戦っているよ、逆鱗の」


聞くと、答えが返された。

俺は眼を閉じて、反芻する。


誰もが無事ではすまないと、最初からわかっていたつもりだった。

けど、やっぱり胸の辺りがずきりと痛む。


どうか、頑張って、と。


俺は祈るしかなかった。


「さて、君達をどうしたものかね。馬車に突っ込めばいいだろうか?」

「とりあえず俺達はいい。先に怪我した奴等を回収しろ。ファルーアは……頼む」

グランが転がったまま答えると、シュヴァリエは「心得た」とだけ言って、ファルーアを抱き上げた。


うん、俺達、すごく格好悪い。

何となく、遠巻きにひそひそされているような気さえした。


「祝福の。馬車はどれだい」

「お、おう。……あの、白いやつに……」

「わかった」


すたすたと歩き去るシュヴァリエを見送って、アイザックは呟いた。

「驚いたな……あいつが自分から抱えるなんて見たことないぞ」


その近くに、いつの間にか黒いオーラを放つ迅雷のナーガがいたので、俺はそっと眼を逸らした。




やがて。




「うっわ、なっさけない」

「バフ切れですかハルト君?」


カルアさんと、カナタさんがやってきた。

ふたりは無事だったのかと思いきや、カルアさんの左腕には包帯が巻かれている。


「カルアさんこそ、怪我してるじゃんー」

ボーザックが言うと、カルアさんは左腕を掲げてにやりとした。

「あたしのは、カナタを守ったやつだから」

「いやあ、面目ないー」

ふたりはそのまま少し俺達を見回して、言った。

「ファルーアは…やっぱり倒れたのかい」

「ああ。かなり酷使しちまった」

グランの声は重い。

けれど、カルアさんはからからと笑い返した。

「あんたらがそんなじゃ、ファルーアが嫌がるだろ?自慢してやりなよ」

「……そ、そりゃあ勿論だが」

「今は耐え時ですね。……その間に、しっかりと休息するんですよ」

グランに、カナタさんが笑いかける。


そこで俺はふと思い出して、カナタさんに聞いた。

「そうだ、カナタさん。魔物にバフしたこと、ありますか?」 


カナタさんはぱっと笑顔になって、きらきらと眼を輝かせる。


「実際は無いのですが、是非試してみたいと思ってました!まさか、ハルト君!」

「はい、フェンにバフを……確かに、付加出来たと思います」


カナタさんは言葉通り跳び上がって、喜んだ。


「それは!是非聞かせて……いや、先に僕の予想を話しましょう!」


「あーぁ、スイッチ入れちまって……。退屈だろ?あたし達は何か別の話でもしようか」

カルアさんが頭をかきながら、苦笑した。



本日分の投稿です。

基本的に毎日更新してます!


とりあえず当面はブクマ100人を目標にすることにしました。


がんばるぞー!


皆様のおかげで楽しくしています。

いつもありがとうございます!

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