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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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協力しませんか。③

毎日更新中です!

読んでてくれる方々が増えてきてうれしいです。

ブックマークもありがとうございます。


よろしくお願いします。


俺達白薔薇の、ディティアを除くメンバーは初めて遺跡調査依頼を受けた。


古代都市の遺跡はこの国だけでなく、各国でいくつか見付かっている。

大きく分けると、2種類。

魔法都市と呼ばれる、魔力を利用して生活していたと思われるもの。

もうひとつは、単に古代都市と呼ばれる魔力の痕跡があまり無いものだ。

この2つは繁栄していた時期が同じ頃とされている。

でも、滅びた理由がわからず、遺跡調査の専門家達は歴史を紐解く瞬間を夢見ながら日夜調査に励んでいるそうな。


調査の順番としては、まずは今回のように地図の作成と大まかな危険の除去を冒険者が行う。


罠とか、魔物とかね。


お金持ちの調査員になると、ギルドを通して護衛を依頼し、この時点からわくわくと付いてくる。

勝手にふらっと物に触れたりするので、物凄く危ないんだよとディティアが教えてくれた。

ギルドでは依頼があった際に細かく規約を設けているらしいけど、好奇心で忘れちゃうんだろうなぁ…。

守る側としては迷惑この上ないけど。


そして、大まかな地図や危険度が出ると、専門の調査員達が調査を開始するって流れだ。


俺達総勢12人は今回の調査対象である魔法都市の遺跡に到着した。

王都からは徒歩40分程度のため、観光気分で訪れる冒険者は結構いたらしい。

今は調査のために封鎖しているそうだ。

レイスもいるって書いてあるし、観光にはちょっと危険すぎるもんな。


最新の地図では南北に歩くと20分くらいの広さまで調査出来ている。

建物も見て回るので、1日では殆ど広げられないってのはアイザック談。

しかも崩落した箇所からしか光が入らないので基本真っ暗だ。

だから、危険を報せる合図には、魔法が使える場合は発光する魔法を上に投げて対応するって決めてあった。

とはいえ、建物で見えない可能性も捨てきれないんだけど。

ちなみに、ユキ、ファルーア、爆炎のガルフ、アイザックが発光する魔法を使える。

俺達バッファー2人は肩身が狭いんだけど、カルアさんが小さい爆弾を持っているのでそれを投げることでまとまった。

…爆弾、普段何に使うんだろうな…。


崩落した場所を下ると、建物に繋がっていた。

崩落して、この建物と地上がそのまま繋がったんだな。

日の光が差し込んで、すぐ近くは見渡せる。

どうやら、ここら辺が地表に近くて、そこから全方向に下っている都市だったようだ。

ここからだと端っこの壁は暗闇の向こう側で、確認出来そうになかった。

これ、進んでから合図しても向かい側のメンバーには伝わらないかもしれないなあ。

俺の向かい側ってことは、ディティアのいる北側だ。

正直、東西も怪しい。

まあやらないよりはマシだろ、頭には入れておこう。


「それじゃあお互い気を付けて行こう。暗くなる前にはまた集合するぞ。夜はレイスが活発化するからな」

アイザックの号令で、それぞれ出発。

気を引き締めないとと思う反面、カナタさんに聞いてみたいことを色々と考えてしまう。

すると、

「基本的なバフをハルト君にお願いしてもいいかな?好きにかけてくれて構わないから」

いきなりカナタさんが吹っかけてきた。

「うあ、はい!」

とりあえず、隠す必要も無いので、カルアさんに五感アップと浄化のバフを。

俺とカナタさんには反応速度アップと速度アップをかけた。

「…ハルト君はひとりひとりにそうやってかけるのかい?」

「えっ?はい、違うバフを選んで調整するんで」

「あー、そうじゃなくて…ああ、そうかあ。ふふ、ハルト君、いいもの見たくないかな?見たいよね?」

カナタさんは嬉しそうな顔をして軽く右手を上げた。

「速度アップ」

「…ッ!!」

俺は、きっと目をまん丸にして固まっていたと思う。

俺の速度アップバフが上書きされて、同じ速度アップがかかる。

だけど、それだけじゃなかった。

恥ずかしいことに、これは全くの想定外だった。

「え、嘘…だろ、え、カナタさん、今、同時に…?」

速度アップが、俺とカナタさんを同時に包んだのを、俺は見てしまったのだ。

「ふふふ、その通り。僕は範囲バフが出来ます」

……!!

