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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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昔話は好きですか。②

「やあやあ!遅れたわ!」

そこに、ラムアルとシャルアルがやって来た。


そういえばいなかったなー。


「皇帝は忙しいのよ!今日はこの後、避難プログラムを作るわ!ジャスティ、手伝ってね」


ラムアルは鼻息荒くまくし立て、状況は?と聞いてくる。


シャルアルが言ってたけど、実はラムアルは毎日のトレーニングを欠かさず行っているらしい。

…俺…最近あんまり出来てないからなぁ…。


ジャスティが説明を終わらせると、ラムアルは眼をぱちぱちして言った。

「それって、4国間で秘密を共有していたってこと?」

「うん、そうなると思う。この4国は、災厄とやらをやっつけた時に、秘密を共有して建国されたんじゃないかな……それが、歴史と共に埋もれたんだ」

ジャスティは、そう言って顔を歪めた。

「武勲皇帝は、その秘密を知っていたのかもしれないけど」

ラムアルはそれを聞いて笑う。

「馬鹿ねジャスティは!知ってたらダルアークに手を貸したりしないわよ」


それを聞きながら、俺は別のことを考えた。

そっか、そうするともしかしてギルドも秘密を知っていたのかも…。

黙っているオドールを見ると、眼が合った。

相変わらず骨と皮にしか見えない老人が、眼をぎらりと光らせる。


「……そうだな。ギルドは、恐らく4国間を見張り、結ぶ機関なのだろう。万が一に国を跨いで戦う戦力であり、それぞれの国を監視する存在だ」


「それは伝わっていたんですか?」

ディティアが聞くと、オドールは首を振った。


「ギルドを束ねる総本山と言われているのは、実はノクティアだ。ノクティア王都のギルド長タバナ、それから他の王都のギルド長は何か知っているかもしれん。聞く限り、剣の古代都市の成れの果てと思われるヴァイス帝国では、元々あまり情報が無かったんだろう」


「はぁー、なるほどなぁ。ってことはあれか、魔法都市の魔力がある者達ってのは、今魔法が使える奴等のことか」

「え、でも病気が流行ったんでしょう?」

グランにボーザックが言う。

すると、ファルーアが首を振った。

「あながち間違っていないかもしれないわ、ボーザック。病気が流行った結果、強力な魔法も魔力結晶の製造工程も失われたのよ。だから、古代魔法なんてのがあるのね、きっと」


はー。


何だか壮大な話になってきたぞ。


別に歴史は好きじゃないけど、何となくわくわくするような気持ちになった。


「予期せずして歴史を紐解いたかもしれないわね、私達」

「世の中の考古学者が悔しがるかもしれないね」

ファルーアに、ディティアが笑う。


とは言え、懸念はまだまだあって。


例えば、結局どうやって災厄を倒したのか?


生贄ってのは何のことなのか?


そして何より、俺達がどうやって災厄の黒龍アドラノードを倒すのか。


わからないことだらけだった。


「災厄が完全に起きる前に潰すのは変わらなそうだな。グロリアスは何か言ってきてるか?」

グランが言うと、ファルーアは伝達龍の運んできた紙をそっと撫でた。


「ギルドで冒険者を集め、大規模討伐依頼を出すそうよ。ヴァイス帝国でもすぐに冒険者を募って出発させろ、とあるわ」


******


各地で集められた冒険者達は、それはもう膨大な人数となった。


何隊にも分けて送り出される冒険者達。

いったいどこにこれだけの冒険者がいたんだろうってくらいだ。


俺達はその先陣を切る形で、山脈へと歩を進めた。

騎馬隊、馬車隊も編成され、負傷者の運搬や有事の際の逃走方法として活用される。


各隊には隊長となる人物とそのパーティーが中心として配属され、そこに他のパーティーが振り分けられた形だ。



帝都を出発した時のことを、思い返す。


〈どうしてあたしは行けないのよ!〉

〈ラムアル姉さん、どこにそんな気楽な皇帝がいるんだよ。皇帝は国をまとめ、戦況を見極める重要な指揮官だ。それくらいわかるよね?皇帝ヴァイセン?〉

〈そ、そんなことわかってるわ!でも、これは普通の事態じゃないわけで、臨機応変……〉

〈普通じゃないから尚更いないと駄目だって言ってるの!わかってないよね?普通の事態だったらどうせ行くんでしょって送り出してあげてるよ!〉

〈う、うぅ〉


すっかり立ち直ったジャスティは、優秀な参謀だった。

馬車隊の配置、パーティーの振り分け、殆どに彼の意見が少なからず反映されている。


今回は、さすがにラムアルは出られない。

そんなの、俺達ですらわかってるのにやっぱりラムアルはラムアルだ。


〈わかったわよ……〉

最終的に折れたラムアルに、ジャスティは満足そうに頷いた。



「……しっかし、恐ろしくでけぇな」

グランの声で我に返った。

前方には緩やかな登り坂が見え、木々が生えるその上から巨大な黒い頭が出ていた。


上半身の一部も見えているが、今の所動いている様子は無い。


長い首を途中までもたげている黒龍はオブジェのようだ。


「昔話でも最後はめでたしめでたし。あの首もらって、歯か爪を大剣にしてもらって。二刀流にでもなろうかなー」

ボーザックが軽口を叩く。


「大剣の二刀流とか動けんのか……?」

思わず突っ込むと、飛龍タイラントの大剣を、大剣にあるまじき速度でボーザックが振るった。


……心なしか、前より速いような。


「うーん、同じ重さならいける!」

「何か、お前速くなった?」

「え、わかる-?これでもちゃんと鍛練してるからね!」

「えっ?……え、いつ?」

「朝とか?」

「……」

俺は耳を疑った。

全然気付かなかったぞ……。


「ハルト君、鍛練なら付き合うよ-?」

「いやいやいや!」


俺は手を振って否定してから、左手で頭を抱えた。


あれ?

俺、1番何もしてない?


「ふふっ、昔話は好きだけど、肝心の今を疎かにしてはいけないわね、ハルト?」

ファルーアに言われて、俺はすみませんでした、と頭を下げるのだった。


本日分の投稿です。

毎日更新(を心がけてますがたまに遅れたり)です!


皆様いつもありがとう。


中々進まなかったのですが、そろそろ戦闘に入れそうです!


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