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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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159/847

その名、轟かせませんか。①

体調はまだあまり良くないのですが、

1話更新です!

「やべぇ、入ったらどうすりゃいいんだ?」

「とりあえず堂々と前まで行くわよ。少し距離を置いた位置で止まって、跪くの。いいわね」


突然のことすぎて、パニックになりかけた俺達。


ファルーアがグランに言いながら、こっちを振り返る。

「ティア、そのお馬鹿さんをちゃんと誘導してあげて」

「う、うん!」

「お馬鹿さんって俺……?」

思わず言ったけど、ディティアがくすりと笑うので口をつぐんだ。

彼女は余裕があるように見える。


とにかく、もうどうしようもないし。

俺達は巨大な扉の前で一列になって、時を待った。


「どうぞあまり緊張なさらないよう。……では、開けます」

侍女が優雅に礼をして、扉に向き直る。


緊張するに決まってるだろ!

と、突っ込む余裕もない。


「白薔薇の皆様をお連れ致しました」

『よい、開けよ』

低めの、威厳のある声が響く。



ぎぎぎ。



扉が、ゆっくりと開いていく。

どうでもいいことなんだけど、白い扉には巨大な鳥の画が細部にまで彫り込まれていた。

緊張してるからか、やけにはっきり認識する。




すると。




『白薔薇に栄光あれッ』




「うわ…」

思わず声が洩れた。


左右に並ぶ騎士達が、剣を掲げて号令のように声を重ねる。

その中央に、ラナンクロストのカラーである白と蒼の絨毯が伸びていた。

その終点には三段ほど高くなった場所と、立派な椅子。

そこに座りこちらを見ているのが、ラナンクロスト王だろう。

椅子の横にはルクア姫が立っているのが見てとれる。


高い天井に反響して、より大きく聞こえた声にびびっていると、グランが先陣を切って歩き出す。


ジャキッ


グランが通るのと同時に、騎士達が順番に掲げた剣を下ろしていく。

その整然とした動作には、思わず感嘆のため息がこぼれた。


……そして、王の前までやってきた俺達は、一礼をして跪く。

ファルーアとディティアに倣っておけば完璧な気がするし、何とかなりそうだ。


シュヴァリエがルクア姫の近くに控えているのに、ここで気が付いた。

いつも通りの澄ました顔で、笑みを浮かべている。


『よい、堅苦しい挨拶はいらぬ。顔を上げよ』


王の言葉で、俺達はそれぞれ立ち上がった。


年の頃は70前後。

白髪はしっかりと整えられて、口周りの頑固そうな鬚の手入れも抜かりないようだ。

何より威厳があって、滲んでいるオーラもやばい。

武勲皇帝とは違う空気を感じる。


俺の思っていた、王、そのままの人がそこにいた。


『それでは報告を受けよう』

王の声に、グランがぴりぴりとした空気を纏ったように見える。

……そりゃあ緊張するよなあ。


「……ルクア姫の命にて、ギルドの代表として各国を回ってきた……来ました」


ちょっと噛んだけど、ファルーアが小さく頷くのが見える。

大丈夫そうだ。


任せたぞグラン!



******



そうして15分ほど。

ここに戻るまでの詳細を大体語り終え、グランが咳払い。

「……え-、報告は以上、です」


その間、王は案外楽しそうに聞いていてくれた。


『ふむ、良い旅路であったか、白薔薇』


……白薔薇。

俺は、自分達のパーティー名を聞いて、身震いしそうだった。

ラナンクロスト王、その人が、俺達の名を口にしたのだ。


何となくだけど…ここまで来てやったぞ!って。

誇らしくなる。


「実のある旅路だった、俺……自分達にとっては」

グランが言い切る。


やがて、王はゆっくりと頷いて、控えていたルクア姫から何か、書状を受け取った。


『……白薔薇。後程ギルドから報酬を受け取るがいい。ギルド長には伝えておこう。此度はご苦労であった。……また、ラナンクロストを含め、各国で保管する魔力結晶、確かにヴァイス帝国より引き取ってある。……それともうひとつ、渡すものがあったな』


するすると書状を開く王。

俺達は、ちらりとお互いに目線を交わした。


……何だ?渡すものって。


『ラナンクロスト、ノクティア、ハイルデン、そしてヴァイス帝国。4国の王は、パーティー白薔薇の大盾使い、グランに名を付けることを約束した。……そうだな?』


…………!!


グランの背中しか見えなかったが、一瞬肩が震え、その手がぎゅっと握られたのがわかる。


「……その通りです、ラナンクロスト王」

グランが、深く頷く。


ラナンクロスト王はにやりと笑みをこぼして、書状を読み上げた。


『貴殿の2つ名。4国間でまとめさせてもらった。……豪傑。豪傑のグラン。……それが、貴殿の2つ名だ』


豪傑の、グラン。


俺は、何度も何度も、頭の中で反芻した。

自分のことみたいに、胸が熱くなる。


『勇猛果敢、4国間の王を唸らせる程の度胸。その名に相応しかろう』

「……っ、ありがとうございます」

グランが頭を下げる。

ファルーアも、ボーザックも、ディティアも、それからもちろん、俺も。


思わず頭を下げた。


『ふ、他国の王より伝言がある。……まずは、ノクティアのアナスタ王……その白く輝く大盾に見合う大きな男になれと。……ふむ、相変わらず盾マニアだそうだな。次に、ハイルデン、マルベル王……我が国の英雄に相応しき名を気に入ってくれるといいと。……ようやく頭角を現しおったな。そして、ヴァイス帝国皇帝ヴァイセン。……ほう、これは面白い。……その名に違わぬ豪快な支援を期待する、と。お転婆め、言いおる』


楽しそうなラナンクロスト王は、やがて静かな海のような、ルクア姫より少し濃い青色の眼を細め、グランに言った。


『豪傑のグラン。その名、轟かせよ。全ての冒険者がその名を知る日を、楽しみにしておるよ』

「……必ず。白薔薇の名と共に」


グランは、深く頷くと、もう一度頭を垂れた。



すみません、体調不良にてまちまちになってしまいました。

万全になるまでもう少しかかりそうです。

ペース落ちてしまってますが、治したら戻しますのでよろしくお願いします!

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