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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ
17/844

協力しませんか。④

本日分の投稿です。


毎日更新中です!


いつもありがとうございます。

崩落した場所。

日の光は大分傾いて、殆ど差し込んではいなかった。

それでも明るいから、戻ってきた時はほっとしたけど。


早めに戻ってきたから、他に誰も戻ってない。


俺は崩れた岩に腰を下ろしてため息をついた。

「はあー……ヒヤッとした」

「はははっ、あれはちょっと嫌な感じだったねぇ!」

カルアさんは豪快に笑う。

流石って言うか、全然堪えて無いんじゃないだろうか。

カナタさんも腰を下ろして、背負っていた荷物から水筒とコップを出した。

「ふうー、緊張しましたねぇ」

緊張感なんて感じない落ち着いた声。

こぽこぽと注がれた液体から、湯気が立ち上る。

「はいどうぞハルト君。カルアも、お茶にしましょう」


この夫婦、鋼の心臓なんじゃないだろうか。


俺はお茶を受け取りながら、戦慄を覚えていたのが馬鹿らしくなってきたのだった。


******


「あ、早いねーハルト君!」

暗がりからディティア達北回りのメンバーが姿を現した。


皆が来るまで、カナタさんに魔力感知のバフを教わっていた俺は、形になりつつあるそれを1度かき消した。

「おかえり」

声をかけると、ディティアは微笑み、クロクとユキがぺこりと頭を下げる。

トロントは視線を合わせずに会釈した。

……このパーティーで何か話とかできんのかな?


「トロント君、まずは挨拶からです。ふぁいと!」

謎の声援をカナタさんが送るので、俺は笑ってしまった。


そうこうしてる間に、タイミングを合わせたように東西組も帰ってきた。

明日から本腰を入れるので、今日は以前から地表にあった上の遺跡でキャンプすることが決まっている。

俺達は地上にあがると、キャンプの準備を始めた。


報告はその後だ。


******


「何か大きなものがいた、か」

祝福のアイザックは腕を組んで考える素振りを見せた。

他のメンバーは問題なく調査を済ませてたから、ちょっと…いや、大分、ほっとした気がする。

「俺と爆炎が南を調査してた時は、変な気配は無かったな。そのでっけー建物の傍で調査してたが物音ひとつ感じたことはねぇよ」

「そうすると、そいつが移動したのが最近なら、昨日か今日ってことじゃな」

爆炎のガルフが白髭を撫でる。

ん、そういえば声聞いたの久しぶりだな。

…気持ちに余裕が戻ってきた俺はあれこれと思案しながら聞いていた。

「どんなもんかわからねぇと対処出来ないしなぁ……よし、明日はそこの調査といくか」

「万が一に残しとく部隊もいるだろうよ」

アイザックが言うと、グランが話に入る。

2人と、爆炎、ファルーアがそこに加わって、作戦を練りだした。

「カルアさんは行かないのか?…ですか?」

「ははっ、ハルト、敬語めんどくさいだろ?気にしないでいいよ!」

カルアさんは豪快に笑うと、ふう、と息をついた。

「あたしは…ああいう頭を使うのが苦手なんでね」

「ああなるほど」

「おや、ああなるほどってなんだろうね」

ますます笑うカルアさんは、なんていうか健康的で綺麗だと思う。

飾らず、等身大で、かっこいい。

その隣でカナタさんがおっとり微笑んだ。

「カルアは、それでも戦闘能力と戦闘の嗅覚に優れていますから、とても優秀なんですよハルト君」

「おい、カナタもあたしを獣みたいに言うんじゃないよ…」

夫婦仲もとても良いのが凄く伝わるので、俺はきっと笑っていたと思う。


「おいハルト、当事者なんだから手伝えー」

「え、俺?」

突然グランに呼ばれ、俺は立ち上がった。

正直、俺もこういうの向いてないと思うんだけど。

「あんたは向いてるよ、よろしく頼むよー」

え。

心を読んだかのような言葉をカルアさんが投げてきたので、読心のバフとかあるんじゃないかと不安になったのだった。


結局、明日はトロントさん、クロク、ユキを除く9人で建物に向かうことが決まった。

残る3人には、日付が変わる頃になっても誰の帰還も無ければ、急ぎギルドに報告してもらうってわけ。

それだけ人数がいれば、あんな戦慄を味わうことも無いだろうし、俺にとっては安心材料だ。

皆で食事をして、その日は早々に休むことにする。

明日は日の出と共に、調査を開始だからな。


元々地表に出ていた遺跡には、調査のためにテントや簡易的な寝床も用意されていたので(グロリアスとカナタさん達で作ったらしい)、快適なキャンプだった。


お風呂は無かったけど、ファルーアが水を出してくれるので、それを使って身体を拭くくらいは出来る。

実際には水魔法を鍋にぶちかますから飛び散るんだけどな…。


******


「では、本領発揮と行きますよー」

カナタさんが魔力感知と五感アップの範囲バフを重ねる。

白薔薇のメンバーは初めてだったので大いに驚いた。

そうだろう、そうだろう?

すごいことなんだぞ!範囲バフは!