頭を殴られたみたいな衝撃だった。

範囲で一気にバフをかけられるだなんて、そんなの聞いたことがない。

「ち、重複よりもよっぽどすごいことなんじゃ……」

思わず言ってしまって、失礼だったかもと思い慌てて謝ろうとしたら、先にカナタさんが笑った。

「ううん、範囲バフは…あのね、よく聞いてね。範囲バフは、いつも使うバフをね、傘を広げるみたいな形にして皆に被せるイメージなんだ。ハルト君が読んでてくれたあの本には、手元で練ることから始めてねって書いたけど、それの応用編だね。言うなればバフのかけ方の中級だよね!」

ああ、なるほど。

「じゃあ安定した時点で、平たく伸ばして広げる感じですか?」

とりあえず速度アップのバフをイメージしてみる。

……んん、大きく広げるのは難しいな…!?

手の上で試行錯誤していると、カナタさんは急に「はぁ~」と、ため息をついた。

ため息っていうか、うっとりに近い感じの。

「ど、どうしました」

思わず手を止めると、黙って先導しててくれたカルアさんが振り返った。

「ははっ、逆鱗のハルトだっけ?…その人さ、バッファーをもっと増やすために、学校を設立して先生になりたいんだよ」

「ああ、カルア。人の夢を簡単に話してはいけませんよ!……すみませんハルト君。その通りで、君が僕の言葉だけでそこまで理解してくれたことに感動していました。君は優秀ですね」

本当に嬉しそうに言うので、なんだか照れてしまった。

しかもさらっと褒められたし。


ん、もしかして普段ディティアってこんな気持ちなのかな?

まあいいや。


俺はすぐに気を取り直して、カナタさんを見た。

「俺にはこの教科書があったからここまで来られたので…先生みたいなものでしたよ、ずっと」

誰か知らなかったなんて、口が裂けても言えないけど。

そっと胸にしまっておこう。

「ああ!聞きましたかカルア!僕の生徒1号です!」

「はいはい、よかったねぇ。逆鱗のハルト、その人の本はわかりやすかったのかい?」

「え?あ、はい。俺には相当ぴったりきました。他のは間怠っこしいというか…ちんぷんかんぷんだったので……。あとカルアさん、よかったらハルトって呼んでもらえます?」

逆鱗の、逆鱗の、と連呼されると、嫌な奴を思い出す。

カルアさんは不思議そうな顔をしたけど、承諾してくれた。

「わかったよハルト。…この人の本さ、わかりにくいって言う人が多くてね-、だから昨日ボロッボロの本持って帰って来たとき、見たこと無いくらいはしゃいでたんだ。礼を言うよ」

「ああ!カルア!そういう恥ずかしい話はもっと人にしてはいけませんよ!」

カルアさんははいはいと適当な返事をして、ゆっくりと歩みを止めた。

その身体がぼんやり銀色に光っているので、明かりと目印のような役目も果たす。

「さてと、地図はここまでだ。そっちも一旦気を引き締めとくれ」

「はい!」


暗い路地だった。

建物はどこも四角く、屋根…と言うか屋上?に出ることが出来るような造り。

土を固めた壁みたいだ。

カルアさんが、立ち止まって玄関に一振り。

……やっぱりあれ、剣なのか?

