表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/847

炎の華なので。⑧

******


「……やれるわ」


唐突に、ファルーアが言った。

グランが頷いて、魔力結晶を取り出す。


龍眼の結晶は煌々と光り、顔を出した太陽に負けていない。

一帯に渦巻く魔力が、身体にゆらゆらと纏わり付く。


凄まじい魔力が、溢れていた。

魔力感知バフをかけたら、きっと眩しくて眼を開けていられない。


「気張れよファルーア。……いくぞ!」




ぱりっ…………ゴガアァァアアンッ!!




グランが遠く、高く投げ上げた紅い石が、落下の衝撃で弾けた。


鼓膜がビリビリするほどの音。


すぐさま、メイジ部隊の上に炎の球が投げ上げられるのが確認出来た。


あれがもう一度上がる時。

それがファルーアの魔法発動の合図となる。



前衛達とメイジ部隊が撤退したら、2回目が上がる手筈なのだ。



俺達はファルーアに寄り添うようにして、辺りを警戒しながら合図を待った。



やがて。



ひゅうぅぅ―――!!



撃ち上がる炎の球が、燃え上がった。


太陽に照らされてもなお輝く炎にラムアルの髪を思い出す。

帝都で、きっとヤキモキしてるだろう。


ファルーアは龍眼の結晶にそっと手をかざし、すうっ、と息を吸った。



「……咲きなさい!!」



ファルーアの声が、響き渡る。



こおおおおぉぉぉっ……



初めて聞く音を立て、ゆっくりと。

濃いオレンジ色の炎が、全部で6枚。

黒龍を中心にして、放射線状に広がっていく。


かなりの規模で燃え上がったその炎は、疎らに生えた木々をも呑み込んでいく。


「すごい……」

思わず、声が漏れる。


こんなに離れていても、熱が伝わって来るほど。


ファルーアは眼を爛々と光らせて、手をかざしたまま、魔法を制御しているようだった。



ずおおおおぉぉぉっ…!!



異変に気付いた災厄の黒龍、アドラノードが、必死にもがいたように見える。

ゴゴゴゴ……!!

呼応した地面が、激しく揺れ始めた。


「……!」

ファルーアが蹌踉めくのを、グランがしっかりと支える。

「大丈夫だ、支えてやる。……しっかり狙え」


「……っ」

その時、ファルーアが食い縛ってこっちを見た。

俺は、その表情に、頷く。


「持久力アップ!」


既に4つを重ねていたバフを、5重に。

予想以上の消耗だったのだろう。


そして。


「炎の、華……」

ディティアが、呟く。


放射線状に広がった6枚の花びらが、ゆっくりと、中心を軸にして外側から持ち上がった。

それは、華が蕾へと戻っていくような、そんな姿に見える。


揺れは今も激しく続いていたけれど、俺達は息を呑んで見守っていた。




ごごごご……ごごっ!




「………!!来ますっ!」

「ガウガウッ!」

その時、ディティアがフェンとともに声を上げ、前方左方向を指差した。


「う、あ…」

ボーザックが呻く。

巨大な土煙が、木々を薙ぎ倒しながらこちらに向かってくる。


「まさか…あれ、尻尾!?」

大剣を構え、ボーザックが叫ぶ。


かなり、長い。


胴体より先に地上に出すことに成功したのだろう。

土煙の中、黒くて長いものがゆらりと揺れるのがわかった。


「…くそっ、ここまで来る!!…跳ぶか、受け流すか、選べお前ら!!」

「……っ」

あの尾を受け止めるのは難しいだろう。

けれど、受け流すことなら出来るかもしれない。

しかし、あの土煙を見る限り、受け流しただけじゃ巻き込まれかねない。


「跳びましょうグランさん……!」

同じ結論に達したのか、ディティアが双剣を腰に戻す。

「ファルーア、抱えられても制御出来るよね!?」

ボーザックが呼応する。

ファルーアは唇を噛み締めたまま頷いて、刺していた杖を抜き取った。


その間も、土煙を巻き上げながら黒龍の尾が迫ってくる。


「ハルト!必要な分を重ねろ!迷わずやれ!!」

グランの指示に、俺は息を思い切り吸って、ファルーア以外にバフを広げた。


「脚力アップ!脚力アップ!脚力アップ!脚力アップ!」


まだ、足りない。

そう思う。


「脚力アップ!……脚力アップ!!」


6重。

これを切らせたら、俺達はもう何も出来ないかもしれない。


ファルーア以外に投げたバフに、俺は頷いた。

あとは、跳んだ時に何とかするしかない。

「……フォローは任せて」

言うと、グランはにやりと笑った。

余裕は無い。

無いけど、無いからこそ、笑うんだ。


俺も、引き攣りそうになる頬をぐいっと引き上げた。


「大一番だぞお前ら!!やってやろうじゃねぇか!!」

「うん。……合図は任せてよ。フェン、俺に掴まってね」

「がうっ」

「…必ず、越えましょう、皆で」

「ははっ、俺達ちょー格好いいな!!」


ファルーアはそんな俺達に視線を向け、微笑んだ。

額には汗が浮かんでいたけど、それでも、ファルーアにしては優しい笑みだったと思う。


それを、グランがしっかりと抱えた。

「悪ぃなファルーア、ちと暑苦しいだろうが我慢しやがれ!」



ゴゴオオオオオォォォォッ!!



土煙が迫り来る。

尾の向こうは煙り、何も見えなくなっていた。


「構えて!!」

ボーザックの声。


俺達は腰を落とした。


「3……2……1……跳べえぇ――ッ!!!」




だんっ



全員が、踏み切る。



ズガガガガアァーーーッ!!



高く、高く、跳ね上がり…………俺達は凄まじい音と土煙に巻き込まれた。




本日分の投稿です!

今日も少し早めに。


基本的に毎日更新予定です!


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