依頼をこなすので。①
体調がほぼ戻りました。
更新ペースも出来る限り戻します!
ギルドでは、ざわざわとさざ波が立っていた。
冒険者達はカウンターにいるパーティーを盗み見ては、さらに波を立てる。
(あれが白薔薇?)
(見たことある、あれ不屈のボーザックだ)
(その隣、疾風だろう?)
(凱旋、見たよな?あれ、逆鱗だ)
ざわざわ……。
……そんな視線と囁きを背中に受けながら…。
「久しぶりだなこの感じ」
グランが、ちょっとにやつきながら髭を擦った。
今日もごつい巨躯の男の髭は、綺麗に整っている。
「ボーザックの名前も聞こえるね」
ディティアがにこにこしてるから、俺は笑った。
「いつも通り、疾風も呼ばれてるけどな」
「なんか、俺まだそわそわするよ-。ティアは慣れたもんだね」
ボーザックが、頬をかきながら照れたように視線を泳がせる。
「確かに、最初の頃よりは慣れたかもしれないなぁ」
対するディティアは、落ち着いていた。
とりあえず、伝達龍が到着するまでは、依頼をこなすことにした俺達。
今日は、まずルクア姫からの依頼の報酬を受け取るところからだ。
カウンターで少し待っていると、手の空いたギルド員がぱたぱたと走ってくる。
「お待たせしまし……って、白薔薇の皆さん!?」
女性のギルド員は、本当に、見ても分かるほどに後退った。
あれ、この人。
「よお姉ちゃん。『伝言』は今日は無さそうか?」
グランが手を上げて笑う。
そう。
王都で遺跡調査依頼を受けた時、シュヴァリエからの伝言とやらを朗読させられたあの女性だった。
「うう、その節は本当にどうも……今日は伝言は無いのですが…その、豪傑のグランさんの名誉勲章をお預かりせねばならず……」
おずおずと話す女性は、既に冷や汗をかいていて。
すんごく可哀想である。
「名誉勲章を?……そうか、2つ名…」
「え?あ、はい。……しかも、必ず1時間で加工を終わらせるように閃光のシュヴァリエ様が」
心なしか、周りのギルド員を窺う彼女。
周りも、興味津々といった様子で、ちらちら見ている。
彼女は、唇を引き結んで、ゆっくりと頷いた。
「どうしたんだ?何かえらく視線を感じるんだけど……」
思わず聞いたら、ギルド員は、ばしっと姿勢を正した。
「あっ、あ、はい!」
「?」
「豪傑のグラン様、不屈のボーザック様、そして逆鱗のハルト様……」
「なになに、俺達何かした?」
ボーザックが不安そうな声をあげる。
ギルド員は首を振って、半泣きで言葉を紡いだ。
「お付き合いされている方は、いらっしゃるのでしょうか」
……。
…………。
「はあ?」
グランが、心底呆れたような声を出す。
「も、申し訳ありません!こ、これはギルド員の女子と、冒険者の皆様……特に女子……からの正式な依頼でして」
彼女は半泣きで手を振る。
俺は呆れを通り越して、感心してしまった。
「つくづく運がないんだな」
言ってあげると、彼女はますます肩を落とした。
「何だか貧乏くじばっかりでして……はあ」
******
結局、颯爽と現れたギルド長ムルジャの「何をなさっているのですかな?」というひと言に、ギルド員も、聞き耳を立てていた冒険者達も、さあーーーっと散っていった。
残された目の前のギルド員は、可哀想に、恨めしそうだったけど。
とにかく、ムルジャの指示で個室に移動。
そこでお茶をすすっていると、グランがため息交じりにファルーアに言った。
「冒険者なんてしてたら、相手なんて……なあ?」
すると、ファルーアがしっしっと手を振る。
「ちょっと。どうして私に言うのよ?……別に見付けようと思えば見付けられるわよ?私」
「ええ-、そんなに簡単じゃないよねー。ファルーアだもん」
「あら、消し炭になりたいのかしら?ボーザック」
ボーザックは眼を見開いて首を振る。
「うぇ!?いやいやいや!褒め言葉だってば!ねえ、ハルト?」
「巻き込むなよ……」
肩を竦めると、隣にいたディティアと眼が合った。
彼女はにっこりすると、首を傾げる。
「ファルーアなら、すぐだと思うなあ?ね、ハルト君」
「いや、だから俺に振らないで……というか、ほんと…動きが小動物だよなあ」
手を伸ばし、よしよしーと愛でようとすると、ファルーアに殴られた。
ぼごっ、と音がして、背中が痛む。
「うぐっ、い、いってぇ……」
「馬鹿。……この話題でそれをやるあんたの神経、疑うわよハルト」
「あははっ、ハルトらしいねー」
「本当にね」
ディティアも笑い出す。
そこに、ムルジャが戻ってきた。
その手には……書状?
それから、見たことない速さで回されるペン。
「早速ですが、よろしいですかな?今回の報酬ですが、大半はジールとなります」
すっ……
出された書状に、皆で頭をつき合わせて視線を落とす。
いち、じゅう、ひゃく……………
「うわ!?何だよこの金額……!」
やばい。
見たことない額だった。
グランが、ごくりと息を呑む。
「ジール以外ですと、豪傑のグラン、貴方の2つ名も報酬となっております。そして僭越ながら、当ギルドでの宿屋宿泊費の免除を」
さらに言ってくるムルジャに、俺達は顔を見合わせた。
「その代わり、依頼はバシバシこなして頂きますので、よろしくお願い致しますぞ」
いつもありがとうございます。
体調崩してるのに仕事はあるしでてんやわんやでした。
毎日更新を続けますが、投稿出来ない日ってもっと簡単に記載できないのかなぁ…と考えています。
ブックマークが増えてきて、
みなさまのおかげでテンションだだあがりです!




