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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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175/847

生まれ変わるので。①

空気中に、魔力が濃くなった一塊の球のようなものが出来る。


すぐさまガルフがそこに魔力を当てて、相殺。


それを、ドリアドとガルフが凄まじい速さでやり取りしていた。


正直、俺には何やってるかわからない。

バフと魔法はそもそも別物すぎてさっぱりだ。

魔力を使うってとこだけは同じなんだけど。


「弾けなさい」

「くっ…!」


その合間を、ファルーアが青い顔のまま援護する。


ドリアドと俺達の間にいくつも浮かんでは消える魔力の塊に、近接攻撃部隊は迂闊に飛び込めない。

「もー!いらいらするわ!」

ラムアルが剣を振り回す。

「おい、お転婆姫、少し落ち着け」

「残念、もうお転婆皇帝……あいたっ、グラン、痛い!」

ボーザックが、場違いな呑気さを発揮している。


そこに、アイザックが走ってきた。

「おい、生きてるか!」

息を切らすいかつい男に、ファルーアは眉をひそめた。

「不吉なこと言わないでもらいたいわね」

「馬鹿野郎、真っ青じゃねぇか強がりやがって!ヒール!」

それを確認したディティアが俺の隣にすたりと着地して、前方を見遣る。


「これは…?」

「魔力感知、魔力感知」

言うより早い。

俺はバフを投げる。

「うわ」

ディティアが、エメラルドグリーンの眼を見開いた。

「…あの球が弾けるとファルーアみたいに?」

「たぶん」


言いながら、俺はバフをどうするか考えていた。

ガルフに威力アップをかければ、もっとやれるか?

それとも持久力アップか…。


「……ねぇ、ハルト君」

「うん?」

「結局、ドリアドを捕縛したらいいのよね?」

「そうだな。…近付けたらいいんだけど」

「……速度アップ、くれるかな?魔力感知は1個で、速度アップを2つ」

「うん?……えっと、うん。速度アップ、速度アップ」

俺は魔力感知を1個上書きして、そこに速度アップを重ねた。


「うんうん、見える。良い感じ」

「えっと、ディティア」

「はい?」

「まさか、行くの?」

「もちろん!」


うわぁ。


彼女は美しいまでに磨かれた双剣を、シャンッと鳴らした。


「では、行きます」


たんっ。


軽い足取りだった。

グランの横をすり抜けて、彼女は身をかがめて一気に走る。

気付いたドリアドが生み出す魔力の球にガルフの魔力の球がぶつかるよりもさらに早く、彼女は方向を変えてひらりと身を躱して、ドリアドへと迫っていく。


「すご……」

ボーザックがこぼす。


「抵抗は止めてください」


あっという間。


ディティアの双剣が、ドリアドの細い喉元に突き付けられる。

ここにフォルターがいたら、疾風のディティアを褒めちぎったことだろう。


「……疾風のディティアか。いや、まさかあれより速いとは」

ドリアドは、少し首を逸らすようにして、ゆっくりと両手を上げようとした。

「止まって」

「……抵抗しない合図だと思うがね」

しかしディティアはその動きすら止め、ドリアドの言葉も無視した。

「グランさん、何かで拘束を」

「あぁ。……おい閃光、これもらうぞ」

グランはファルーアのためにシュヴァリエが寄越したマントをさらに裂いて、紐を作った。


俺はドリアドを見据えながら、少し考える。

こいつ、フォルターとシャルアルをどうやって捕まえたんだ?


切っ先を喉元に感じているはずなのに、まだ余裕すら見えて、不安になる。


「グラン、こいつまだ何か隠してる……フォルターとシャルアルを檻に入れるのに、どうしたのかわからない」

俺がこっそり言うと、グランは小さく頷いた。


「昏倒させればいいわよ」

「ファルーア!もう平気なのか!?」


その時、顔色の戻ったファルーアが隣に立った。

「ええ。祝福のアイザックはさすがね」

見ると、アイザックは頭をかきながら苦笑してみせる。

「お褒めに与りどうもだよ、本音ならな?……それで?閃光の。あれがドリアドか?」

「そのようだね。この奥には巨大な黒龍がいるよ、祝福の」

「黒龍??」


会話をしつつも、とげとげしい杖をしっかりと握っているアイザック。

俺達の間にぴりっとした空気が広がっていく。


グランはドリアドに辿り着くと、その腕を紐でぐるぐると巻いて縛った。



……その時。



「私はこの世界の王になる。生まれ変わるのだ。魔法都市国家の再建は、必ず成る」

ドリアドが、突然ディティアに向かって口を開いた。


「え、何……どういう……?」

「実験は最終段階だ、見るが良い」

「……なっ!」


ディティアが、息を飲む。


ドリアドが、首…というより喉元を、身体ごと投げ出すようにして倒れ込むかのように突き出したのである。


その首筋にディティアの双剣が触れ、ぱっと血が滲む。

咄嗟に切っ先をずらしたものの、ぽたりぽたり、と血が溢れてくる。


「フフフ……ふははは!」


ドリアドは、何を思ったのかいきなり後ろへ走りだした。

呆然としたディティアの双剣が、血に濡れている。


地面にも、こぼれた血がところどころに落ちていた。




「追うぞ!」

グランの掛け声で、俺達は我に返った。

慌てて、黒龍のいる広場へ、ドリアドを追って走り出す。


胸騒ぎがした。




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