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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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炎の華なので。⑤

そうやって、改めてディティアと星空を見た、その時。


「ハルトは格好良いなー」


後ろから声がして、ぎょっとして振り返った。

ボーザックがにこにこ…いや、にやにやしている。


勿論、グランとファルーアも、フェンもいた。


「な、何だよ!いたなら言えよな!」

「ふふっ」

「ふふ、じゃないってディティア…ん、あれ!?もしかして気付いてた!?」

「え?うんー」


うわあー。


何だか恥ずかしくなって、俺はかざしていた手で口元を覆った。


うわぁ…。


ディティアを褒めたことは勿論、皆のことを褒めたのを聞かれていたのは照れ臭い。


それを笑いながら、ボーザックが言った。

「ティア、俺もねー」

「うん?」

「ティアが笑うようになったの、嬉しいから。このメンバーで、もっとたくさん、楽しい思いとかしたいなって思うよ。だから、負けない」

ディティアは眼を見開いて、その後とびきりの笑顔で応えた。

「……うん、皆がいてくれたから私、今ちゃんと前向けてるんだよ!ボーザックも、ありがとう。私達は、負けない」


「……」

ボーザックが言うと、人懐っこい笑顔も相まって、素直に格好いいなと思う。


「全く、うちの男は格好付けね」

ファルーアが微笑むと、

「わふ」

「あぁ?俺は何もしてねぇぞ」

フェンが同意して、グランが一緒にするなと苦笑した。


俺達は笑って、少しの間、空を見た。

この景色を、これからも何度も眼にするために。


「よっしゃ、明日に備えて休むぞお前ら!」

『おー!』



******



明け方、日が昇り始める前の静かで洗練された空気の中。


俺達は馬や馬車で一気に災厄の黒龍アドラノードの元へ詰めた。


戦うのは、アドラノードの首が届かないぎりぎり。

同時に、木々が疎らになって見通しが良くなった場所だ。


魔法を使うのは、ファルーア。


爆炎のガルフは、今回他のメイジ達の指揮を執り、アドラノードの威嚇に回ることになっていた。


俺達白薔薇はファルーアを護る位置をとり、カナタさん、カルアさん、加えてフォルターがガルフ率いるメイジ部隊を護る。


シュヴァリエ率いるグロリアスと他の冒険者達は、ファルーアが魔法を練り上げるまでアドラノードを直に相手にするという配置。


「シュヴァリエ」

俺はアドラノードへと向かう隊に声をかけた。


先頭にいた白馬の上で、銀髪の青年が振り返る。


「やあ。閃光の、と付けてくれてもいいよ、逆鱗の。君から話し掛けてくるとは珍しいね」

こんな時ですら、爽やかな空気。


こいつ、ある意味ほんとすごいな……。

呆れつつ、俺ははいはいと流して言葉を紡いだ。


「……お前さ」

「……」

「誰も死なせないで切り抜けること、出来るだろ?」

にやりと笑みも追加してやる。


シュヴァリエは、それを聞くと、同じように笑みを浮かべて応えた。


「全く、何かと思えば。僕を激励したいのなら逆効果だよ逆鱗の」

それは、自信たっぷりで余裕ある言い方に聞こえる。


「余裕そうだな」

思わず言うと、鼻を鳴らされた。


「よく聞きたまえ。ここには己の身を守ることが出来ない者は必要無い。だから、そもそも守る必要が無いんだ。僕が遂行するのはアドラノードを撃破するための時間稼ぎだけ。……皆が死なぬように、アドラノード撃破を完遂しなければならないのは……君だろう?逆鱗の」


「……う」

そう言われると、そんな気も。


思わず顔をしかめると、アイザックが笑った。

「おい逆鱗の。丸め込まれてどうするんだよ」

「そんなこと言ったって……」

すると、後ろで聞いてたグランが助け船を出してくれた。


「おい閃光。俺達白薔薇は完璧な仕事をしてやるからハルトをそう虐めてやるな。そっちは任せたぞ」


シュヴァリエはふふっと笑いをこぼし、頷いた。


「誓おう。豪傑の。……そっちこそ、失敗するなよ、逆鱗の」

「……ふん。……肉体強化、肉体硬化、反応速度アップ」


バフをシュヴァリエ達に投げる。

シュヴァリエは面白そうに笑うと、馬を駆って、アドラノードへと向かっていった。


******


「そっちはどうだ、ファルーア」

「ええ。良さそうよ」

ファルーアはふう……とゆっくり息を吐き、杖を地面に突き刺した。


ガルフ達が配置につき、狼煙が上がれば作戦開始だ。


俺達白薔薇はファルーアの準備が整い次第、魔法を込めた魔力結晶を砕いて爆発させることで合図を送ることになっている。





ひゅおおっ




少し離れた場所で、白く発光する球が打ち上がる。

開始の合図、だった。


「ハルト」

「おう。……持久力アップ、持久力アップ、持久力アップ、威力アップ」

俺はファルーアに応えて、バフを広げた。


ファルーアが作戦の説明で話していた言葉を思い返す。


『魔力の他に体力を使うとなると、相当な負担のはずよ。だから爆炎のガルフは使えない。どれだけの負荷かなんて、わからないもの。けれど、私達白薔薇には、ハルトがいる。ハルトのバフがあれば、私は魔法に耐えられる』


ファルーアは、俺を信じてくれた。

それなら、応えるしかないよな。


俺が頷くと、ファルーアは微笑んでゆっくりと頷き返す。


『タイラントと同様、アドラノードも戴くわ。せいぜい悔しがるのね、グロリアス』




こうして。

災厄の黒龍アドラノード討伐が、開始された。



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