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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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力を求めるもの。④

じっとりと、空気が湿っていく。

進むたびに、晒した皮膚に纏わり付いた。


明かりの見える場所はすぐそこ。

横穴が開いているようだ。


まずは先頭のシュヴァリエが、壁にはりついてそっと中を覗った。


「……」

俺達を制していた右手の指先が、剣を握ったまま、来い、と示す。

アイザックがさっと動いて、穴の反対側に回り込んだ。


五感アップバフは、かすかな気配を横穴のさらに奥から感じさせている。


つまり、ここは…。


「魔力結晶の保管庫のようだね」

シュヴァリエが、心持ち小声で言う。


こぼれる光はガルフの言ったとおり魔力結晶が発するぼんやりと紅い色。


俺達は警戒をしつつ、部屋に入った。


「うわ……」

ボーザックがぽかんと『見上げる』。


そうなのだ。

そこにあったのは、堆く積まれた魔力結晶の山。


「こんなにあるなんて」

ディティアも驚きの声をあげる。


大きい物、小さい物、どれだけお金を積んだんだろうか。

俺達が調査した魔法都市にあった、箱いっぱいの魔力結晶を遙かに凌ぐ量に見える。


殆どは魔力が入っていないのか、発光していない。


壁際の一部だけが、明かりの代わりにされているようだ。


「……おい、これ見ろよ」

山の向こうに回り込んでいたグランが、足元を指差す。

そこには、トロッコの線路が伸びていた。


さらに奥へと続く暗い穴が、線路を吸い込んでいる。


「これを積んで、運んでいってたのか」

アイザックも線路が続く先を見つめ、眼をこらしている。


「どうする?辿るか?」

「そうね。気配も奥からしているようだし」

聞くと、ファルーアが肩を竦めてみせる。

シュヴァリエはこんな時でも爽やかな空気を纏いながらふふっと笑った。

「爆炎の。この結晶達に、魔法を込めておこうか」

「ほっ、相変わらずとんでもないのう。途中で割れたら大変なことになるぞ?」

ガルフは楽しそうに髭を撫でる。

「そんなヘマは君たちならしないだろう。込めたとして、使わなくても済むことを祈るがね」

シュヴァリエはにこりと返した。


「ほっほ、では娘ッ子、やるぞ」

「あら、ご一緒していいのかしら?」

「うちの坊も『君たち』などと言いよったしの」

「あら、それは光栄ね。閃光のシュヴァリエ様?」

「ふ…」

わざとらしいファルーアに、シュヴァリエは目を閉じて余裕綽々に笑みをこぼす。


嫌味なやつ……。


「じゃあ遠慮無くいくわ」


メイジ2人は竜眼の結晶を光らせて、片っ端から魔力を込めていく。


「……綺麗なもんだな」

「皮肉なことにねー」

アイザックとボーザックが、眩いばかりに光り始めた結晶を前に、ぽつんと会話する。


そうだな。

綺麗だけど、これは元々は人の血。

恐ろしいことに、それを体内で結晶化させていたっていうんだから…俺の上半身くらいある結晶を宿していた人はどうやって生活していたんだろう。


想像では、手の甲とかの皮膚の内側に注入して、固まった頃に切って取り出す…ってやり方だった。


だから、このサイズだとお腹や背中……。


「終わったわ」


ファルーアの声で我に返る。

想像するのはやめておこう、と思う。


俺達は光り輝く山を横目に、さらに奥へと進んだ。




段々と、気配が濃くなってくる。




多くの人がいるような蠢いている気配なのに、何故か動きを感じない。

ラムアル達がいるとしたら、戦ってる音がしてもいい気がするんだけど…。


嫌な予感がした。


「……ハルト」

ボーザックに呼ばれて、俺は顔を上げた。

「五感アップ、三重にして」

「……わかった」

ボーザックに五感アップバフを2つ足す。

すると、明らかにボーザックが息をのんだ。


「ボーザック?」

「皆、ちょっと止まって……何か……何か変なんだけど……」


俺達はふぅー…と息を整えるボーザックを見て止まった。

フェンがその足元に寄り添う。


「動いてない気配がたくさんある……それと、その近くに、何か変な気配がする。人にしては大きいような……。……そ、それから…」

「……ハルト、俺達にもバフを」

俺はグランに頷いた。

「五感アップ、五感アップ」


むわぁっと濃くなる空気の臭い。

土と苔、それから生臭いような、不快な臭い。


暗闇でもより奥まで見えるようになった視界には、まだ先がある線路の敷かれた道がはっきりと浮かぶ。



そして。



「……!」

全員、身を硬くした。


何か、たくさんの動かない気配。

動かないけど、感じる。

生きているってことだ。


そこに、ボーザックの言う人にしては大きな気配が2つ。



あとは……。



「これ、何だ……?」

思わず、辺りを見回す。


まるで、何ていうか……俺達の足元に至るまで、一帯を呑み込んでいるような巨大な『気配』があった。


「わからない、俺達、食べられちゃってるとかないよね?」

ボーザックも、呼吸を意識しているのかゆっくりと吸ったり吐いたりしながら呟く。


「これが、起きるっていう奴なのか?」

グランが言うと、ガルフが頷いた。

「山脈が起きるとはよく言ったもんじゃ…。とりあえず、動かない気配が先陣を切った皇帝達かを確かめるのはどうじゃな?」

「そうしましょう。……ハルト君」

ディティアが俺を呼ぶ。

「あのね……準備しておいてほしいバフがあるの」



******



動かない気配達はもうすぐそこ。

俺は五感アップをひとつ残し、反応速度アップだけ全員に重ねておく。


そこには、扉があった。


重々しい金属の扉で、すき間から空気の流れ出る音が微かに聞こえる。


そして、その扉の向こうが、まさに無数の気配達が犇めいている場所。

それと、人より大きな気配を放っているのは、扉の向こう側のすぐ上に感じた。

左右にひとつずつ天井に張り付いているか、吊されているように思う。


「開けるぞ」

グラン、ボーザックが扉の左右にスタンバイして、シュヴァリエの合図を待つ。


シュヴァリエとディティアが並び、その後ろに俺とアイザック。

さらにその後ろに、ガルフとファルーア、彼等を守るためにフェン。




ゆっくりと。


ずずず、と音を立てながら、扉が開けられた。


すみませんやはり昨日は投稿できず。

早い時間ですが1話あげます!



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