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逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

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156/847

凱旋なので。①

ナンデストは、それから、と前置きしてフェンに向かって言った。

「フェン、ウルとルフは元気ですよ!落ち着いたら遊びにおいで」

「わふっ」

フェンの尻尾がぐるぐると回る。

嬉しかったようだ。


「あ、そうだ。グロリアスの皆さんにはこれを」

ナンデストは龍の模様の箱を差し出した。


菓子白薔薇だ。


アイザックがシュヴァリエの指示で受け取って、今度こそナンデストが馬車に乗り込む。


「それでは皆さん、気を付けて」

「絶望的な疫病神もな」

俺が笑うと、ナンデストもふへへ、と笑う。

「何とかなるもんですよ、旅なんて!」


******


「……さて」

賑やかな嵐のようなナンデストが見えなくなる頃。

シュヴァリエは馬上で優雅に言った。


「先程の地震は、ダルアークの実験だと思うかい?逆鱗の」

既に馬車の荷台にいた俺は唸った。

「俺に聞くのもどうかと思うぞ。……とは言え、フォルターの話を考えるとそうなんじゃないか?前に揺れたのは帝都から逃げる時だったから、それなりに時間も経ってるし」

内容が満足いくものだったのか、シュヴァリエは笑みを浮かべた。


どうでもいいがイケメンなのは認める。

本当にどうでもいいが。


「爆炎の、祝福の。君たちはどうだい?」


「ほっ、生きていてこれだけの地震は経験したことがないのう。ダルアークの実験ではないとしても、今までの地震が地盤を弛めていた可能性は大いにあるじゃろう」

「そうだな。……しかし、山脈が怒るってのは何だ…?噴火か?」


2人の話に、ファルーアが髪をとかしながら答えた。


「そうねぇ……少なくとも私達が知っている知識では、あの山脈は噴火したことはないはずだけど」

「何か変動があったのかもしれないから何とも言えないが…噴火じゃないとしたら何だろうなあ」

アイザックが頷く。


「続報を待つしか無いね、逆鱗の」

「いや、だから何で俺に言うんだって」

どうせなら身内にでもこぼせばいいだろ…。


……ん?


俺はそこで、気が付いてしまった。


「あれ?シュヴァリエ、お前さ、イルヴァリエは?」

「閃光の、と付けてくれてもいいよ逆鱗の」

「それはどうでもいい」


聞いていたアイザックががはは、と笑う。


「それがよ、ヴァイス帝国の復興をもう少し手伝わせるって名目で、残されたんだよあいつ」

「え?そうなの?他の騎士団は??」

ボーザックも今思い出したように、きょろきょろした。

「ほっほっ、彼奴は迅雷と同じくうちの坊にご執心じゃからの。他の騎士団はもうラナンクロストに入っているはずじゃ」

ガルフが答えるのを聞きながら、そういえばカルヴィエ率いる国境の騎士団達は早々に戻ったっけなと思う。


「いざとなったら、ルヴァルステンバリーンがいるからね。すぐ駆け付けるよ、逆鱗の」

「別に駆け付けなくてもいいけど……不遇だなあ、あいつ」

「ふふ、凱旋には余計な存在はいらないよ」

「……?」


俺は首を傾げた。


凱旋?


……まあ、そっか。

騎士団がはるばる隣国を助けたんだから。


******


馬を飛ばし、王都に到着したのはそれからひと月後くらいだった。


山の天辺に美しい城。

白と蒼で統一され洗練された都がもうすぐそこだ。

城から山裾へ向かって、貴族街、商店街、一般国民街がここからも見てとれる。


今日はガルフも流石に馬に乗っていて、俺達白薔薇だけが馬車。

フェンは馬車を引く馬を変わらず誘導してくれていた。


「何だか、帰ってきたーって感じだね」

ディティアがぼんやり呟く。

「そうね…貴族達に偉そうにされることももう無いかしら」

ファルーアは、妖艶な笑みを浮かべて応える。


意外と早く到着出来たし、少しくらい王都を堪能する時間は取れそうだ。


高い壁で覆っている訳では無いが、一応の入口はあるので、そこが街道の終点でもあった。


「何食べようかな~」

「武器と防具の手入れくらいしとけよ?」

うきうきしているボーザックに、グランが釘を刺す。


けど、確かにゆっくり食事がしたいなあ。


「ふふ」

何故かシュヴァリエが楽しそうで、俺は眉をひそめる。

「シュヴァリエ、お前…」

言い掛けたところで、シュヴァリエは突然、馬を急かした。

「はいやぁ!」

「うおっ!?」

グランが驚くのを横目に、アイザック、ガルフも馬を急がせた。

「悪いな白薔薇!」

「ほっほっ」


あー。

嫌な予感しかしない。


「な、何なに!?」

ボーザックが荷台から身を乗り出す。


「フェン!」

俺が声をかけても、フェンはどこ吹く風。


……こいつ、買収されたな?


「……今度は何を持ち込むの?」

ファルーアに呆れ顔をされて、俺は首を振る。

「ちょ、俺!?」

「あはは」

「あははじゃないだろディティア-!」


こうなったらもう止めることは出来ないだろう。


グランは椅子に深く座り直して、ぼんやりと言った。


「……ドンと構えとけよお前等~」




ガラガラ、ガラ……。



フェンは入口……小さな門の前で馬車を止め、優雅に座った。


この数カ月で、彼女はディティアくらいまで大きくなっていて、艶々の毛並みはますます神々しい。

ちなみに、首輪はキツくなったからと、ファルーアが布を使ってタイラントの腕輪だったものを加工し、ちゃんと巻いてある。


「降りろってことか?」

グランは仕方ないとばかりに馬車を降りる。


俺達も続いた。


「……門、閉まってる」

ボーザックが不安そうな顔をする。


門の前では、騎士が2人、待っていた。

「さあ、どうぞ」


向かって右、よく鍛えた体付きの騎士が言う。


ちなみに、普段ここは開いているし、騎士もいない。


……罠にしか思えないよなあ……。


俺達は恐る恐る、門へと向かうのだった。


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