すると、ガアンと音がしてドアから火が噴き出した。

「おおっ!?」

びっくりして後退る。

「あ、ハルトはこの罠は初めてか。侵入防止の罠みたいでねー、どの家にも大抵あるんだよ。邪魔だから壊してる」

俺は慌てて五感アップのバフを肉体硬化に書き換えた。

目の前で光とか弾けたらしばらく見えなくなっちゃうかもしれない。

「ハルト君、ハルト君。こういう時は魔力感知のバフをかけるといいよ」

「魔力感知…すみません、俺まだ覚えてないです」

「そうかあ。確かに使いどころ殆ど無いからね!こういう遺跡内部では重宝するから、練習するといいよ。僕も手伝うよ」

カナタさんはうきうきした様子で、魔力感知の範囲バフをかけてくれた。

やっぱり、自分のバフじゃないと上書きになってしまうのか、はたまた3個目だからか、俺達の速度アップとカルアさんの肉体硬化が上書きされる。

後で実験させてもらおっと。

その魔力感知バフは、不思議な感覚だった。

何て言ったらいいか…いろんな所に魔力の流れみたいなのを感じるって言うのかな?

隣の建物をちらっと見ると、扉部分に濃い塊のようなものが見えた。

なるほど、あれが罠か。

「見える?ハルト君」

「はい、わかります」

「よしよし」


******


俺達は2軒の調査を終えて、もう1軒調べようという話になった。

午後になってから着いたので、あまり時間が無かったのもある。


ただ……。


「うーん。このでっかい建物はちょーっと嫌な気がするね」

カルアさんがふんと鼻を鳴らす。

目の前にそびえるのは、他の建物よりもかなり大きなものだった。

カルアさんの浄化のバフの光だけでは、端っこまで見えない。

ただ、魔力感知によってかなりの魔力がこの建物に集まっているのがわかってしまう。

窓だったはずの場所から見える屋内は、何もかも吸い込んでしまいそうな闇。

魔力の流れがそれをさらに際立たせて、不気味さが増していた。

「……さて、カナタ。どうする?」

「そうだねぇ…この魔力の流れはちょっと嫌な感じだね。とりあえず外側をぐるっとして、どこかのメンバーと2組くらいで来た方がいいかもしれない」

俺も同意だった。

カルアさんは頷くと、じゃあ行こうと言って建物に沿って歩き出す。

神経を研ぎ澄ませ、慎重に。


途中で大きな扉部分を見つけた。

魔力の塊みたいなものがぐるぐると回っている。

かなり強力な罠みたいだ。

「……扉、強力な罠付き、と」

カナタさんが情報をメモしていくのを確認しながら、俺は周りへの警戒を絶やさないように気を付ける。


建物の端まで来ると、壁が崩れていた。

ぼんやりと発光するカルアさんがその近くに立つと、その惨状が見てとれる。

「…何かしらねぇ、これ」

壁に大きく空いた、穴。

自然に壊れたようには見えなかった。

「明らかに、壊されたって感じですね」

カナタさんが囁くと、カルアさんは少しだけ穴に近付いた。

うっすらと屋内が見える。

……何か、たくさんの棚が並んでいるようだ。

けれど、穴の正面から真っ直ぐの左右の棚が薙ぎ倒されていた。


まるで何かが通った跡。


「ハルト君、五感アップと速度アップをかけます」

突然、カナタさんが小声で早口に言って、さっと手を上げた。

俺達のバフが書き換わり、カルアさんの身体の光が消える。


魔力の流れも掻き消えたけど、代わりに。


ぞわぁっとうぶ毛が逆立った。


……何か、居る。


この建物の上の方。

五感で感じたと言うよりは、第六感ってやつかもしれない。

「下がりますよ、カルア」

「…あぁ。そうしようかね」


何か、は、俺達に気付いているのかもしれない。

壁を突き破って、目の前に飛び出してくるかもしれない。

心臓がばくばくする。


真っ暗な中、お互いの影が少しだけしか見えない状態で、俺達はそこを離れた。


飛龍タイラントの時よりも、身体全体が冷えている。

俺は震えそうになるのだけは、なんとか堪えきった。


よかったら明日もお待ちしています!

よろしくお願いします。

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