その名、轟かせませんか。②
「グラン!やったな!」
「おめでとうございます!グランさん!」
謁見の間を後にして、客間まで戻ってきた。
俺は思わず拳を突き出して、にやりとしたグランの拳とがつんと突き当てた。
ディティアも真似して拳を突き出したので、グランは軽く当ててからその頭をぐりぐり撫でた。
「わあ、あはは」
「素敵じゃない、豪傑のグラン。強そうだわ」
ファルーアも、嬉しそうな顔をする。
ボーザックもグランと拳を合わせて、破顔した。
「すごいよ、豪傑のグランかー!格好良いじゃん!さすが俺達のリーダー」
グランは「だろ?」と返して謁見の間も大人しくしていたフェンの前にしゃがみ込み、言った。
「フェン、お前にも何か考えてやるぞ。白薔薇の一員だからな」
「!、わふっ」
フェンは嬉しかったのか、尻尾をぶんぶんして、グランの肩に鼻を押し付けた。
グランがもふもふするのを、俺達は笑って眺める。
「王様達から名前もらうなんて、歴史的にも無いんじゃないか?」
俺が言うと、グランは頷いて立ち上がり、ファルーアに向き直った。
「ファルーア」
「あら、何かしら?」
「恩に着る。……お前の案のおかげだ」
「ふふ、畏まっちゃって。それじゃあ、たまにはお高いコース料理でも奢ってもらおうかしら?」
妖艶な笑みをこぼすファルーアに、グランは苦笑した。
「そんなんでいいのか?今なら宝石の1つや2つ買ってやる気分だぞ?」
「いらないわよ、そんな物より、この日を祝う思い出の方がうれしいと思わない?」
「わあ!ファルーア!それ素敵!グランさん、そうしましょう!」
ディティアも加わって、グランはますます苦笑した。
「そんな喜ばせて後で欲しいとか言っても、もう出さねぇからな?……よし、何処にする」
俺はわいわいと場所を決めだした皆を見ながら、そっと安堵の息をはいた。
フェンも、ボーザックの足元から身を乗り出して参加している。
このパーティーで強くなりたい。
このパーティーで……白薔薇で、有名になりたい。
それが、段々と花を咲かせて実を結んでいく。
俺も負けていられない。
けど、今は、全員がここにいることに、感謝せずにはいられなかった。
******
ランクの高い店を探し始めた頃には、夜はとっぷり暮れてしまっていた。
「結局こんなだねー俺達」
酒場の間をふらふらと歩きながら、ボーザックが笑う。
開いている店ときたら、こういう類ばかりだった。
フェンが先頭をするする歩き、俺達はその後ろを付いていく。
「ま、俺達らしくていいんじゃねぇか?」
グランは楽しそうに店を物色。
ファルーアとディティアは心底残念そうである。
「……ハルト、開いてる素敵な店を見付けるバフ」
「ええっ、無茶言うなよファルーア…それだったら鼻が利くフェンが……」
「がうっ」
「おお?」
俺とファルーアは顔を見合わせる。
フェンが裏路地へ入っていったのだ。
「フェン、何処行くの?」
ディティアが付いていく。
すると。
「おー、待ってたぞ豪傑の!」
とげとげしい杖……は、無かったけど。
祝福のアイザック、爆炎のガルフ、そして……。
「遅かったね、逆鱗の」
シュヴァリエ率いるグロリアスが、路地裏にあるひっそりとしたバーの前で、待っていた。
「えっ?どういうこと?」
ボーザックがきょろきょろする。
「どうも何も、こういうことだ。おら、ちび助、お手柄だぞー」
フェンがアイザックから肉の塊をもらっていた。
「おいおい……フェン、まさかお前」
グランが唖然としてフェンを見下ろす。
「わふっ」
フェンはどうだとばかりに、少し顎を持ち上げた。
ここまでが、グロリアスの計画に含まれていたらしい。
「一流シェフの店だ、女性陣も安心するといい」
シュヴァリエのカバーで、ファルーアとディティアがぱっと笑顔になる。
……けどなぁ…何でいるんだよお前……。
顔に出ていたのか、シュヴァリエはこっちを見て言った。
「この時間だ、食事に困ると思ってね。逆鱗の」
「はいはい」
俺は鼻を慣らして、そのバーへと踏み込むのだった。
******
……結論から言えば、そりゃあもう旨かった。
というか、食べたことのない、豪華なメニューばっかり。
お酒も、よく吟味されているのか相当いいやつがたくさん並んでいた。
バーの中は15人も入ればいっぱいになるような造りで、カウンター席とテーブル席があった。
今日はグロリアス…ひいてはシュヴァリエが貸切にしているそうで、気兼ねない。
暗めにされた灯りが心地よい空気を演出している。
「どうだ逆鱗のー。食ってるか?」
アイザックが笑うから、俺はお酒のグラスを揺らして応える。
シュヴァリエとグラン、ボーザックはテーブル席であれこれと話していて、ディティアとファルーア、爆炎のガルフはその隣で舌鼓を打っている。
フェンも一緒だ。
カウンター席に座って、アイザックが隣座れよと言うので座った。
「白薔薇に乾杯」
「……グロリアスに乾杯」
からん、と音を立てて、グラスをならす。
「……これで白薔薇も名前持ちパーティーか」
「ん?……ファルーアがガルフからもらえれば、そうなるな。っていうか、言えよな!こんなところ用意してるならさぁ」
「はははっ、そりゃあうちの大将が張り切ってたからな、言えねぇよ」
「ほんと、お前達仲良いんだな」
「まあなあ、閃光とは冒険者養成学校より前から一緒だからな」
「へぇ…シュヴァリエは確か俺達のひとつ上かそんなだったっけ」
「おう、俺達の1個下が疾風の学年だから、そうなるな」
「…グロリアスはどうやって出会ったんだ?」
俺は、少し興味が湧いて、思わず聞いていた。
少しずつ体調が回復中。
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