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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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依頼をこなすので。③

「これは……ちょっと無いよねぇ」

ボーザックが呆然と呟いた。


「そうだねぇ…」

ディティアは言いながら、双剣を構える。


ばさり、ばさりと。


他の魔物には無い立派な冠羽を揺らしながら飛行する、巨大な怪鳥がそこにいた。

……優に5メートルくらいあるんですけど…。


「……これもヤールウインドなのか?」

聞くと、ファルーアが杖をくるりと回しながら頷いた。

「確か、雄には冠羽があるって書いてあったわね」


……そういえばさっきの鳥には無かった気がする。


「それにしてもデカすぎねぇか?」

グランも大盾を構えながら応える。

「とりあえず、ハルト君。私にも脚力アップバフをお願い」

「わかった」

バフを投げる間、雄鳥はただ俺達を見下ろしていた。


「……」

構えたまま、じりじりと時間が経つ。

しかし相手は一向に降りてこないし、攻撃的な素振りもなくて。


「魔法で撃ち落とすべきかしら…」

ファルーアが指示を仰ぐ。

グランは、唸った。

「いや、何か知らんが攻撃もしてこねぇしな…」

「フェンー何とかならないの?」

「きゅぅん……」

ボーザックが聞いたが、フェンも鼻を鳴らすだけ。


やがて。


「なあ、討伐辞めてくれんかな?」


……。

…………。


『しゃべった!?』


俺達は驚愕に身動いだ。

何というか、軽い感じで話し掛けられたような。


「見たところ強そうなパーティーやし、どうしようか迷ったんやけど」


ばさばさ。


俺達はだらだらと冷や汗をかきながら、上空を見上げた。

え?どういうこと?

こいつやばくないか??


「な、なな、何、何なのハルトぉ!」

「お、俺に聞くなよボーザック!」

「撃つ!?撃たないの!?撃つわよ!?」

「ま、待て待て!ファルーア!」


……すると。


「ちょっと、着陸するから攻撃せんでな?」


嘘だろ……。


ばさ、ばさ、ばさ。


俺達は咄嗟に、そいつを囲むように広がった。


……しかし。


「や、悪いなぁ、驚かせた!」


ひょこり、と。

羽毛の間から、人が出て来たのである。


「……!」

俺達は、絶句。

身構えたまま、そいつを見詰めていた。

フェンですら上半身を低く構えたまま動かない。


何だ?

こいつ何だ??


「あっ、ええとなぁ。話すと長いしなあ。……ほら、そこのフェンリル。そいつと、俺のこいつは同じや。仲間」


そいつは、怪鳥の羽と同じ緑色の髪。

乱雑にされた髪から、それなりに旅をしているものと思われた。

眼はルビーのような紅。

……とにかく、見たことがない容姿だ。

声音と見た目からすると男に見える。


「……魔物使いってことか?」

慎重に、グランが言葉を発する。


「おっ、それや!俺達はユーグルって呼ぶ」

「……」

「ええとな、そんでな。俺は海を越えて来たんやけど……丁度な、こいつの嫁を探しててな」


男は軽い感じで隣の怪鳥をぽんぽんした。

……意外と柔らかそうだ。


というか、こいつ、海の向こうから来たって??


「丁度いいところに巣を見付けたもんやから、ここのボスをやっつけたとこやってん」

「……ボス?」

グランが眉をひそめる。


「せや。証明するし、こっち来て。……フォウル、待っててな」

「クルルッ」


すたすたと歩き出した男は、俺とボーザックの間を通って歩いていく。

その間、怪鳥はじっと動かない。


「ハルト、ディティア……フェンも。様子見てきてくれ」

「わかった」

グランに言われて、俺は慎重に動き出した。


******


「こいつらはな、雄がボスになって、雌が広い範囲に巣を作る。いわば群れやねん。せやからそのボスはっ倒して、俺のフォウルをボスにしてな。……雌をうはうは……おっ、見えてきたで」


遺跡を挟んで向こう側。

男は前を指さした。

俺は五感アップをかけて、そっちを見る。


……?何か転がって……。


「……うわ」

思わず声がこぼれる。


ヤールウインドの雄が、横たわっている。

そして、どうやら……。


「お姉ちゃんには悪いなぁ……狩ったからには、無駄にできひんくてな」


……料理の途中だったらしい。

これから火を起こすつもりだったのか、焚き火の準備がされていた。


「とりあえず……話がしたいねん。飯でもどうや?」


******


「で、ここの雌をみんな嫁にするのか?」

焚き火を囲みながら、俺達は巣穴で卵を温めるために戻ってきた雌のヤールウインド達を遠くに見ていた。


「せや。子供産まれたら3日で飛べるようになりよるし、そしたらこっから海を渡る」


男はロディウルと名乗った。

彼等……魔物使いはユーグルと言うらしい……は、自分の魔物の子供を育て、次の世代に継がせるそうだ。

そのために、嫁探しをしていたところに、最近この大陸に渡った群れがあることを知って追い掛けてきたそうな。


「国が変われば生き方も変わるもんだねぇ」

ボーザックは感心しながら、串に刺して焼いた怪鳥の肉を頬張った。

「貴方のと同じ魔物だけど、食べることは厭わないのね」

ファルーアがふぅー、と肉を冷ましながら言うと、ロディウルは頷いた。

「そりゃな、縄張り争いやし。狩ったからには無駄にはしぃひんけど」

「……それにしても、うまいな」

グランが、頬張りながら物珍しそうにフォウルを見やる。

「たんま!その発言でフォウルを見たらあかんて!」

ロディウルは突っ込むと、にやっと笑った。


「とりあえず…このボスも狩ったことにしてかまへんから、あと1週間だけ待ってほしい」


俺達はお互いが得するだろうと、これを承諾した。


ロディウルは嬉しそうにフォウルを撫でると、ついでにフェンも撫でた。


……え、撫でさせるのか?


「あはは、ハルト君の負けだね」

「いいよ、かわりにディティアで我慢してやるから」

「ひゃあ!」

俺はディティアの頭をわしゃわしゃして、ロディウルに言った。


「海の向こうって、広いのか?」

「ん?そりゃなあ。この大陸は4国しかないやろうけど、そりゃもうたくさんの国がありよるし。……せや、もしここを出るときがきたら、隣の大陸でユーグルのロディウルを訪ねてな!この恩はちゃあんと返す」

「そっかあ」

……俺は海の向こうに思いを馳せた。


まだまだ、名を広める場所はありそうだ。


たぶん、皆もそう思っていたと思う。


本日分の投稿です。

基本的に毎日更新です!


仕事が忙しい時に投稿が間に合わなかったりしますが、どうぞお付き合いくださると嬉しいです!


閑話休題、いよいよ?ダルアーク編へと続く予定です。


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