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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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力を求めるもの。⑦

黄色っぽく濁った色をした、つるりとした柱のようなものが何本も突き立っているかのように見えた。

それは天井と地面から生えていて、1本1本は俺より太くて大きい。


それらは、全て、牙だった。


その牙の持ち主は巨大な顎を地面につけて、ぴくりともしていない。


黒い身体は緑色の苔に被われていて、ここからは頭だけしか…それでも全部じゃないけど…見えなかった。



……巨大な、巨大な、龍。



飛龍タイラントより、遙かにでかい。

たぶん、身体の大半は埋まっているんだと思う。


死んでいないのは、鼻から噴き出される息が証明している。

それだけでも、突風のような勢いだ。


ずおおおお、と呼吸のたびに音がした。


「シャル!」

すっかり身を固くしていた俺達は、ラムアルが走り出して我に返った。


「……ラムアル」

シャルアルは、その龍の横にある檻に入れられていて、格子を掴み、こっちを見ていた。


そして、その隣。


「……やあお兄さん……遅かったね」

瘦せ細ってぐったりとしたフォルターが、座り込んでいた。


「フォルター!!……大丈夫か!?」

「大丈夫……ご飯が殆どもらえなくてこんな状態なだけだよ。……水、無いかな?」

俺はバックポーチの横に固定していた水筒をすぐに差し出した。

「全部やる、食べ物もあるぞ」

「……んぐ……んぐ……げほっ、がはっ」

「一気に飲んでは駄目。フォルター」

「うー、わかってる。……食べ物無かったことなんて、たくさんあったから……こんなのへっちゃらだよ」

シャルアルに応えてフォルターはゆっくりと息を吐いた。


「ありがとう。……それより、そろそろドリアドが戻ってくる」


******


檻を壊し、シャルアルとフォルターを救出した俺達は、すぐに身を隠した。

いったん広場から出て、入口とは反対に進んだ先に、小さな倉庫があったのだ。


ドリアド……ダルアークの現在のボスは、さっきの龍の頭の横にあるという小さな隙間から、奥へと入っていったらしい。


フォルター曰く、奥に何があるのかわからないが、毎日行われているそうだ。


「起きるってのは、あの龍のことのようだね」

シュヴァリエが俺に言うので、頷く。

「あんなんが動こうとしたら、地震も起きそうだし」

「魔力結晶を餌にしてるんだ。……帝都では粉にしたけど、ここじゃそのまま口の中に放り込む。ついでに、生肉もね。……そうしたら、龍が起きて地震が起きる」

フォルターはゆっくりと咀嚼しながら、乾し肉を少しずつ囓った。

与えられていた生肉ってのは、想像もしたくない。


ただ、まだ動けない状態だってことがわかったから、気持ちにはゆとりが出来ていた。


「あんなのが放たれたら……この大陸は終わり」

シャルアルが、呟くのを、ラムアルがよしよしと撫でて励ます。

「大丈夫よ、あたしがいるわ!」


うん……そういう問題か?



倉庫は俺達全員が入ると、殆ど密着するような広さ。

置かれているのは薪や備蓄の類いだった。


じめじめしてるので火がつくのかは甚だ疑問だけど、備えは必要なのかもしれない。


「ドリアドの最終的な実験ってのは、貯めてた残りの魔力結晶を喰わせるってことか」

グランはそう言って髭を擦り、でっかい丸太に座る。

「なら、運ばれる前にどうにかすれば勝ちね」

ファルーアもそう言って、グランの隣に座った。


俺はそこで、貯められた魔力結晶に魔法を込めたことに思い当たる。

「……いっそ、喰わせたら?」


「ふむ、良い意見じゃな逆鱗の」

思い掛けなくガルフが応えてくれた。


「けど、もしそのまま食べちゃって。もし起きちゃったらどうする?」

ボーザックが不安そうに言う。

「大規模討伐どころか、4国挙げての討伐になっちゃう…」

ディティアも続けて、眉をひそめた。


……確かにそうだなぁ。


「それなら、やっぱり埋めちゃう?」

ラムアルはそう言って、少し考える素振りを見せた。


「4国の王族、皇族で、龍が死ぬまで管理するのはどうかしら。おあつらえ向きに、白薔薇が書簡を持ってきたじゃない?」

「あぁ、同盟を結ぶとかって書いてあったらしいな?」

グランの相槌に、ラムアルは隠しもせずに大きく頷く。

「魔力結晶の製法の秘密。それを餌に、協力するか否か選ぶように書かれていたわ。……けど、聞いた感じだとどの国も賛成。もちろんあたしもね。……なら、この機会にこの問題も一緒に背負わせましょ」

「背負わせるって……ラムアルも背負うんだぞ?」

呆れて言うと、彼女はからからと笑った。

「そんなのニュアンスでどうとでもなるわ!」


絶対違うような気がする。


「それで?閃光のシュヴァリエ様はどうお考えなのかしら?」

ファルーアが聞くと、目を閉じて黙っていた優男はふふっと笑った。

「とりあえず阻止が前提だね。その後のことは、ここで決めるわけにはいかない。……しかし、面白い案だ、ラムアル皇帝」

「あら、婿に来ても良いわよ」

「僕にも選ぶ権利があるよ、ラムアル皇帝」

「そうね、飼い犬の躾くらいはしたらどうかと思うけどね」

ギラギラと蛇のような眼を光らせたナーガを、しかしラムアルは歯牙にもかけずにバッサリ。


シュヴァリエが苦笑とともにナーガを見ると、可哀想に、彼女はしゅんと項垂れてしまった。


「とりあえず、お前が最低なのは再確認した」

思わず言ったら、ファルーアに鼻で笑われた。

「いい勝負してるわよ、ハルト」


なんだよそれ……納得いかないんですけどー。



本日分の投稿です。

目安は21時から24時でほぼ日刊です!


毎日更新していく所存ですが!


目指せ300ポイント。

引き続きどうぞよろしくお願いします!

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