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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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189/847

炎の華なので。⑥

ファルーアの龍眼の結晶をはめ込んだ美しい白い杖は、ぼんやりと光り始めた。


結晶の土台に彫り込まれた見事な白薔薇が、幻想的ですらある。


薄明るい空気の中、ファルーアの魔力が練り上げられ、高まっていく。


魔法のことはさっぱりな俺でも、その空気は感じることが出来た。




ヒュウウウゥンッ



離れた場所では、メイジ部隊が何連にも連なる攻撃を、アドラノードに仕掛ける。

まだ休んでいたはずの黒龍が、ゆっくりと首をもたげ始めた。


ファルーアの魔法を、出来る限り気取られてはならない。

それが、爆炎のガルフが出した結論だった。


そのため、メイジ部隊達に休む暇は殆ど与えられないんだ。


それを補助するため、シュヴァリエ達があの黒龍に肉迫し、戦う必要があったのである。



ド、ド、ドオォーーーン!!


アドラノードの顔にあたり炸裂した魔法に、ぎらぎらとした眼がぐりんと動いた。


ずおおおおぉぉっ


両前脚を踏ん張るようにして、アドラノードが這い出てこようとする。

それに呼応して、地面がゆらゆらし始めて、激しい地震へと変わっていく。


「踏ん張れファルーア!!」

蹌踉めいた彼女を支えるように、グランが、盾で彼女を受け止める。

ファルーアは頷いて、それでも視線をアドラノードに向けていた。


「ウゥ、グルルルル」

フェンが唸る。

「来ます!!」

ディティアが反応した。


恐らく、ファルーアの魔力に釣られたのだ。

魔物達がこっちに奔ってくる。


黒い身体は…昨日戦った二足歩行のトカゲ型の魔物。


「肉体強化!反応速度アップ!あとは…ええとっ、脚力アップ!」


俺はファルーア以外にバフを重ね、双剣をきっちりと構えた。


「気ぃ抜くんじゃねえぞお前ら!!」


「おおっ!!」

「がうぅっ」


グランに呼応して、ボーザックとフェンが飛び出す。


ファルーアを見ると、グランに行けと顎で示していた。

グランはにやりとするとファルーアから離れて、盾を構えて走り出す。


「いくぞおらぁーー!!!」


魔物達は数にして十数匹。

俺は広範囲をぐるりと見回して他に敵の影が無いことを確認。


「……!」

魔法を練り固めていくファルーアが、俺にも行けと睨んでくる。

「わかってるよ!」

俺はグランみたいに笑い返して、前線に出た。


「はあぁーーあっ!」

ディティアが、いつものように風となって舞う。

ファルーアの追撃は無いが、彼女の剣は魔物達の脚を止めるには十分すぎた。


踏鞴を踏む魔物達に、ボーザックが飛び込んでいく。


「うりゃあぁーー!!」


ザザザッザンッ!


『ギャアオオォォッ』

振り抜かれた大剣に、数匹の魔物が崩れてもがく。


大振りな一撃の後を狙って飛び掛かろうとした魔物は、

「舐めんなっ!!」


ドゴオォッ!!


ボーザックの横から抜け出たグランの大盾に、ぶっ飛ばされる。


その喉元に、鮮やかに飛び上がったフェンが食らい付いた。


「次!」

「ディティア!左だ!」

「はいっ」


縦横無尽。

彼等は凄まじい速度で魔物を斬り伏せていく。


……俺はというと。


「ハルト!!」

「脚力アップ!」

「へへっ、ありがと!」


「ハルト君!」

「肉体強化っ!」

「やあぁー!」

ザンッ!



皆のバフを上書きし、重ねる。


今、彼らが何をしたいのか。

何がほしいのか。


「ハルトォ!」

「腕力アップ!!」

「おおおっ」

ドゴオォッ!


それを見極め、最大の効率が出せるようにする。


「持久力アップ!持久力アップ!持久力アップ!!威力アップ!」


振り返り、ファルーアのバフを上書きするのも忘れない。

「っく、ハルトごめん!行った!」


「任せろ!……っふ!!」

こっちに狙いを変えた魔物に一気に詰め寄る。

一瞬仰け反ったトカゲの下顎を、上に向かって突く。


俺は突きながら身を捻り、右脚でトカゲの胴体を……

「脚力アップ!」

蹴り抜いた。


ズバアァッ!!


はっきりと、切り裂いた感覚が手を伝う。


……仕留めた!

そう、確信する。


吹っ飛んだ魔物はボーザックの横を抜けて、ごろごろと転がった。


「ハルトやるぅ!」


言いながら、ボーザックは次の魔物を斬り伏せて……。


「これで最後!」

ザンッ!


ディティアが、残った1匹を屠った。


******


「爪には近寄るな!胴体を狙え!」

シュヴァリエが最前線で剣を振るう。


その姿は、誰の眼から見てもまさに閃光のようだった。


いつものようにその背を視界に捉えながら、アイザックは走る。

アドラノードは見上げても全容を視界に収めるのが難しい巨軀だ。


背後からその胴体を殴り、斬り付けて、冒険者達が奮闘する。

しかし、硬い皮膚につくのは薄い傷跡のみで、時々踏ん張るような動きを見せる黒龍に揺らされた地面に、何人もが転げ落ちる。


そこに、アドラノードを埋める岩だか土だかわからないものが崩れてくるため、気は抜けなかった。


「ヒール!おら、踏ん張れ!!」

アイザック自身も、杖を振り下ろす。




ずおおおおぉぉっ!!




「散開!!」


この、アドラノードの立てる音。

恐らく身体を揺すろうとしているその音が、地震を報せる。


何度目かで、冒険者達は散開するようになった。


しかし。


「うわぁっ!!」


逃げ遅れたひとりが、転げる。


「ちっ」


舌打ちして、アイザックは揺れの中走り寄った。

男を助け起こし、走れと怒鳴る。

自分も体勢を立て直し、すぐに走り出したのだが……。



「祝福の!!」

突然、シュヴァリエの声が響く。



はっとした。

頭上に影が落ちる。


「……っ、くそ!!」


アドラノードの、前脚。


それが、はるか上空からゆっくりと振り下ろされていた。



「おおおおおおっ!!」



アイザックは、最早逃げられない。

それならば、と、受け止める姿勢をとった。


……ただでくれてやる命はねぇ!!

撃ち返してやる!!


生き残る。

何としても。

アイザックの眼に、ぎらぎらとした生への執着が燃え上がった。


本日分の投稿です!

毎日更新予定です!


たまに遅れることもありますがっ、本当にすみません……(>_<)


災厄の黒龍アドラノード戦です。


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