にやにやしているとファルーアが足を踏んでくる。

「あんた、にやにやしてるけど、これ出来るようになるんでしょうね?」

「いてっ、が、頑張るよ」


問題の建物の傍にくると、やっぱり魔力の流れが集まっていた。

それと、ぞわりとうぶ毛が逆立つあの感覚もある。

…今日は、アイザックの作る光の球が辺りを照らしていて、結構明るい。

敵にも見付かりやすいが、真っ暗闇で襲われるよりは大分ましだ。

「……いますね」

ディティアが建物の上の方に目をこらしている。

もちろん、見えなかったけど……ありとあらゆる窓を確認せずにはいられない。

それくらい、強烈な存在感なのだ。


「ふん、いいじゃねーか。叩き潰すぞ」

アイザックがとげとげしい杖を振る。

「いや、あんたヒーラーだろうがよ」

「おお、そうだった!じゃあ任せたぞグラン」

「はっ、言われなくても」

いつの間にか意気投合した2人が腕を突き合わせる。

どうでもいいけどいかつい…。

いかついぞ、2人とも。

俺達は崩れた箇所から建物内に踏み込んだ。


先頭をグランとカルアさん。

ボーザックがその後。

俺とディティア、カナタさんが続いて、アイザックを挟んで爆炎とファルーア。


倒れた棚から落ちたと思われる瓶が砕けて散乱している床を慎重に進む。

瓶の中身らしき草だか実だかと、書類もある。

見たことあるような、無いような文字で、俺にはさっぱりだ。

「ここは…治療所かなんかかもな」

「そうなの?」

呟いたアイザックに俺が聞き返すと、たぶん、と頷いた。

「散らばってんのは薬草の類だ。あとその辺の書類に治療法っぽい綴りがある」

「えっ、その変な文字読めるのか?」

「古代文字の一部はヒーラーの教科書にも載ってたからな」

「何に使うんだそんなの…」

「治療についての用語なんだよ」

ふうん。

「けどさー、こんなに紙とかそのままにして、ここの住人はどうしちゃったんだろうねー」

ボーザックがきょろきょろして戯けてみせる。

けど、その額に汗が滲んでいるのがわかった。

やっぱりこの存在感、感じてるんだな…。

少し進むと、廊下に出る。

入口の大きな扉がある方へと移動しながら、各部屋を確認。

机、椅子、アイザックが正しいなら、薬品類の入った棚が並ぶ。

どれも古ぼけてかなり傷んでいる。

それでも、こんなにたくさんの物や書類が残されているのは滅多に無いらしい。

「状態がいいねぇ、この建物」

「そうだねぇ、他の小さな建物は中も散らかってたけど…ここの人達は落ち着いて閉鎖したのかもねぇ」

カルアさんとカナタさんが感想を述べる。 

やがて、広間に出た。

ここが強力な罠の張られている扉の内側だろう。

正面にはカウンターがあって、左右にソファーが並べられているため、受付みたいなものだったのかな。

そして、カウンターの左右には大階段が。

……この上か。

「さあ、こっからが本番よ。気ぃ抜くんじゃないよ!」

俺達はカルアさんに頷いて、階段を上がった。


******


そいつは、階段を上がった先で、堂々と待っていた。

黒いもやを纏っていて、赤い眼が2つ光っている。

骨のような細い腕の先に鎌。

ぼろ布のようなローブが風も無いのにゆらめいている。

「リッチにしちゃあでかいねぇ」

油断なく、剣を構えるカルアさん。

リッチは、レイスの上位種にあたる。

それでも普通は俺達とそう変わらない大きさのはずだ。

レイスは元々、死んだ人に魔力が溜まって魔物化したと言われている。

しかし、目の前にいるのはその3倍はあろうかという大物。

俺達の眼には、魔力の流れがそいつに集まっていくのが見えていた。

「こりゃあ…ちと骨が折れるのう」

爆炎のガルフが唸る。

俺もディティアも双剣を構え、戦いに備えていた。

しかし、リッチらしき魔物は強烈な存在感だけで、何もしてこない。

「…襲ってはこないのか?」

グランが、慎重に間合いを探る。

「襲うつもりは……無いように見えますが」

カナタさんもゆっくりと探るように展開する。


すると、予想外のことが起きた。


『ここから去った方がいいぞ、かつての同胞よ』


しゃ、しゃべったーー!?

そいつは揺らめきながらじっとこちらを見ている。

「な、なんということでしょうか!僕は今、物凄い光景を眼にしました!いや、耳にした…?」

「いやいや、それどころじゃないよカナタ…」


『…ここは閉鎖された。私も夜は自分を保てないのでな、忠告は今しか出来ない』


「閉鎖?…ここにいた人々はどうしたのですか?」

ぽかんとする俺達の前で、ひとりカナタさんが会話に参加する。


『空を閉じ、居なくなった。半分以上はこうしてレイスになったのでな』


「レイスになった…今もたまに起こる現象ですが、それが原因で破棄されたと?」


『それが直接ではない。血水晶が原因だ』


「ち、すいしょう?」


『血の結晶のことだ。街の機能を担う紅い石』


「…まさか、魔力結晶?」


『今はそう、呼ばれているのか。なるほど、長い年月が過ぎたものだ』


カナタさんはここまで聞くと、ほおーっと相槌を打ち、ぱんと手をうった。

「いいですねえ、いいですねえ!歴史を紐解くきっかけかもしれません!レイスさん、いえ、リッチさんですか?」


にやり。


彼にしては、色々と感情の混ざる笑みだった気がする。

それでも、柔らかい雰囲気はにじみ出たのだけど。


「決めました、僕たち、協力しませんか?」


毎日更新中です。

よかったら明日もお待ちしています!


ブックマークもうれしいです。

これからもブックマークして頂けるようがんばります。

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[気になる点] パーティー連係のタイトルかと思いきや こっちが本命でしたか
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