表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆鱗のハルト  作者:
逆鱗のハルトⅠ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

149/847

生きるためなので。②

「それで何が知りたいのかな」

フォルターは声変わりしてないのかまだ幼い声音で無邪気に聞く。


ラムアルはゆっくりと頷いた。

「ダルアークの規模と目的から聞きたいわね」


「総勢1,000人以上、正式な数は知らない。目的は元々は魔物狩りで生計を立てるならず者集団だね」


俺に名乗ったときのように、フォルターはあっさりと言った。

これにはグランとアイザックが顔をしかめている。


「1,000人の構成は?あんた達のリーダーは誰?今の目的は?」

「狩り部隊がいろんな国に散らばってて、総勢800人ってとこ。オレもそこに所属してるし、お兄さんは知ってると思うけど100人近い人数が今オレの管轄下なんだよね。あとは調達とか輸送とかそういう人達が100人~200人くらいと、アジトの食事作ってくれたり洗濯してくれたりする人達、あとドーアみたいな実験担当が数十人」


えーと、あと何だっけ?とフォルターが笑う。

ラムアルはフォルターにお酒を注いで無言で促した。


すると、フォルターはありがとうと言ってひとくち飲んでから、爆弾を投下する。


「オレ達のリーダーはアルダン。ダルアークを創った人だけど、去年死んだよ。今はドリアドっていう交渉とかする奴がいるんだけど、そいつが動かしてる。……たださあ、なーんか…最近迷走気味なんだよね……オレ達、ドリアドの駒じゃないんだけど」


その時こぼした笑みは自嘲気味で、俺は何となく納得して、フォルターに言う。


「だからお前そんな簡単に情報をこぼすのか」


「……まあ、知られたところでオレは困らないと思うしね。それに、ダルアークの殆どは孤児だから、生き抜けっていうモットーがあってさ。この情報話すことで生きていられるならそうするでしょ。お金も何も無かったけどオレは生きるためにダルアークやってきたんだし。……孤児ってさあ、冒険者になりたくても、養成学校に入るお金も無い。雇ってももらえないんだよ?」

「……孤児…1,000人もいて、殆どが……」

ラムアルは驚きに目を見開く。

「ドーアもなの?」

ボーザックが聞くと、彼女は身を食べきって骨になった魚を皿におろした。

「うん、うちらは同じ街の出身だけどね」

ドーアは老人達を見回して笑う。

老人達が、ちょっと居心地悪そうに身じろいだ。

「我々はハイルデンの部族でな。数年前、奴隷狩りに巻き込まれて、逃げ果せた……。お互い天涯孤独になってしもうて、途方に暮れていたところを、そこのフォルターに拾われた」


奴隷狩り…。

俺は、やるせなくなった。


「ちなみにオレは物心ついたころからスラム街でひとりぼっちだよ。お兄さん、同情した?」

戯けてみせるフォルターに、俺は黙って酒を差し出す。

「わあお、優しいねえお兄さん」

「言っておくけどボコボコにされたことは根に持ってるからな」

「逆鱗の……君は小さい男だね。ふふ」

話に交ざったシュヴァリエをしっしっと手で払うと、フォルターはとうとう破顔した。

「ははっ、おもしろいねお兄さんは」


「そういえば、今はハイルデンの奴隷制度が廃止とか聞いたけど」

ドーアが、次の魚を口に放りこみながら言うと、アイザックが答えた。

「そうだ。しかも、そこの白薔薇が王様を手伝って廃止させたんだぜ」

「えー?王様って、もしかしてマルベル王子?それとも宰相?」

意外そうな顔をするドーアに、俺は笑った。

「ああ、マルベルだよ。宰相ヤンドゥールは奴隷狩りしてたから捕まった」

「へえ、国同士が仲良くするためにってのは本当なのか」

ドーアは納得したような顔で、何度も頷く。

皆が不思議そうな顔をする中、ディティアが首を竦めていた。


「ところでフォルター。結局、ドリアドって奴は何がしたいんだ?」


俺が聞くと、フォルターは肉にかぶりついたまま顔を上げた。

「んぐあ?おにひはん、ほれきいひゃう?」

「聞いちゃうんだなーこれが。はい、お水」

ボーザックがコップを差し出すと、フォルターは嫌な顔をしてから仕方なしに水を流し込む。

「味わってたのに。……魔力結晶のでっかいので、何かを動かすーとかなんとか言ってた」

「動かす?」

「うん。……最近地震多いじゃん?あれ、ドリアドがやってるって言ってたよ」



「…………はあ?」



「あーあ、お兄さん酷いねその反応。本当に言ってたんだって。……なんなら、オレがもっと聞いてきてあげるよ」


…………。

……。


「は?」


俺はぽかんと口を開けていたと思う。


「お前、何言ってるの?」

「だからさあ。ドリアドに、オレが聞いてきてあげるって」

「いやいや、お前ダルアークじゃん。それ裏切ってないか?」

「いいよ。さっきも言ったけど、迷走してるし。本当は、お兄さんと戦うのだって嫌だったんだから。オレは魔物を狩りたいの」


言いながらフェンを見たので、叩いてやった。


「いて」


「ふすぅ」

フェンは挑発するように鼻を鳴らす。


「あっ、このフェンリル今笑った。ふうん、ちゃんとわかってるのか。……頭いい魔物は狩らないよ。頭良くても襲ってくる奴は狩るけど」


俺は苦笑した。

よくはわからないが、思いがけず仲間が増えそうだな。


皆も、フォルターを疑ったりはしないようだ。

見ると、グランが頷いてくれる。


「じゃあ頼むよ。どれくらいかかるんだ?」

俺が言うと、今度はフォルターがぽかんと口を開けた。



「……え?何で?信じるの?」



俺が頷くと、ドーアがお茶をすすってから呟いた。

「この人達、お人好し集団だからね」



本日分の投稿です!

21時から24時を目安に毎日更新中!


250ポイント目前。

皆様のありがたいブックマークや評価、感想が後押ししてくれています。


いつもの方も初めましての方も、

ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